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昨日の続き

「狼狽えないで、大丈夫です!この馬車から遠くへ離れないでください!矢が矢が飛んできても、けっして当たる事は有りません。」

隊長を含め、ジャンや兵士たちはその春斗の言葉で落ち着きを取り戻していた。隊長の指示のもと、馬車を囲むように体勢を整えていく。その時に再度、矢襖が襲ってきた。またあの森の奥からだ。その矢の数から、敵は100人以上居るようだ。


次は、その者たちが一斉に襲って来るかも知れない。その時に、隊長がその地面に刺さった矢の一本を手に取って言った。

「これは、盗賊どもの矢ではない。ちゃんとした兵隊の矢だ。もしかしたら、隣国の兵士が若様と姫様を狙ってきたのかも知れない。」


春斗はそれを聞くと隊長に進言した。

「ここを離れずに、お二人を守ってください。もし、此処が襲われてもこの一帯は誰も進入できません。私はあの森の近くまで行って、襲撃者を確認してきます。」


春斗の不思議な力は、隊長もあの災いの時に認識している。あの時災いであるネズミの大群は、城壁の中に一匹も入って来られなかった。それで春斗の言葉を信じて、兵士たちに持ち場をけっして離れるな、と命令していた。


春斗はエルに跨り、前方の森へと駆けて行く。そしてもうすぐに森の端へ到達すると思われた時に、何十人という一団が鬨の声を上げ、槍や刀を振りかざしながら森の中から現れた。


その一団は色々な甲冑に身を包み、色々な武具を携えていたが、見た目は一国の兵士達とは程遠い。ただの盗賊に見える。ただ、その統率の取れた動きや、身のこなし方がただの盗賊とも思えない。


春斗は即座に判断して、森の上端を狙って光線を扇状に発射させた。右手から発射された光線は、数十本の幹の上半分を吹き飛ばした。そしてその飛ばされた幹や枝の束が、まさに襲おうとしていた賊の頭上へと降り注いだのだ。


賊たちは何が起こったのさえ分からずに、慌てふためいている。それでも普段鍛えているのであろうか、我に返った者達からさらに突進してきた。春斗はその足元へ向かって、もう一度光線を発射した。


今度はその威力で、賊たちが進もうとしていた直前の地面に横へ広く土煙が上がり、其処には深さ1メートル近くの溝が出来上がっていた。それを見た賊たちの進撃がまた止まった。信じられない威力を目の当たりにして、どうしてよいか逡巡している。


頭領らしき男が馬上で怒鳴っていた。怯むな、進め、と言っているようだ。今のところ、賊たちに被害は出ていない。春斗は一瞬ためらったが、その頭領らしい男へ向かって弱い光線を放った。それも命の危険のない右腕を狙った。


光線は、その男の右腕の中央辺りに吸い込まれていく。極力弱くしたつもりだったが、光線はその男の右腕の半分より先を吹き飛ばしてしまったのだ。鮮血が迸った。さすがに、その男に叫び声は出なかった。それからしても、ただの盗賊とは思えない。


その傍に控えていたもう一人の男が、前方の隊列を見て何かを進言している。あれだけの矢襖を射ても隊列になんの損害も与えていない事が分かったようだ。しかも、兵士たちは果敢にその場で武器を構えている。


その進言を受けて、頭領らしき男がその仲間に何か言っている。すると、全員が一斉に踵を返して森の中へと消えて行ってしまった。春斗は、その一団は盗賊だとは思っていない。あの統率の取れた行動は、一国の兵士たちなのであろうと解釈した。隊列に戻ると隊長とジャンに自分の考えを伝えたが、隊長もその弓矢の質から盗賊では無かろうと言う考えに賛同してくれている。


「それでも、あの賊が今から向かう国の兵士たちだという証拠はない。ただ、そうかもしれないと言う危惧だけは持って、油断しないようにしよう。」

隊長が言った。シャーロットとレオには、随伴者の貴族から事の顛末を伝えて貰った。すると、二人の王族は馬車から降りて来た。


レオ王子が春斗に向かって、言葉を掛けて来た。

「ハルト殿、今回も危険を排除してくれて大変ありがとう。私も賊は相手国の兵士かも知れないと心に留めて、交渉を行う事にします。」


シャーロットも、ハルトに声を掛けてくるのかと思ったら、意外にシャーロットはジャンの傍へと進んでいった。そして、何かを小声で話している。その目には強い憂いと同時に、信頼の光が宿っているように見えた。


