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昨日の続き

「動くな。王女は頂いていく。人質だと思っていい。王女の命が大事だったら、これからは私たちの国の為に働いて貰おう。お前はそれを、皆に伝えてこい。早く行け。」

リアムが春斗を威嚇する。それでも春斗は動かない。


その場で右の掌を前に出して身構えていると、リアムは空へ向かって剣を突き上げた。それを建物の屋上で見張っていた兵士が居た。それが合図とみえて、屋上から春斗へ向かって数本の矢が放たれた。矢は勢いよく、春斗に向かって突き刺さろうとしている。


屈強な兵士なのだろう。矢に勢いが有った。ところが矢は全て、春斗の体に突き刺さったと思われた直ぐ後で地上へ落下した。

矢を放った兵士もリアムも、一応に驚いた顔をしている。


「なんだ、なぜ刺さらない!」

すると、リアムはまたもや空へ向かって剣をぐるぐると廻し始めた。同時に春斗へ向かって、またもや無数の矢が放たれた。その時点で、建物の表側で待機していたアサフルト国の兵士へも、敵兵が放った大量の矢が襲い掛かる。


それでも兵士たちは隊長の命令通り、馬車の近くで待機しているため、シールドの効力で怪我を負う事は無い。春斗の周りにもすべての矢が落下していた。春斗は、その矢の1本を手に取って調べた。やはり、昨日の襲撃に使われた矢と同じ種類だ。


リアムとその従者は、あれだけの数の矢が降り注いだにも拘らず、何故春斗に突き刺さらないのかと目を白黒させている。

「昨日の私たちに対する襲撃も、あなた達だったのですね。盗賊の姿で襲うなど、卑怯なやり方だ。」


「何を言っている。王女は我の手の中に有る。お前がどんな術を使ったか知れないが、今すぐ投降しろ。さもなければ王女を刺し殺すぞ。」

表側の兵士たちは、隣国の兵士たちに襲撃されていた。


アサフルトの兵士たちは、シールドの範囲内でそれに応戦していたが、何故か敵側兵士はそのシールド内へは入って来れない。壁に突き当たったように進入できずにいるのだ。敵側兵士だけではなくアサフルト軍の兵士たちも、何が起こっているのか分からずにいた。


ただ、戦闘をする必要は無いようだ、という事は分かる。その時に、建物の屋上で騒ぎが起こっていた。見ると大勢の敵兵士が矢を射ってくる。地上の兵士たちのリーダーが、すかさず判断を下しその屋上めがけて矢を放った。反撃をしたのだ。


シールドの内側からは、矢が突き抜ける。屋上に居た兵士の半分は、その勢力を失っていった。屋上からの矢は、何の役にも立たなかった事は言うまでもない。屋上から矢を射ってこないと分かると、今度は地上の敵兵士に向け矢を放って行く。敵の攻撃はことごとくシールドに拒まれているのに、敵方への矢は次々と兵士を倒していった。


大広間の会見の場所でも戦闘が開始されていた。此処ではシールドが作用していない。ジャンたちは、レオ王子を守りながら応戦している。とりわけ隊長とジャン・ソレッドの活躍は目覚ましく、相手側の兵士をなぎ倒していく。


相手国の10人の兵士と二人の護衛剣士は、何らかの傷を受けていた。形勢は、アサフルト国へ有利に展開している。


その頃、リアムは相変わらずシャーロットに剣を突き付け、春斗を牽制していた。

「いまここで王女を離したら、あなたを傷つけないと約束します。でもそうでないのなら徹底的に打ちのめしますがそれでも構いませんか?」

春斗が言うと、リムルは高笑いをした。


「はは、はは。何を言っているのだ。お前は護衛役なのに何の武器も持っていない。そんな間抜けなお前に何ができる。それにこちらには王女という人質もいるのだぞ。」

「分かりました。それでは遠慮なく行かせてもらいます。」


リムルは左腕でシャーロットを抱え、右手で剣を持ちそれをシャーロットの胸の辺りに着けて構えている。右肩が空いていた。春斗は拳をそっと握ると、右手の人差し指をだけを伸ばしてそのリムルの右肩に照準を合わせた。


リムルは、そんな春斗の奇妙な動作にも薄笑いをしている。その刹那、春斗の右指の回りが一瞬だけ光った。次の瞬間、リムルは右肩に強い痛みを感じていた。何が起こったのか分からずに、右肩辺りを見るとそこから赤い血が大量に滲み出ている。体の力が抜けていく。


