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昨日の続き


朝が来た。今日もいい天気だ。海から太陽が昇っている。そうすると、海側が東なのかもしれない。起きると最初に、ペットボトルから一口水を飲んだ。雨が降らない内は、水を大切にしなければならない。菓子パンは、腐る可能性も有ったので、1個は食べてしまった。


取り敢えず今からは、トランクを開けるだけ開けてみよう。そう思った。相変わらず、焦げた匂いと、腐臭が漂っている。それでトランクを開ける前に、遺体を片付けようと思い立った。ただ、穴を掘って埋葬するには、とてつもない労力が要る。道具も無い。そうかと言って、腐るままにはしておけない。春斗は、どうするか迷ったが、遺体を海に流そうと決めた。もし捜索隊が来て、遺体を収容する時に、今ここで遺体を海へ流してしまったら、回収でき無い遺体となってしまう危惧が有った。その身内としたら、せめて遺体だけでも、いや遺品だけでもと思うに違いない。それを思うと躊躇したが、それでもこの状態で、このままにはしておけない、そう思った。


でもそのまま流しても良いものか、不遜にならないか。いろいろ迷った挙句に、せめて衣類で包んでから流そうと決心した。それでやはり、トランクを先に開ける事にした。

集めたトランクの中に、直ぐにでも開きそうな物が一つあった。

留め金の近くが、少し開いている。そこへ昨日山から持って来た、金属片の端を入れ込み、ぎしぎしと力を込めて煽ってみる。トランクの蓋が半分開いた。そこまでしておいて、取り敢えず直ぐに目についた衣類を引っ張り出す。それは殆どが男物で、ズボンやシャツ、下着も入っている。


春斗は、下着類だけ脇に退けると、シャツだけ取り出した。中にはバスタオルや、フェイスタオルなども入っていた。シャツとバスタオルを持つと、それで遺体を一つずつ包み、手を合わせた後で海へと流してやった。そうして浜辺に有った遺体の一部は、処分する事が出来た。遺体は離岸流に乗って、沖へと流されて行く。


全く、蓋の開いていないトランクも、金属片を押し込んだり、岩場に有った大き目な石で叩いたりすると、鍵が壊れて何とか中の物を取り出す事が出来た。

その一つのトランクの中に、フィギアスケートに使うと思われた靴が入っていた。嬉しい事に、そのフィギアの刃をメンテナンスするのか、それを取り代える為の道具も一緒に入っていた。まず、靴の紐を取り外し、次に靴に刃を取り付けている留め金をドライバーで取り外す。2つのフィギアの刃が手に入った。


その一つを近くに有った、木の枝をフィギアの刃で切り取ると、その先に靴の紐でしっかりと取り付けた。これで、斧の代わりになるだろう。もう一つの刃は、包丁代わりや、他のトランクを開ける際に使えるかもしれない。早速、それを試してみた。フィギアの鋭い刃を、トランクの蓋と底の間へ入れ込んで、留め金近くで、その上から石で叩いた。すると数回叩いただけで、トランクは簡単に開いてしまった。


トランクの中には、殆どが衣類やタオル類だったが、中には折りたたみ傘や、電気シェーバー、虫よけスプレーなども入っている。そして、トランクの中の一つには、嬉しいことにラーメンやうどん類が入っていた。ホテル内で食べたい時が有ると思ったのだろうか。水が無ければ、本来のラーメンとしては食べられないけれど、乾燥したままでも食品にはなるだろう。もし水が手に入れば、何とか湯を沸かして食べられるかも知れない。


そうやって色々なトランクの中を探していると、果物ナイフや水筒なども見つけた。ただ、ライターは無かった。火は起こせないかも知れない。夕方になると、また喉が渇いて来た。ペットボトルの残りを飲み干した。あと一本しかない。他のトランクからは、ペットボトルは見つからなかった。


ただ、夜になると遠くで雷が鳴りだした。若しかしたら雨になるかも知れない。春斗は、急いで長い枝を数本切り出すと、4本を正方形に並べて砂に挿し込み、その上へレインコートを広げた。中央にたるみを付けて、雨を溜めるように工夫する。それと同時に、傘の裏側を空へ向けて広げると、傘の端をこれも砂へ差し込み、三方から枝を取手へ向けて斜めにすると、これを支えとして靴の紐で縛り上げた。そうすればここにも雨水がたまるかも知れない。


そうしておいて、一旦は取り出した衣類を、またトランクへ入れ直した。雨に濡らさないためだ。祈るように雨を待った。すると、夜半の事だった。急にザーザーという雨音がして来た。春斗は喜びで大声を出していた。着ていた衣服を脱ぐと、真っ裸になり雨の中で体を洗いだした。脱いだ衣類は、岩肌へ広げて、後で汚れを洗いだすつもりでいる。


その雨は、レインコートと傘の中へも降り注いでいる。そのままでは、直ぐに水も腐るかも知れないが、取り敢えずの危機は去ったと思った。春斗は、傘の中へ溜まって来た雨水を、空いたペットボトルへ移して、それをごくごくと音を立てて飲み込んだ。雨水を飲んだのは、これが初めてだ。でもこんなに美味しい水が有るのか、と感動している自分が居た。そしてその夜は、岩陰で雨を凌いで眠りに就いた。


また一夜が明けた。レインコートと傘の上には、雨水がたまっている。その雨水をペットボトルと、水筒へ一杯に入れた。残りは、そのままにして、今日明日で飲む事にした。食事は昨日見つけた、うどんにした。半生であったために、楽に食べる事が出来る。残りのパンの一つも平らげてしまった。


この島は、無人島かもしれない。そう思うのは、今になっても誰も事故現場に来ない。機体が消えたのだから、レーダーでその異変は察知しているだろう。でも此処を見つけるのには時間が掛かるのかも知れない。それにしても数日後には捜索隊が来るだろう。春斗はそう楽観した。


生き残っている人は、他に居るのだろうか。最初は水の事ばかり考えていたが、少し余裕が出来ると、そんな事を考え始めた。それで、自分も今置かれている環境や、美玖をはじめ他の乗客などを探してみようと思った。それに、なにか食べ物も見つかるかも知れない。ここは気候から言うと、南国のようだ。バナナか何か果物が有ればいいのに、とそう思っていた。


明日の第二章へ続く


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