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昨日の続き

ジャンは早速、港近くの住民に対して避難の準備に取り掛かるように、少数の兵ではあったがその兵たちに指令を出した。兵たちは機敏に行動する。この漁村の住民は、殆どが死亡したか重傷を負って、既に都市へと運ばれている。後は港近くの住民だけだ。それでも1000人は下らないだろう。受け入れる方も大変な作業になる。


春斗はジャンに、浜辺へ行ってバルパロが上陸しないか監視してくる、と言い残して一人でシャトルへ向かった。ステルスで隠されているシャトルへ乗り込むと、探知機能を働かせて浜辺の上空でホバリングしていく。


数時間、そうして見張っていると、海の一角に波が泡立ち始め徐々に、大きな蟹のような爪の先が現れて来た。濃い緑色だ。表面は、岩のようにごつごつしている。その爪の先が、見え隠れしながら段々と陸地へ近づいてきた。


浅瀬まで辿りつくと、その全貌を現した。バルパロの背の高さは20メートル以上有る。爪を上げれば、30メートルは有りそうだ。横幅も同じくらいあり、予想とは違って横歩きではなく前進している。体の下には太い多くの足が蠢いている。


前面の下部には横長の口が有り、その足元では砂利との摩擦でじゃりじゃりと大きな音を立てていた。少し方向を変えると、その体の後方に海老のような長い尾が付いてるのが見える。その下にも無数の足が動いている。その足の一本一本にも鋭い爪が付いていた。


春斗は胸のブレスレットを押して、美月に連絡を取った。

「バルパロが姿を現した。今どこに居る?」

「もうすぐに海の都市へ着くところ。シャーロット様に、もう少しで会える。此方の事は心配しないで。万が一の時には、私がシャーロット様を守るから。」


「ああ、注意して、バルパロがそっちへ向かっている。僕は波打ち際で応戦する。」

港付近の坂道にはまだ住民の姿が有り、現れたバルパロの姿に驚くと同時に右往左往している。その住民に交じって、避難を誘導している兵の姿も見えた。あの中に、ジャンの姿もあるかもしれない。


シャトルを、バルパロとその坂道の中間あたりに降ろした。バルパロは、もう波打ち際から上陸を始めている。その辺りには人気が無いのにかかわらず、バルパロは突然その口から泡を吹いた。


泡といってもその噴出力は凄まじく、その泡が当たった港に係留されていた船が数隻吹き飛んだ。吹き飛ばずに残った船でも、その泡が掛かった場所から、船はどんどんと溶けていき沈没してしまう。


岸壁の岩も、その一部が溶け始めている。浜辺から港の広場へ進んだバルパロの足は、その岸壁を壊していく。凄まじい威力だ。春斗は思い切ってバルパロの傍へ行く。


春斗を見つけたのだろうか、春斗に向かって泡が吹き飛ばされてきた。泡は春斗の体を包み込む。シールドの中の春斗は、それを内側から見ていた。問題は無いと思っていたシールドが、少しずつ外側から浸食されている。


春斗の体に届くにはまだ余力があると思われたが、それでも安心はできない。春斗はその場所から移動しながら、渾身の力でバルパロに対して光線を放った。光線はその口の中を狙ったが、何の変化はない。


再び、泡が噴出された。また、シールドが薄くなった。春斗は、何回か攻撃を繰り返したが、硬い甲羅の表面を傷つける位しか出来ない。ブレスレットの武器では駄目だ。そう判断して、シャトルへ乗り込む事にした。


その間に、今度はバルパロが逃げ惑う民衆を狙い始めた。まだそこまでの距離は有ったが、放物線を描くように泡を発射したのだ。獲物を獲るための知恵が備わっているのだろうか。


放出された泡は、その最後尾にいた人たちの頭の上から降り注いだ。泡に埋もれた人々から絶叫が聞こえてくる。春斗は、その人たちに対して申し訳ない気持ちで一杯になりながら、シャトルへ乗り込み上空から光線銃を撃ち続けた。


それでも体部分の甲羅に、傷を付けて緑色の血が少し出て来ただけだった。バルパロの進行は止まらない。

ところが良く観察すると、沢山の血が出ている場所が見受けられた。それは尾の関節部分だった。どうもその部分だけは他の部分に比べて弱そうだ。


それにどういう生物でも、目だけは弱点だと思う。そう気づいた春斗は、シャトルを自動操縦にして、電子ビームには尾の関節部分を狙うように設定した。そして、バルパロの直ぐ上空でホバリングして、自身はその背中へ飛び降りようと試みた。