護衛の兵士は、シャーロットの右横に位置していた。すかさず春斗は、その護衛に向けてもビームを浴びせ掛けたのだ。力が強すぎた。護衛は構えていた剣もろとも、その右腕が肩の辺りから吹き飛んだ。護衛の、肩口から鮮血が噴き出ている。


「ギャー。」

流石の護衛も、悲鳴を上げてその場に崩れ落ちた。リムルの戦意は、極端に落ちたように見えた。それを見た春斗は、くうを飛んでリムルへ体当たりをしていく。その距離は10メートル以上あったがハルトはそれを一気に飛び、地上2メートル以上の上から襲い掛かった。


体当たりを受けて、リムルは肩の痛みを庇うようにしてその場へ転倒していった。春斗はシャーロットの手を掴むと、その体を春斗の後ろへと隠すようにする。一旦は転倒したリムルだったが、気を取り直したのか武人の沽券に係わると思ったのか、片手で剣を構え直してその春斗とシャーロットめがけて、大剣を振り下ろしてきた。


シャーロットは目を瞑ってしまった。その剣が体に当たると感じたからだ。でも体に痛みも衝撃もない。そっと目を開けると、大剣は二人を避けるようにして地面へ刺さっている。何が起こったのか、シャーロットも不思議な気持ちでいた。


春斗に降り注いだあの矢襖も、一本として春斗の体には当たらなかった。この春斗は勇士という称号を得たという事は知らされていたが、その正体については何も知らなかった。ジャンからも聞いていない。それでも、今は力強い味方なのだ、と自分に言い聞かせている。


「もう、止められたらどうですか?」

春斗はリムルに呼びかけた。

「何を言う!ここまでコケにされて、黙ってはいられるか。」

屋上で待ち伏せしていた兵士たちは、春斗に矢を射かけようにもリムルが傍に居る。矢を射る事に躊躇していた。


リムルは力を振り絞って、その大剣を春斗の胴を狙って横殴りに振るってきた。でも剣は、春斗の腹の直前で止まっている。リムルとしたら、間違いなく手ごたえを感じているのにだ。

「な、なんだ、お前は、どうなっている。化け物か?」


「もう諦めたほうがいいですよ。いくら挑んできても無駄です。あなたは曲がりなりにも、一国の王子だ。命までは取ろうとは思いません。アサフルト国に対して、有利な立場をとりたいと思ってしたことだと思いますが、これ以上挑んできたらいくら王子と謂えども容赦はしません。潔く、剣を引かれよ。」


「いや、まだまだ、表の兵士たちもいるし、広間の兵士たちもお前の国の大使たちを襲っているはずだ。我が国が負けるわけがない。」

そうリムルが言った矢先に、建物の中からジャンたちがリムルの大使や貴族を引き連れて出て来た。


ジャンたちに、被害はないようだ。リムルが屋上を見上げると、兵士たちはその戦意を喪失している。大半が地上からの矢を受けて倒れていたのだ。

「建物内も外も屋上も、殆ど制圧しました。リムル王子、観念をしてください。」


ジャンはそう言うと、シャーロット王女の横へ移動して、その体を保護している。王女にやっと笑顔が戻ってきた。その表情に春斗は、おやっ、と感じたのだった。


一件は落着したかに見えた。ところが屋上に居た敵兵士の一人が、空へ向かって大声で叫んでいる。

「ザンゴだ。ザンゴだ。ザンゴが来た。」


敵も味方も一斉に空を見上げた。そこには、大きな羽を広げて羽ばたいているドラゴンのような生物が見えた。それも一頭や二頭ではない。少なくとも十頭は数えられた。上空であるにもかかわらず、かなりの大きさに見える。


地上へ近づくにつれて、ますますその大きさが分かった。頭の先から尾の先まで、10数メートルは有るだろう。その群れが、一直線にこちらへ向かって飛行してくる。人間を、餌だと思っているのだろうか。


生き残っていた敵兵士たちは、そのザンゴと呼ばれた生物の恐ろしさが分かっているようだ。皆一様に慌てふためき、砦の中へと非難していく。春斗はジャンに進言し、王子と王女、それに貴族たちを春斗たちが居た控室へと非難させた。その場所なら、シールドの効力が充分に発揮されているはずだ。


