第13話 ニコラス特製測定器、電気と大気を測定してみる
それから二週間が過ぎたわ。
魔法大会の準備は順調よ! 今日はコロシアムの見学に来たの。セドリック先生に相談したら、二言目には了解を頂いたわ。
少しコロシアムの説明をするわね。
古代の闘技場風、とは伝えた通りだけれど、違いはグラウンドの中央に尖塔が立っていることなの。その上には透明な球体が安置されているのよ。
そ、魔力測定器と似たような球体。
でも、目的が違ってね。
「ほー、あれが魔力吸収装置、略して魔吸槽でっか!」
「あの装置が魔力を吸収するでやすね」
ニコラスとマルタが言う通り!
ほら、どの世界にもあるじゃない。観客の目の前で全力魔法を使っても影響がでない系のやつ。ドーム状の防御魔法を展開する方法とか、闘技場内だけは魔力が制限されるとか色々あるけれど、これは後者の『魔力を制限する』方式に近いわ。
「魔法を放つときに生じる魔力を、あの球体で吸収している、って訳よ。ただ、目的はそれだけじゃないけどね。あの塔の中には配管があるの」
「んで、別の場所に魔力を貯蔵しとるんやな」
「そこから、あたしらの寮や教室の明かりになっているでやすね」
「そ、ランプや炎を使わなくても明かりを確保できる理由よ」
つまり魔法大会は魔導真理学部の実力テスト、という意味合いの他に、学院で使うエネルギー源の確保、という目的もあるわけ。一石二鳥というやつね。
「という事はやな。魔力ってのは他のエネルギーに変換できる、ちゅーことやな」
「そうなるわね。素の魔力がなんなのか、分からないけれど」
「電気でやすかね?」
「電気…面白い考え方だわ。雷魔法は素の魔力に近いのかしら」
「炎魔法も派生ちゃうか? 雷が落ちたら火が付くやん」
「フランクリンの雷実験よね」
世の中には無謀な科学者がいるのよ。
フランクリン、という方なのだけれど、彼は『雷の正体を知りたい』という目的で、雷鳴が轟く嵐の中で凧を上げたのよ。
結果、雷は電気である、と証明されたのよね。
ちなみに真似しないこと!
フランクリン実験を再現しようとした別の科学者は、雷の直撃を受けて亡くなっているわ。
「ほんなら、やっぱ検電器は必要やなぁ」
「どうやって作るの?」
「エレキテルってあるやろ?」
エレキテルは有名だから、ご存知の方も多いかしら。
構造は大きく二つで、電力を発生させる、ハンドル付きの本体に、発電を見学するガラス瓶がついてるの。ハンドルを回すと、ガラス瓶の中で雷光が光る…ようなイメージよ。
「ライデン瓶を応用する?」
「その通りや! ライデン瓶を加工して、中にうっすーい金箔をいれるんや。電気反応があれば、中の金箔が揺らめく、ちゅう寸法やな」
ライデン瓶は聞きなれないわよね。先に出てきたエレキテルの『ガラス瓶』部分。
これをライデン瓶と言うのよ。電力を溜める性質があるの。
「あと、可能性がありそうなのは…」
「気圧も図りたいでやすね」
「気圧かぁ…水銀実験を応用すればいいかしら?」
「そんな大掛かりでなくても、多分できまっせ」
「そうなの?」
「蒸気機関の安全弁を応用するんや」
蒸気が急激に増えて、圧力が臨界を越えた時にぱかっ、と開く蓋の事よ。
これが開いたら即退避、即動力停止!
の最終ラインなのだけれど…。そこまでの圧力がかかるかしら?
「極限まで薄くして、瓶の口に付ければええんや。減圧したら開く、加圧したら引っ込む、ちゅう塩梅やな」
つまり。
減圧(大気が減る) → 瓶の中の空気の方が重たいから、蓋が外に出る
加圧(大気が増える) → 瓶の中の空気の方が軽いから、蓋が瓶に引っ込む
「ということね」
「せや! 任せてみ、時計職人の腕を見せてやるわ」
「じゃ、お願いするわ。あとは磁力ね。魔力測定器と一緒に、方位磁針もお願いしているわ。もし魔法を使って磁針が回転したら、磁力が関係している、ってことになると思う」
「せやな。このへんが限度やな」
「へぇ。あたしら三人ですし」
「そうね、それじゃ製作は任せていいの?」
「まかしとき!」
「それじゃ、戻りましょうか。エラリーたちは順調かしら?」
魔法大会、着々と準備中です!
アルフォンスは一体どんな出店を出すのか…次回もよろしくお願いします!
【追記】3月11日、修正してます!
※本作は「カクヨム」および「アルファポリス」にも掲載しております。