その夜は、予定通りに、その場で野営を設営した。もしまた襲われたとしても、被害は出ないだろう。全ての人達に、そんな安心感が有った。


何日か後の昼過ぎに、一行は目的地である国境付近に建てられた仮の砦に着いた。それまでに、新たな襲撃は無かった。仮の砦と言っても、石造りの立派な建物だ。完成させるまでには相当な労力が必要だったことが分かる。


この建物は、この見合いと交渉が終了したらどうなるのだろう、春斗はそんなどうでもよいような感想を持った。隣国の一行は既に建物の中へ入って待っていた。前もっての取り決めで、兵士たちは王子と王女の部屋の近くの所定の場所で野営する事になっている。


シールド装置が取り付けてある馬車は、その野営地の中央辺りに配置してある。隊長とジャン、春斗と二人の貴族は建物の中で、それぞれが小さな部屋を使用している。建物は左右対称に造られていて、、反対側には同様に隣国の使者たちが使用していた。


中央に大広間が作られていて、其処が会見の場所になっている。シールドの効果は、充分に全員をカバーしているはずだが、建物全体はカバーしきれない。兵士たちは到着と同時に野営の設営を始め、王子たちと春斗たちは、早速建物の中へと入って行った。明日の会見の前まで、外に居る兵士達以外は相手国の人々と顔を合わせる機会がない。全ては明日から始まる。


 その見合いを兼ねた会見が始まった。相手国側の中央にはその王子が、その両脇には二人の貴族らしい使者が並んでいる。そしてその後方には護衛兵であろう、10人の武装した兵士が立ち並んでいた。


アサフルト国の側も同様だった。春斗はシャーロット姫のすぐ後ろに控えている。ジャンはその隣に並び、その横にはそれぞれ4人ずつの兵士が立ち並んでいた。


両国の使者の間には、長いテーブルが設置されていた。椅子は6脚ずつしかない。兵士たちは、部屋の隅へ移動する事になっていた。最初のイベントは、両国の王子と王女の紹介から始まった。


「こちらに居わすのは、我が国の王子リアム様でございます。」

リアムと紹介された王子は、その横に並んだ貴族の紹介を受けて中央の椅子へと移動していく。見ると、偉丈夫な体に派手な金色の衣装をまとっている。腰には剣が携われていた。一見はハンサムな好青年に見える。ただ、相手を見下すような所作が見受けられたと春斗は感じた。


次にシャーロット王女が紹介され、その対面へ座る。紅色のロングドレス姿だ。紹介されると同時にスカートの両脇を手で広げて腰を屈め、頭を下げて挨拶をする。リアムはシャーロットの美しさに見とれているようだ。


それから数分は、二人だけでの会話が始まった。どのような会話がなされたのかは、春斗たちには聞こえてこない。その短い会話が終わると、あらかじめ決まっていたのであろう。二人は連れ立って、部屋の外へ出ていく。


シャーロットにはジャン・ソレッドが付き添う事になっていたが、その役を春斗と交代した。万が一にも王女に危害は加えられないという、ジャンからの要請だった。ジャンは、春斗に全幅の信頼を置いていたのだ。


二人が会見場所から出て行くと、残った5人がテーブルに着いた。ここからが両国間の交渉が始まる。主題は勿論婚姻に関する取り決めになるのだが、その為の条件があるようだ。お互いに相手国を信頼できるのかどうかが、その鍵になる事は間違いない。


その交渉が始まって30分位したころだった。シャーロットとリアムは裏庭に居た。二人並んで、会話をしている。お互いに伴侶として相応しいかどうか、恋愛感情に発展する事は期待できそうにないだろうが、国同士が手を携えていくことが出来るのかどうか、そんな思惑を秘めて相手を値踏みしているのだろう。


個人の恋愛による婚姻とは程遠い。春斗は相手国の護衛と共に、二人より10メートル離れて随伴していく。その時だった。春斗と一緒に歩いていた護衛の兵士が、その持っていた剣の柄に手を掛けてシャーロットの方へ向かって走り出した。


と同時にリアムもその腰の剣を抜き払って、シャーロットの腰に手を回しながらシャーロットを拘束している。そして、その剣先をシャーロットの胸元へ近付けていまにも突き刺そうとしているのだ。


春斗はしまった、と思いながらも冷静に(武器使用)と小さく声を出した。相手国の二人は、護衛であるはずの春斗に武器がない事を確認して暴挙に出たのだ。その時には相手国の護衛も、シャーロットの隣で剣を持って構えていた。


続きは明日。

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