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昨日の続き

これにより、派遣された軍と資金はジャンの采配に任される事となった。ジャンは、漁村と港の復興を後回しにして、それよりも先に、城壁内へ多くの家屋を建てた。避難民を全てそこで暮らせるようにして、当分の生活費も分配していったのだ。


バルパロの襲撃に対する対応と、それらの施策でジャンの名声は嫌が上でも盛り上がっている。城壁をより堅固に改修もした。そして、浜から都市までの間に幾つものバンカーを設置して、見張りの兵を常駐させる。もし、バルパロが再び上陸してきたら、狼煙を上げる事にした。


そういう準備と復興策に並行して、春斗は城壁の近くに縦横30メートル深さ40メートルの大きな穴を掘って貰った。とはいえ、その労力は並大抵ではない。春斗はまず光線銃を駆使して地中深くまで、土や岩石を粉々にして柔らかくしていく。


その後、人海戦術で大量の土砂をすくい上げて行った。その穴へバルパロを追い込み落下させて、身動きがとれないようにする計画だった。その為の落とし穴で、穴の上面は木材で格子状に組んでその上に藁を引きしめ、砂と土を被せて穴があるようには見えないようにした。


うまく行くかどうかは分からない。ただ、やってみるだけの価値はあるだろうと思っている。避難と迎撃準備は、こうして整った。バルパロがあの攻撃に懲りて、再上陸しないと思いたいが、再上陸した時は今度こそ息の根を止めたい、春斗もジャンもそう思っていた。


しばらくは平穏な日々が続いた。でもその平穏も長くは続かない。春斗と美月は北都へ戻っていたが、ジャンからの緊急要請を受けて海の都市へ出向いて行った。聞くと、またバルパロの姿が近海に現れるようになって、漁獲高が極端に減ったとの事だ。


バルパロの出現や上陸も近い、ジャンも春斗もそう判断した。早速、漁へ出ていた漁民を都市の城壁内へ避難させて、美月はアローへ乗り込み都市全体をシールドで包み込む。


ジャンは必要な要員をバンカーへ派遣し、見張り・観察を強化する。兵たちを要所要所へ配置して、バルパロの来襲に備えていく。


春斗たちが海の都へ到着して、5日目の夜間だった。不意に南の空へ、花火のように狼煙が上がった。その狼煙が消えかけた時に続けて、また別の狼煙が上がる。今度は少しその位置が近い。そして次々に、狼煙が近づいてきた。


「現れたぞ、ハルト殿。」

ジャンの声で、春斗も気持ちを切り替えて戦闘体勢に入った。ジャンも兵たちに指令していく。バルパロは、浜の付近に餌になるような人影が居ないと分かると、速度を上げて一気に城壁へと近づいてきた。


月の光に照らされた、バルパロの姿が現れた。右目は潰れているが、尾は治癒している。血は流れていないし、その形跡もない。バルパロは、両方の大きな爪を振り上げると、口から泡を城壁へ吹きかける。溶け始めた筈の城壁へ、その大きな爪を降り下ろす。


ところが、シールドに護られた城壁は、その一部も壊れない。バルパロは苛立って、なおも爪を降り下ろしていく。その様子を城内で眺めていた兵士たちは、恐ろしさと不思議さでおののいている。春斗はシャトルを自動操縦にして、前回と同様に尾の関節部分へ集中的に攻撃を仕掛けた。


バルパロはそれに反応して、後方へ振り返った。そこにはシャトルが存在しているはずだが、誰にも見えない。その時に、春斗は城壁の外へ出ていた。バルパロの近くへ走り寄ると、正面から左目を狙って光線を打ち続ける。でも、光線は目には当たらない。夜間であるし、標的が小さすぎる。


それでも、苛立つバルパロの注意を引くことは出来た。春斗を見つけると、口から泡を吹きかけた。その泡が、何故か春斗の体から地面へ滴り落ちて固まって来ても、春斗は後方へ走っていく。バルパロがその春斗を追いかける。


簡単に追いつき、今度はその体と尾の足で踏み潰そうとした。それでも春斗は、シールドに守られて動き回る。バルパロは必要に春斗を追いかけ回す。そして春斗は後退しながら、あの落とし穴の縁までたどり着いた。


