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2.探索

 探すとすれば、やはり山の上だ。海岸沿いは切り立った岩場ばかりで、波打ち際を歩いて行く事は出来そうもない。取り敢えず山の上へ登り、俯瞰してこの島の状況を見極めたい。そう決めると、これもトランクの中に有った背負いバッグに、水と袋ラーメンだけを詰め込むと、フィギアの刃を取り付けた斧を持って、昨日登ったルートで山の上を目指した。直ぐにあの大岩まで辿り着く。この先は、自身が滑り落ちて来たあのルートを登って行く事にした。


そのルートには、所々に焦げ目がついているし、木々がなぎ倒されている。比較的楽に上る事は出来たが、途中で深い森の中へと迷い込んでしまった。斧で、背の高い草や枝を払いのけながら、少しずつ上って行く。危惧した獣には出くわさなかったが、見た事も無いような大きな蚊には悩まされた。虫よけスプレーを体中に掛けて来たために、刺される心配は無かったが、ブンブンとうるさい。その薮をやっとの事で通り過ぎると、其処には機体と翼の一部が、横たわっていた。


広めに山肌が見えている。機体の墜落で、その範囲の木は焼けたり倒されたりしている。見える範囲に遺体は無かった。皮やビニールで出来た小さめのバッグが数個散乱している。その中の一つを覗くと、また水のペットボトルが見つかった。それを背中に背負ったバッグの中へ納めて、さらに上へと目指した。ここまでで2時間ほどかかったが、まだ半部程度しか登っていない。それ程高い山ではなく、斜面も緩やかだったが、木と岩と藪が邪魔している。しかも登山ルートは無いに等しい。この上もまた森と藪が待っている。一休みした後で、さらに春斗は気力を出して登り始めた。


また2時間が経過した。頂上まではもう少しの所まで来たが、視界が突然に開けた。

其処から上は、岩だらけだ。何か硫黄のような匂いがして来た。以前、箱根の大涌谷で経験した匂いに似ている。間違いない、これは硫黄の匂いでこの山は火山であろう。たどり着いた場所は比較的平坦で、地面には背の低い雑草が広がっている。上へと続く岩肌までの距離は20メートルほどで、その平地は横へ30メートルほど広がっていた。今の立ち位置から、5メートルほど右側に、下界が見下ろせる場所があるように感じた。


その先の視界は大きな岩で遮られていたが、その岩には人が一人入り込めるような細い道のような空き地がありそうに見える。その割れ目に体を滑り込ませ、其処を回り込めば下界が見えるかもしれない。そう思って、慎重にその岩の割れ目を進んだ。すると思った通りに前方は切り立った崖になっていて、その割れ目は狭くてその先には進めないが視界だけは海まで開けた。海岸線が丸く広がっている。


ただ、島の大きさは分からない。島全体が見渡せる訳では無いからだ。それでも、その海岸線の曲線を目で辿って行くと、それ程大きな島だとは思えない。集落は、見える範囲には無い。驚いたのは、視線を左側へ移すと、自分の立ち位置の下方10メートル辺りの場所に、丸く大きな平地が有った事だ。あの立ち塞がっていた岩肌の向こう側だったために、あの割れ目を進まないと見えなかったのだ。その平地の直径は300メートル位。中央に向かって少し窪んでいる。殆ど木や草は生えていない。


若しかしたら火口かも知れないと思ったが、噴煙らしきものは上がっていない。硫黄の匂いだけがする。もし、火口だとすると、今居る場所は火口丘に当たるのか?でも火口だと思われる右方面の三分の一位には、その上に壁は無いが、後の三分の二には切り立った壁が上方へ聳えている。全体は窪地になっているが、その片側だけが開けている感じだ。春斗は、その崖との境辺りに居るようだ。その窪地になっている平地の中央に、機体の一部が見つかった。最初に折れたと思われる右側の翼が、壊れて機体の一部に繋がっている。数人の遺体も散らばっているようだ。