「ハルト殿はどうなさる?」

「私の事は心配しないで、あのザンゴという生物と対決してみます。」

ジャンは、春斗の強さを知っている。全幅の信頼を置いているのだ。言われたまま王子たちを避難させると、兵士たちも馬車の近辺へ集めている。


そうしている間にも、ザンゴはいよいよ接近して兵士たちを襲おうとしている。驚いたのは、その口先から炎を吹き出したのだ。噴き出た炎は、砦を焼き払うだけではなくその石の壁も壊していった。相当な力だ。


屋上に居た敵の兵士たちはたちまちのうちに焼き殺され、ザンゴの餌食になってしまう。それと同時に、屋上は崩れ落ちて二階の壁だけが残っている。ザンゴはその壁も壊し始めている。


春斗は、近づいてきた一頭のザンゴへ向かって強い光線を浴びせかけた。光線は、その大きな羽に当たった。羽の一部が焼け焦げ、穴が開く。ザンゴは片方の羽だけで羽ばたいているが、思うように動けない。


そのザンゴへ向かって、二度目の光線を放った。ギャモンドよりは、その皮膚は柔らかそうだ。光線は跳ね返されることもなく、ザンゴの体を貫いた。大量の血液が降り注ぎ、大きな叫び声と共に最初の一頭が絶命し、地上へと落下して来た。


それを見た数頭のザンゴが、春斗に襲い掛かる。春斗は、傍に来たザンゴめがけて続けざまに光線を発射させる。ザンゴは次々と倒れていく。その様子を建物の中から、あのリムルが見ていた。


「なんだ、なんだ。あいつは。武器らしい武器も持っていないのに、まるで魔導士だ。あんな奴がアサフルトには居たのか。あいつ一人に、我が国の兵士全隊が挑みかかっても勝てないかも知れない。」

そう呟いていた。心底、恐れたようだ。


ザンゴは次から次へと現れて、その数は一向に減らない。それでも、春斗と仲間のザンゴとの戦闘を見て、到底かなわないと感じたのだろう。春斗の近くには寄って来なくなった。


上空に留まり、口から炎を出し砦を壊していく。王子や王女に危険は無いと思っていても、そのままにはしておけない。春斗は一気に、壁のなくなった二階の床へと飛び上がった。思ったよりも楽に、飛び上がることが出来た。


そして無くなった天井から上空を見上げると、さらに攻撃しているザンゴへ光線を発射する。ザンゴは空を飛んでいる。今は春斗に対して警戒もしている。逃げ回ったり、威嚇したり遠くから炎を吐き出してくる。


それでも春斗には届かない。春斗の光線はますます威力を増して、遠巻きに威嚇しているザンゴも容赦なく焼き払っていく。10頭余りのザンゴは仕留めた。さすがの残っていたザンゴも、それを見て大空へと飛び去って逃げて行った。


残ったのはアサフルト国の使者や兵士たちと、少数の敵国の兵士と大怪我を負ったリムルだ。リムルは、春斗の活躍を見て観念したようだ。戦意は失っていた。


「それで、このリムル王子はどういたしましょうか?」

隊長がレオ王子に質問する。

「我々を欺き襲撃を試みて、シャーロットを人質に取るなど、言語道断。此処で切り捨ててもいいのだが、そうすれば二国間の紛争に発展する恐れがある。


敵兵士たちが死傷したのは我々の責任では無く、ザンゴの襲撃がその主な原因だ、という事も知らしめたい。何にせよ、今回の責任は取ってもらう。その為にも生きて帰国させるのが上策だと思う。」


「このまま、王子を人質として我が王都へ連れ帰るという手も有りますが?」

「いや、このまま帰国させよう。我が国にはハルト殿が居る。いかに大軍で攻めてこようが、適わないという事は身にしみて分かったであろう。これからも交渉は続けるが、恩を売っておけば我が国に有利に働くだろう。」


その言葉で、リムルは解き放つことに決まった。こうして、二国間の縁談から発した争いは終息を迎えた。


帰国すると、春斗は王と王子から今回の働きに対する労いの言葉と、報奨金を受け取った。その際に春斗は老婆心ながらと、王に進言をしてしまった。旅の途中で気になった、シャーロット王女とジャン・ソレッドの事だ。多分、二人は愛し合っているのではないかと感じたのだ。


それをそれとなく、いやはっきりと王女に確かめて欲しい、もしそうであればジャンとの婚姻を認めて欲しい、そう進言したのだ。後日になったがシャーロットとジャンはお互いの想いを打ち明け、王と王妃の許しを得て婚姻の運びとなった。


続きは明日。 「バルパロの襲撃」

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