これ以上後退すれば、落とし穴に落ちてしまう。春斗はバルパロが接近するまで、その場で立ち止まって待った。春斗には、泡の攻撃が効かないと分かったのだろう。大きな爪をカチカチ鳴らしながら近づくと、その爪で春斗の体を掴み取ろうと岩のような腕を伸ばしてきた。


その爪が春斗の体を掴む寸前に、春斗は足を蹴ってそのまま後方へ跳んだ。春斗に、勝算があったわけではない。万が一の場合は、バルパロと一緒に落とし穴へ落ちてもいいと思っていた。


バルパロは、なおも春斗を掴もうと、前進してさらに腕を延ばした。そしてその結果、落とし穴の上へその巨体を乗せる羽目になり、ついにバルパロは格子の角材や藁などと一緒に穴の中へと落下して行った。


春斗はと見ると、後ろ向きに弧を描いて空中を飛んでいる。30メートルの落とし穴を跳び越えて、反対側の縁の向こうへと着地したのだった。


バルパロは、穴の中で体勢を戻そうと動き回っている。そのバルパロに対して、シャトルは容赦なく光線銃を浴びせ続けていく。またもや、尾の関節部分から血が流れだした。


それでもバルパロは、穴の外へと出ようともがいている。それを城壁の上から見ていたジャンが、待機していた兵たちへ檄を飛ばした。

「今だ!取り掛かれ!」


兵たちは前もって用意されていた重油の樽を転がしながら、落とし穴へ近づいていく。そしてその油を四方八方から、落とし穴の中へ流し込んだ。その樽の数は、何百にもなってバルパロの体の半分を埋め尽くす。


重油はバルパロの体に纏わりつき、それに木材の格子や藁が絡みついて、バルパロの動きが鈍くなった。そこへ、シャトルの電子銃が発射されると、重油に火が付いた。


徐々に重油の温度が高くなると、穴の中は一斉に炎が立ち上がり、さながら地獄の様相を呈している。炎と黒煙の中で、巨大なバルパロが体をうねならせ、爪と足をばたつかせて身悶えている。


口からは泡を吹き出し、その泡がパロパロ自身に降りかかり、硬い甲羅も溶かしていく。そして、油の火が静まってくると同時に、ついにバルパロの動きも止まってしまった。


兵たちは、地獄絵図を見たように立ちすくんでいたが、ジャンの声で我に返った。

「勝ったぞー!」

それを聞いた兵たちは、一斉に勝鬨の声を上げた。

辺りには油の匂いと、甲羅が焼けた匂いが入り混じって漂っている。穴の中を見下ろすと、バルパロは腹を上にして、爪や足は体から焦げ落ちて、体の半分は溶けてなくなっている。その残骸が、焼け残った重油と泡の塊に半ば埋まって黒く焦げていた。


ジャンは、そのバルパロと落とし穴の処理は明日にする、と宣言して、兵たちを労い酒席をシャーロットに命じて用意させた。兵たちが喜んだのは言うまでもない。その頃、美月は人知れずアローから、シャトルに乗って帰っていた。春斗は美月と抱き合って、お互いの健闘を称え合った。


酒宴の席での事だった。春斗は、ジャンに提言した。

「バルパロが、あれ一匹だとは思えない。ザンゴは大量に発生していたし、ギャモンドだって年に何体も出現している。バルパロに対しての備えは、これからも必要だろう。」


ジャンもそれに同意した。

「それでなんだが、これは他の誰にも秘密にしてもらいたい事なのだけど。」

そう前置きして、連絡道具としてのネックレスについて言及した。


「これを身に着けていると、いつでも私と話が出来るようになります。無論、ミツキとも。それでこれをジャン殿とシャーロット様に、献上したいと思いますが受け取って貰えますか?」


変哲もないブレスレットを見せられて、ジャンは驚いた。海の都市と北都の間でも会話ができる、そんな話は聞いたことがない。ジャンは、それも春斗の不思議な力の一つだろうと理解した。


機器がそれを可能にするとは、夢にも思っていない。シャーロットにも説明して、他人には内緒にするとの約束で、美月にブレスレットを二つ用意してもらった。これで、海の都市がまたバルパロに襲われそうになっても心配ないだろう。


続きは明日。「新たな脅威」

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