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昨日の続き

それで、そのシャーロット王女の見合いの場所まで随行して欲しい、という要請だ。以前、富豪の娘のジュリアとその家族が、城壁の外で賊に襲われた事も有る。ましてや一国の姫様が城壁の外へ出るなどいう事は危険極まりなく、殆どない事なのだろう。


それに今回は王女だけではなく、王の二人の子供が同時に外遊するのだ。巨大生物の襲撃や、思わぬ盗賊の攻撃も有るかもしれない。ジャン・ソレッドのような王都の兵士たちが護衛に着くのだろうが、それでも王と妃にとっては不安が尽きないに違いない。万が一の事がないように、春斗に随行してもらえれば二人の安心に繋がると考えたのだろう。


春斗はその気持ちを察し、これまでの厚遇にも応えるためにその随行を了承した。そうなれば、しばらくは北都へ帰って来られない。どの位の日数がかかるのかよく分からなかったが、その親書の内容を美月に説明した。


その王女の相手は、隣国の王子だと言う。隣国まではその境界まででも、馬車に乗って半月は掛かるようだ。そうすると往復と、向こうでのイベントを考えれば一ヶ月以上の予定になるかもしれない。


隣国もこちらと同様に、城壁都市の集まりのようだ。そしてその境界までは草原や荒れ地が広がっている。今回は、隣国のその城壁都市まで出向く訳にはいかない。そうかといって、こちら側の城壁都市を会場にする訳にもいかなかった。それ程、両国の間に信頼感はない。


万が一、王女や相手側の王子が人質にされては困るのだ。したがってその境界に、お互いに経費と人手を出して仮設ではあるがそれでも堅固な出城を造っている、其処を会場にして見合いを行うという事のようだ。


そして一行の大使として、弟の王子レオが担う事になっている。随行する兵士は昇格したジャン・ソレッドを含めて、総勢で100人程になると言う。春斗は、その隊列に参加する事になったのだ。


今回は、アサフルト王の子供が二人も参加する。巨大生物の脅威や思わぬアクシデントからも、ジャンや春斗は二人を無事に帰還させなければならない。しかも、隣国との交渉も平和裏に成功させるのが、大使であるレオ王子の役目なのだ。


まだ若いレオを補佐する必要も出てくる可能性がある。春斗は、二人の安全を第一に考えている。それで、美月にも相談する事にした。

「ミツキ、また相談があるんだ。いつも、相談ばかりで申し訳ない。」


美月が笑って答える。

「とんでもない。こうして時々でも領主の補佐のような仕事も務めさせていただき、、ハルトに命令されるのは嬉しい事であり光栄な事なのです。私たちが、ハルトの役に立っていると実感できますから。」


春斗は、アサフルト国の王子と王女を守って隣国まで行く、という話をかいつまんで説明した。二国間にはそれ程の信頼関係は築かれておらず、襲撃される想定もしておかなければならない。しかも、何処にギャモンドのような巨大生物が潜んでいるかも分からない。春斗一人だけならどうにでもなるのだけれど、今回は王子と王女を含めて総勢100人以上を守らなければならない。


「それで相談というのは何ですか?」

「ああ、この僕が嵌めているパーソナルなシールド装置なんだけど、これを随行する者達全員に作れないだろうか?武器はいらない。身の安全の為なんだ。」


美月は即答した。

「それは、作ることは出来ますが、でもそんな必要は無いと思います。以前にアローから北都や王都へシールドを掃射して守ったことがありますが、それと同様な事をすればよいのではありませんか?」


「うん、それも考えたけれど、それだと何時もミツキに見張って貰っていなければならないよね。僕たちは常時移動するのだから。それに、そんな大掛かりにしなくても、それなら単に隊列全体だけでもシールドでカバーできればいいと思っているんだ。」


「そうですか、それでは100人程度の隊列でしたら幅が5メートル、長さが100メートルほどをカバー出来ればいいのですね。余裕をもってその倍としましょう。それでしたら、携帯用のシールド装置を作りましょうか?それを中央に位置するの馬車に設置すれば、その程度の範囲は楽にシールドで覆うことが出来ますから。」


