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昨日の続き and 11 エピローグ

「私たちの乗る飛行機って、この飛行機よね。いっその事、飛べなくなってしまえばいいのに。」

その言葉に、春斗に一つの考えが浮かんだ。

(飛べなくなればいいか。そうだ、飛べなくすればいいんだ。そうすれば、あの人達は助かる。)


何処か、屋上へ出る場所があるはずだ。屋上へ出て飛行機のタイヤを狙おう。タイヤが使えなくなれば、飛行機は飛ばない。タイヤを交換しても、もう一度点検をし直してくれれば、事故原因になった不具合も発見されるかもしれない。今できるのは、その位しかない。


春斗はそう決心すると、右腕に嵌めたブレスレットを確認した。

(これが機能してくれるのを願うだけだ。機能しなければ、諦めるしかない。)

「美玖、お願いがあるんだけど。感傷的かもしれないけど、あの飛行機が飛び立つところを見てみたい。一緒に、屋上まで行ってくれないか?」


「それは構わないけど。そうね、見送るのも悪くないかもね。」

出発時間まであと、15分くらいしかない。二人は、屋上まで急いだ。

二人が屋上へ着くと、二人が乗るはずだった飛行機はゆっくりとサテライトを離れて行くところだった。


春斗は美玖に気づかれないように右手を手摺に掛けると、その指先を飛行機の前輪へ標準を合わせた。飛行機は車に押されて後方へと移動している。春斗はその斜め右前の上方から前輪のタイヤを狙った。


あのギャモンドやザンゴとの戦いで、標準の合わせ方については自信がついていた。多分、一発で光線をタイヤの車軸へ当てられるだろう。ただ、その春斗の手元を注視している他の人がいれば、光線の発射を感づかれてしまうかも知れない。


それだけを気遣いながら、春斗は思い切って、武器を使用する、と小さく声に出した。傍に居た美玖にもそれは聞こえていない。そうしておいて、少し弱めに拳を握った。


光は春斗の右人差し指から発射された。その瞬間だけ、明るい光が春斗の右手の周りに浮かび上がった。美玖が気付いたのか、春斗の方を見た。でも、春斗の顔や動作になんの感情も現れていない。


ただ、その直後、後退していた飛行機に異変が起こった。前輪のタイヤの軸が折れて、飛行機が前倒しになったのだ。タイヤもバーストしている。飛行機はそれ以上動かなくなり、操縦席でも地上でも大騒ぎになっていった。


「なに、あれっ?」

美玖が叫んだ。前輪辺りから火花が散った事も有り、緊急の消防車が出動している。飛行機の中央辺りから後方の四か所の扉が開いて、緊急の脱出スライドが下ろされた。暫くすると、そこから乗客が次から次へと滑り降りてくる。


「前の車輪の軸が折れたように見えるね。事故が起こったんだ。でも飛び立つ前で良かった。とんでもない目撃をしてしまったね。あれに僕たちが乗っていたと思うと、ぞっとするよ。美玖がパスポートを忘れてくれたおかげだ。」


春斗は冷静を装ってそう言う。美玖は、いつもと違う春斗の言葉遣いに違和感を覚えながらも、体が震えて来ていた。

「ハルト私たち、明日の旅行取りやめにしない?怖いわ。」


「その事は、ホテルに帰ってから話し合おう。僕も取りやめにした方がいいかも知れないと思い始めている。」

空港は、直後よりさらに騒ぎが大きくなっている。その喧噪の中、二人は空港を後にした。


一旦、ホテルへ戻りパスポートを受け取った。予約を入れていた為に、まだチェックイン前だったが続けて同じ部屋を利用できるという事だった。掃除はもう終わっていた。部屋へ入ると、また美玖がパスポートを忘れた事を謝っている。


「過ぎたことを、そんなにくよくよしても何も始まらない。それより今日は一日どうしようか?」

「ううん、外に出る気にはならない。だって結婚して最初の日に、とんだ失敗をしてしまったんだもの。ハルトに申し訳なくて。」


「もういいから。あまり言い続けると、怒るよ。それに、人間万事塞翁が(じんかんばんじさいおうがうま)、って言うだろ。悪い事の後にはいい事が待っているものだよ。あの飛行機に乗っていたら、とっても怖い思いをしたに違いないから。」

笑いながら、そう言った。


「うん、そうだよね。分かった。もう言わない。でも今日は、ホテルを利用できるんだから此処に居よ。いいでしょ?」

「うん、全然大丈夫。コーヒーでも飲む?」


春斗はコーヒーを淹れながら、一抹の不安を抱えていた。

事故の調査が始まれば、前輪の車軸が外からの力で損傷したことが分かってしまうかも知れない。それでも自分は、200人以上の人達の命を救ったんだ、あのまま飛び立てば墜落事故になっていたはずだ。


それでも本当にそうだったのか、もしかしたら墜落していなかったのかも知れない。そんな思考がぐるぐると頭の中を巡っていく。

美玖がコーヒーを飲んで一息つくと、徐にまた言いだした。

「明日、旅行は止めたい。怖いもの。我儘かな?」


「いや、そんなことは無いよ。二日続けて事故が起きる事もないだろうけど、こんな風になったのも、何か理由があるのだと思う。明日のフライトを止めさせるための警告かも知れないし。不安を抱えたまま旅行しても楽しくないだろう。」

春斗も美玖の意見に同意した。


結婚して1日で、結婚生活が終わってしまったと思っていたのに、どんな経緯でこうなったかは分からない。でも多分、あの時、気を失って漂っていた僕をシャトルの美月が拾って、地球まで届けてくれたのだろう。しかも、時間を遡ることで美玖まで助けてくれた。


『美玖が欲しい。』

アローに乗った当初、そう言ってみたが美玖は出てこなかった。あの時の要望が、今になって果たされたのかも知れない。それも、ドロイドではなく本物の美玖を戻してくれた。そうであるに違いない。


それともう一つ、気になっていることが有る。あの惑星は、これからどうなるのだろう。自分が今此処に居るという事は、この先あの厄災も外宇宙からの侵略も、これから起こりうるという事ではないのか?


一つ違うのは、アローも美月も、今もあの惑星に居る可能性が高い、という事だ。だったらその場に自分が居なくとも、それらの危機からきっと救ってくれるに違いない。

そう思う事で、これからの人生を美玖と二人でちゃんと生活していこう、春斗は決意を新たにした。



               十一 エプローグ


 後日、あの日二人が乗るはずだった飛行機の事故調査結果が発表された。それによると、前輪の車軸が金属疲労により折れ曲がったのが原因だったと結論付けられたのだ。


しかも総点検を行った結果、操縦席の全面左側の窓の留め金の一つも、損傷が原因でしっかりと留められていない状態であった事も発見された。あのまま飛行を続けていれば、上空での外気と飛行機内部の気圧の差で、留め金は耐えられずに外れてしまい、その結果、全面左側の窓は外側に破損して急激な気圧の変化をもたらし、飛行機は墜落した可能性が大だったと報告されたのだ。


前輪の車軸が折れて飛行できなかったことは、不幸中の幸いだったと結論付けられていた。


                                完                                                         

             

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