前方へ突き出た目を狙う為だ。その目は小さくて地上からや上空からは狙うことが出来ない。バルパロの背中へ乗り移り、頭の部分まで移動して、其処から目を狙おうと思い付いたのだ。


春斗がブレスレットから光線を放っていた頃、ジャンは逃げ遅れた民衆を守りながら、坂道を登っていた。都市の城壁までの中間あたりまで来た時に、バルパロから噴出された泡が、頭上へ降り注いできた。その泡に飲み込まれた何人かが、ジャンのすぐ傍で絶命していく。


ジャンの兜にも、その泡の一部が降り注いだと思ったが、かろうじて免れたようだ。後ろを振り返ると、春斗がザンゴに浴びせたような光の武器を放っている。春斗は、バルパロの泡を浴びてもなお応戦している。つくづく不思議な人だ、と改めて感嘆したが、それに慣れてしまっている自分もいた。


春斗は、シャトルから飛び降りようとしていた。バルパロの背までは10メートルほどだ。飛び降りようとシャトルのフードを開けた時に、バルパロの腕が伸びて来て、その爪がシャトルを跳ね飛ばした。シャトルに損傷は無かったが、春斗はシャトルから投げ出された。


上空で体が回転して、上下の区別が一瞬だったが出来なくなった。それでも、バルパロの背中を目掛けて必死に体勢を立て直す。甲羅の前方に付いている目の近くを狙って降りようとしていたが、意に反して尾の部分に落下してしまった。


その近くに体勢を立て直したシャトルの光線銃が、絶え間なく降り注いでいる。それを避けようとしてもどうしても当たってしまう。薄くなっていたシールドに光線銃が当たると、なおもシールドが破損していく。


それでも春斗は、バルパロに振り落とされないようにと踏ん張りながら、その背中へ向かって登り続けた。背中は絶壁の岩肌のような甲羅だったが、少しずつ飛び上がるようにすると、体は軽くなって上方へと登っていける。


これもブレスレットの力のようだ。シャトルから落下している時にも、その速度が緩んでいたような気がした。ようやく、頭の部分にたどり着き下を覗くと、其処に人の頭ほどの大きさの右黒目が動いている。そこまでの距離は2メートル程度だ。


この頭の頂点辺りへは、長い爪も届かない。これなら狙える。そう思って、右腕を上空へ伸ばし、思いっきり振り下ろした。今までで一番と言っていいほどの、強い光線が発射された。その光線は太い帯になって、真っ黒で左右に動いている目玉に一直線に向かった。


そして、その光線がその目に届くと、さしものバルパロの目も緑色の血を吹き出しながら、四方へと飛び散っていく。相当なダメージだったのだろう。バルパロは体全体を前後左右に振り動かしながら悶絶しているようだった。その勢いに振り回されて、春斗は空中へと投げ飛ばされた。


春斗は投げ飛ばされながらも、体勢を立て直してもう片方の目も狙った。如何せん、狙いは定まらない。光線は外れ、春斗は地上へ軟着陸した。バルパロは、その体に似合わないような速さで海へと逃げていく、その地面には、尾の部分から出ている緑の血液の跡が点々と残っていた。


そして、バルパロはついに海の中へと消えて行ってしまった。

「あれでもダメか、討ち損じた。」

春斗は、肩で息をしながら独り言を言っていた。


春斗が海の都市へ戻ると、ジャンもシャーロットと一緒に避難してきた漁民たちの世話をしていた。都市の市民も、それを補佐している。領主だった者は、早々と王都へ逃げ帰っている。また、何時バルパロが襲って来るかも分からない。避難民の収容、インフラの修復、警備の拡充、バルパロ討伐の計画、やる事は山ほどあった。


それには多額の資金が必要だったが、税金の蓄えも領主が全て持って行ってしまっていた。ジャンは王都に救援を要請すると同時に、私財でその費用を捻出しようとしていた。春斗も、貰っていた金と蓄えをその費用に補填するため、北都から取り寄せている。


その間に、美月はシャトルへ乗り込みアローへと向かった。アローを海の都市の上空へ待機させて、都市全体にシールドを張るためだ。報告を受けて詳細を理解した国王は、軍の一部と必要な資金の大半を送り届けたくれた。


逃げ帰った領主については、その地位を剝奪したり財産を没収したりして、1年間の謹慎を申しつけたのだった。それに代わり、ジャン・ソレッドを新たな領主に任命して緊急の復興を命じた。


続きは明日。

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