「ああそう、そういう方法があるのか?ではそうして欲しいな。それが有れば隊列は安全になるよね。」

「そうですね、それでは1時間ほどお待ちください。直ぐにご用意します。」

美月はそう言うと、部屋の中から出て行った。近くへ隠してあるアローへ行くのだろう。春斗も一緒にアローへ乗り込むと、久しぶりに天空へと飛び立った。


そして、そこから地上を眺める。周回軌道上のアローから見る地上は、とても美しい。半分は青い海で、その中に3つの大陸が見える。2番目に大きな大陸が春斗の居る場所だ。他の大陸には、どんな文明が有るのだろう。この惑星全体が、アサフルト国と似たようなものかもしれない。何時かは、他の大陸にも足を延ばしたいと思ってしまった。


1時間は直ぐに過ぎた。コントロール室に春斗が居ると知って、美月がやって来た。手には、10センチ四方の立体形の黒い箱を持っている。その箱を春斗に手渡した。


「これが、シールド装置です。馬車のどこでも構いません。此処の留め金を馬車に取り付けて、動かないようにしておいて下さい。それで、効力が発動します。」

見ると、箱の両脇に薄い羽根が出ている。その羽根の中央に小さな穴が開いていた。馬車が木製であることから、取り付けるのにはそこへビスを打ち込めばいい。


「ありがとう、ミツキ。本当に助かる。」

「それで、今日はどうなさるのですか?アローに泊まります?」

「ああ、何時もミツキをお願いするだけで、本当に申し訳ないと思っているんだ。たまには、此処でミツキと話をしたり食事をしたりしていたい。付き合ってくれますか?」


「はい、喜んで。アローも喜ぶと思います。」

春斗は、久しぶりに美月と地上での出来事を話し合う時間を持てた。そして、思いっきり愛し合った。領主の部屋では、誰が聞いているか分からない。秘密にしたい話も合った。


隣国へ向けての出発は、それから5日後だった。春斗は王都へ向かい、その出発式に参列した。城の大広間では、シャーロット王女を中心にして華やかに壮行会が開催された。それでも、シャーロットとレオには笑顔がない。責任の重大さが分かっているためか、それとも他に思惑があるためか、春斗には想像がつかない。


ただ、話の内容によっては、シャーロットは見知らぬ相手に嫁入りする事になるかもしれないし、レオにしてみても、隣国と戦争になってしまうかも知れない責任がある。心から、喜ぶことは出来ないのであろう。


その日、王子と王女が乗る馬車が2台用意されている。それぞれに一人ずつが乗り込み、随伴者として王女の馬車には女性が、王子の馬車には男性の貴族が乗り込んでいた。この二人は、王の信頼を得ているようだ。レオが行う、交渉の補佐役でもある。


春斗はエルに跨り、そのシャーロットの馬車の横で伴走する事にした。ジャンも馬に似たリラに乗り、レオの馬車の横へ陣取る。あの災いの時に活躍した隊長が今回も陣頭で指揮を執り、隊列の先頭を行く。


その後ろには50名の兵士が、馬車と馬車の間には20人、そして馬車の後方に30人の兵士が続いた。

勿論、馬車へ乗り込む前にシールド装置は取り付けた。これで、何が有ろうが隊列は無事に目的地まで着くはずだ。


出発してから10日が経った。野営は兵士の役目だ。特に王子と王女のテントは豪華にできていた。そしてその周りを寝ずの番で兵士が護衛する。特別に春斗のテントは、ジャンと隊長の3人で使う事になっていた。兵士の中には、テントなしで地面へ寝転んでいる者も居る。


今までのところ、危険は無かった。

ところが20日目の夕方近く、そろそろ野営の準備に取り掛かろうかという時だった。隊列を停めて荷駄から備品を下ろし始めていた時だ。王子と王女はまだ、馬車の中に居る。突然に、天空から弓矢の雨が降って来た。


その場所は、何本かの木々がいい具合に離れて立っていた場所だ。平原の中に有り、前方100メートル辺りには鬱蒼とした森が広がっていた。近くに綺麗な小川が流れていて、飲み水の補給にも都合が良い場所だった。


兵士達の位置が、王女の馬車からそれ程離れていなかったことが幸いした。雨あられのように何百本とも見える矢が音を立てて飛来したが、馬車は勿論兵士達にも損傷は出なかった。シールドに護られていたからだ。


見るとその無数の矢は、前方の森の中から発射されている。だが、その射手の姿は見えない。驚く兵士たちに、春斗は檄を飛ばした。


続きは明日。

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