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昨日の続き

前日からの続き。



 翌朝、薄い光の中で春斗は目覚めた。心地よい疲労が体を包み込んでいる。左横を見ると美玖が、春斗の左胸の上に顔を乗せて、まだすやすやと眠っている。美玖の左腕は春斗の胸の上にあった。時計を見ると、午前6時だ。9時にホテルを出れば間に合う。


春斗はそっと美玖の腕を取り、顔を体から降ろすと仰向けに寝かせた。そして、その唇にそっと口を付けて、ベッドから降りて行った。少し早かったが、シャワーを浴びるつもりでいた。裸になりシャワーを使い始めていたら、風呂場の外から物音が聞こえて来る。続いて美玖の声がした。

「もう起きたの?少し早くない?私もシャワー使う。」

「起こしちゃったようだね。ゴメン。もう少しゆっくり寝ていればいいのに。」

「ううん、いいの。今日は飛行機よね。少し怖い気もするけど。」

「はは、大丈夫だよ。まあ、飛行時間は10時間以上あるんだから、機内でも寝られるから、少しくらい早く起きてもいいかもね。もう出るよ。支度して。」


春斗は風呂場から、外に居る美玖に声を掛けた。春斗と入れ替わりに、美玖がシャワーを使い始める。風呂場からシャワーの音がし始めると、春斗はそっと風呂場のドアーを開けて、中を覗き込んだ。白い背中から豊かな尻へと、湯気を立てながら雫が滴り落ちている。

「ば、ばかっ。黙って覗くなんて変態よ。」

美玖が軽く抗議をすると、春斗は笑ってドアーを閉める。


朝食を食堂で摂ってから部屋へ戻ると、身支度を整えて乱れたベッドを直し、忘れ物が無いか確認してから二人はホテルをチェックアウトした。今日の美玖の服は、同じ白の上下で長袖の綿シャツは少し広めに胸元が開いていて、細めのパンツを履いている。その上に淡い萌黄色のロングカーディガンを羽織り、頭にはそのカーディガンと同色で、つばの狭いハットを被っている。そして肩には少し大きめのハンドバッグが掛かっていた。春斗はジーパンにグレーの長袖Tシャツで、デニムの長袖ジャケットを羽織ったスタイルだ。


チェックアウトを済ませて玄関へ行くと、其処にはレンタカーが置かれて待っていた。ドアマンが其処へ二人を誘い荷物を後部座席へ運ぶと、春斗は運転席へ美玖は助手席へと乗って行く。手を振るドアマンに見送られてホテルを出発すると、役所までは15分で着いてしまった。用意しておいた婚姻届けを、二人で窓口へ提出する。窓口は混雑していない。役所の職員はそれを確認すると、おめでとうございます、と笑顔で挨拶をしてくれた。二人は笑顔でそれに応えている。美玖は役所の外へ出ると

「これで春斗は私の旦那さまねっ。」

と言って、笑顔で春斗の左腕に両手を絡ませてきた。


空港へ着くと、レンタカーは乗り捨てた。カウンターで手続きをすると、後は出発を待つばかりだ。搭乗口のそばの椅子に座ると、後は何もする事は無い。

「ねえねえ、春斗、私達って新婚に見えるかしら?」

美玖が小声で問いかけた。

「どうだろうね。バカップルに見えるかもよ。」

「そんな事は無いわよ。私のこのファションを見てよ。可愛い大人の雰囲気が出てるでしょ。春斗は少し古臭いけど。」

「古くて悪かったね、どうせ僕は美玖より5歳も年上だよ。この格好が一番楽なんだよ。いいだろう。」

不貞腐れた。そんなたわいのない会話を繰り返している内に、搭乗時間になった。


すでにスーツケースは二つとも預けてある。後はパスポートを確認してもらって登場するだけだ。国内では、この手続きもそれ程緊張しない。でも国外で飛行場から出る時は、言葉が覚束ないためか少し緊張する。それもいい思い出になるのだけれど。そうしてサテライトから機内へと進むと、入り口付近で笑顔のCAからエコノミークラスへ案内される。新婚旅行位はビジネスクラスを利用したかったが、やはり予算的に無理だった。運よく、進行方向左側の後方から6列目の窓際2列が指定席だった。窓の下には翼が無い。これなら眼下も楽しめるかもしれない。春斗は美玖を窓側へ座らせ、手持ちのバッグを頭上の収容場所に乗せると、通路側の席へ座った。


通路を挟んで中央に3列、そして反対側の窓際に2列、定員は195人だったが離陸間近なっても、埋まった席は3分の2程度だった。シートベルト着用のランプが点いている。二人はシートベルトを締め、座席は倒さずに出発を待っている。CAが緊急時のライフジャケットの着け方や、非常口などの説明を行い、機長の挨拶が有り、飛行機はゆっくりと後方へ動き出した。


天気は良い。快適な飛行になるだろう。飛行機は滑走路へと導かれ、エンジン音が大きくなって来た。いよいよ出発だ。窓の外の景色が後方へと動き出すと、ひと際エンジン音が大きくなった。スピードがどんどん速くなり、一瞬、体が宙に浮いた感じがした。


「今、離陸したね。」

「そうだね、この離陸の時と着陸の時が、一番危ないんだよね。上へあがってしまえば、もう心配ない。」

「そんなこと言わないでよ。怖いんだから。」

眼下の景色が、直ぐに小さくなる。空港が見えていたのが、今はもう海だけになっている。その海もはるか下になり、海と飛行機の間には薄い雲が見えて来た。


「もう、安心だ。これから10時間以上かかるんだよね。もう食事の支度を始めているようだから、食べ終わったら少し眠るといい。疲れただろうし、時差も有るからね。」

少し前に離陸したばかりなのに、もう前の席からCAが機内食を配り始めている。時計を見ると、11時35分を少し過ぎていた。春斗は肉料理を美玖は魚料理を注文し、飲み物はコーヒーと紅茶を頼んだ。

食事が終わると、またCAが器を下げに来た。そのCAに春斗が声を掛けた。


「すみません、後で結構ですが毛布を一枚貸して頂けますか?」

「はい、承知しました。少しお待ちください。」

しばらくすると、ベージュ色の毛布を持って来てくれた。それを美玖の体の上へと掛けてやる。一部が春斗の肘置きの辺りまで覆ってしまう。それで春斗は、肘置きを上へ向けて美玖との境をオープンにした。


美玖は座席を少し倒すと、休む体勢になった。春斗は、その美玖の右手を左手で握る。握られた手の上には毛布が被せられている。美玖は安心したのか、目を瞑った。春斗も眠気を感じて来たので、座席を倒し、頭を後ろへ倒した。美玖の頭が春斗の肩の上へ傾いている。

機内のあちらこちらでも、そうして眠り始めている人たちが居た。機内は、段々と静かになって来た。


続きは明日。

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