春斗は、その場所まで降りてみようと思った。また飲み物も見つかるかも知れない、という淡い期待も有った。遺体を見るのは居たたまれないが、それも何時か慣れて来ている。ここら辺りには、少なくとも美玖の遺体はない筈だ。その窪地まで降りるルートを、目で探した。何とか降りられそうな場所を見つけた。まずは、この岩の割れ目から向こう側へ出なければならない。両手両足を岩肌へ押さえつけるようにして割れ目の上へと一旦上ると、今度は足を滑らせないように慎重に向こう側へ降りていく。背の高さほどの岩山を乗り越えると、向こう側にも少しの空き地があった。


その場所から10メートル下の平地までは、以外と直ぐに降りられた。窪地の縁は岩石の粉砕された石が散らばっている。その縁を少しずつ滑るように降りていく。平地に降りると中心へ向かって歩き出した。進むにつれて、地面は砂のようになって来た。段々と足元が柔らかく感じて来る。春斗は、足を止めた。


窪地の中心で機体が転がっている場所まで、まだ100メートルはある。ただ、あまりに地面が柔らかくなっていたのだ。危険を感じた。機体が地面に沈んでいる感じはない。とすると、この辺りだけ地面が柔らかいのか。春斗は、直進せずに左側へ迂回しようと思った。少し下がろう、そう思った瞬間、体が少しずつ地面へ吸い込まれて行く感覚が有った。足元を見ると、既に足首まで砂に覆われている。


火口に雨水がたまって、その上を火山灰が降り積もっていたのか。そうだとしたら、地面の下は水だ。助からない。春斗は焦ったが、体はどんどん沈んでいく。近くに、体を支えるものは何もない。見る見るうちに胸の辺りまで沈んでしまった。それでも足元が、濡れてきた感じはしていない。どうなっているんだ。水はもっと下なのか。それとも砂だけの蟻地獄のようになっているのか。恐怖で、思考が停止した。


次第に顔が埋まり始め、息が出来なくなって来てしまった。思わず目を瞑った。頭の上まで、砂が覆いかぶさって行く感覚がある。息を止めたままで、次第に苦しくなる。もうだめだ。その時、足元が砂から出た感じになった。と、その直後、体がストンと落下した。着地した場所の、足の下は堅かった。落下の衝撃は少なく、足や腰にダメージは無かった。そして、それ以上の落下や埋没は無い。息も出来る。春斗は一つ大きく息をすると、回りを見渡した。


其処は不思議な空間だった。周りは堅い岩で覆われている。そう分かったのは、薄い光が差し込んでいたからだ。見上げると、体が通り抜けた穴だけがが開いている。まだ、春斗の体の上には、パラパラと砂が落ちて来ている。が、直径1メートルほどの、空に向かった穴の回りは全て岩石だった。丁度、井戸のように空いた穴に、砂が詰まっていたようになっていたのであろう。其処に春斗の体重が乗り、その詰まった砂が、下へと落下したようだ。


その空いた穴から、空気は来ているようだ。息苦しいが、何とか息が出来る。地上まで5メートルはある。これをよじ登るのは、出来そうにもない。命はとりあえず助かったものの、また絶望する事になった。薄い明かりの中で、目を凝らしていると、段々と暗さにも慣れて来た。今居る場所を見渡すと、その空間は、それほど広くはなさそうだ。畳3枚ほどの広さで、頭の上は穴の他は1メートルも空いていない。足元は硬く、岩の上に砂がまき散らされているような感じだった。仕方がない、助かる為にはこの岩の壁を這いあがるしかないか。


頭の上の穴の場所まで、懸垂だけで体を持ち上げる事が出来れば、後は両手両足を穴の壁へ踏ん張って、上がる事は出来るかもしれない。でも、頭上の岩場をさぐっても、体を浮かせるような取っ掛かりが無い。それで取り敢えず、水を飲む事にした。落ち着こう。そう思ってバックパックから、水筒を取り出そうとした。ところが手にした水筒を、思わず落としてしまった。どこかへ転がって行ったが、暗くて直ぐには見つからない。


続きは明日。

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