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昨日の続き

「エレベーターです。最上階へ向います。」

今までは、階段を上ったり降りたりしていた。電気エネルギーが溜まった事で、エレベーターが使えるようになったのかも知れない。その箱の中へ入り、次にドアーが開いた時には、其処も丸い部屋の入り口だった。先ほどの部屋と違い、その部屋の大きさはかなり大きい。5倍はあるかも知れない。しかも、周囲は腰の上辺りから全てガラス張りになっていて、天井まで3メートルはあるだろう。


外は割れた岩石の山だ。空は勿論、岩の他は何も見えない。それらの岩と、ガラスは密着している。それでもガラスは割れていない。前に、コントロールパネルを操作したあの広い部屋と似ていたが、広いといってもあの部屋よりは数倍狭い。コントロールパネルと思しき装置も一つしかない。その装置の前に、椅子が3つ並んでいる。前方のスクリーンも無かった。


「ここは、サブのコントロールルームです。メインは先日案内させて頂いた場所ですが、あの場所では広すぎます。ここへ、機能を集中させています。どうぞ、中央の席へ座ってください。」

相変わらず、抑揚のない声が指示を出す。春斗が椅子へ座ると

「それではお願いします。最後のお願いです。」

声が言った。春斗は、〈4つ目の願い〉というのを心の中で反芻してみた。

〈発進しろ。〉

で良かったんだよな。意を決した。本当にこの宇宙船は動くのだろうか。


「太陽に向かって、発進しろ。」

春斗は、声に出して最初の指令を出した。すると、部屋全体がガタガタと震え出した。

座席が、少しずつ浮いて行くのが分かる。外の岩が下へと落ちていく。いや船が上昇を始めたのだ。ガタガタと揺れたのは最初だけで、後は何の振動も感じない。ただ上昇していくのを感じるだけだ。直ぐにガラスの外に変化が現れた。空が見えた。森が見えた。そして、海の青さが目に入って来た。


岩の塊が、全部落ちてしまうと、ガラス窓の向こう側に広い斜面が現れた。それは宇宙船の本体で、幅も長さも100メートル以上は有りそうだった。先端は丸くなっていて、窓のすぐ下辺りから前方へと下り坂になっている。それに左右へも下がっていっていた。表面に殆ど傷らしきものは無い。模様も見られないし、何かの装置のような物も見つけられなかった。ただのすべすべした、金属光を放っているだけだ。


窓の外に見えた海の水平線が、丸みを帯びて来た。その時だった。下方から大きな爆発音が聞こえて来た。春斗は思わず

「何が起こったんだ。」

と叫んでしまった。すると、全面のガラスがディスプレイになり、宇宙船の下方を映し出した。春斗の叫び声を、指示だと解釈したようだ。


宇宙船が沈んでいたと思われる場所から、噴煙と火山弾が噴き出していた。火口からはマグマも流れ出している。宇宙船という重石が取れたことで、火山活動が活発化したのだろうか。その島は、やはり無人島のようだった。あの火山の大きさから推測しても、小さな島だ。その中心辺りで、二度目の大爆発が起きた。


あの島は、海底火山の頂上だったようだ。頂上から噴煙を上げて、その頂上付近を吹き飛ばす勢いだ。ディスプレイでは、倍率を変えながら、一定の大きさでそれを映し出している。本来は、どんどんと遠ざかっているに違いない。三度目の爆発が起きた。島全体が吹き飛ばされ、その後には海の中に無数の泡が湧きたっているだけだった。島はあっという間に消えてしまった。


これでは墜落した飛行機の捜索は、出来なくなってしまうかもしれない。美玖が生存している確率は、限りなくゼロになってしまった。その様子を目の当たりにして、春斗の胸の内に絶望の悲しみと、自分に対する怒りと後悔、美玖への哀憐、そんな様々な感情が入り乱れて、涙がとめどもなく流れて来る。大声で美玖の名前を呼び、号泣している自分自身にもしばらくは気付かなかった。


 そんな感情を乗せている事に気付いているのか居ないのか、その火山の大爆発を後にして、宇宙船は太陽へと進んでいるようだ。進んでいるようだと思ったのは、本当に宇宙を飛んでいるのかさえも、春斗には分かりかねたからだ。

ただ我に返った時に、船は漆黒の闇の中を、ひたすら飛んでいるだろう事は分かった。ガラス窓越しに、遠くに見える星々が、その位置を少しずつ変えているからだ。


あれからディスプレイは、自然と解除された。もし春斗が、またディスプレイで拡大して見たい、と言ったらきっとガラス窓はディスプレイに変わるのだろう。春斗は、何もできない、何もする事が無い自分に苛立つと同時に、また悲しみに襲われた。

「どのくらいの時間で、太陽の近くまで行けるのですか?」

気を取り直し、そう声を出して聞いてみた。するとその答えも、直ぐに聞こえて来た。


「水星まで、およそ2時間です。」

〈えっ、そんなに速いんだ。〉

声には出さない。

「私にする事はないのですか?」

気持ちを鎮めて言った。

「目的地までは、何もする事が有りません。ただ、到着してから少し時間を頂けますか?色々と取り決めたい事が有ります。」

〈取り決めたい事って、何だろう。何かルールを決めるって事かな。〉


「分かった。着いたら教えて欲しい。それまでの間に、この船の概要を知りたい。まずは、大きさとか、形とか、各部署の配置とか、そんな基本的な事で構わないけど。」

感情に振り回されないためには、何かしていたほうが良い。

「分かりました。前面のディスプレイに表示します。」

船は淡々と答える。

するとガラス窓は又、ディスプレイに変わり、其処に宇宙船の平面図と立面図が現れた。


平面で見ると、その形は大きな楕円形になっていた。そして、先頭が少し尖っている。後方は途中で円形が切れて、最後部は直線だった。例えるなら、矢尻に似ている。サブのコントロール室は、その中心より少し前方に位置している。立面図で見ると、そのコントロール室(今居る場所)は一番高い所に有って、そこから徐々に前方と後方へ屋根が下がっていて、全体では変則的なおわん型になっている。


側面は図で見る限り5層になっていて、1番上はコントロール室、2番目が春斗の居室と、その他の居室。3層目が乗組員の居室や作業室、それに娯楽室や食堂などがある。3層目までの側面には、多くの窓が横に並んで描かれている。4層目の前方に、メインのコントロール室と、その後方にはコンピュータ室、後は大半が格納庫や倉庫になっていた。1番下層は機械室で、その後部がエンジン室になっている。


他にも細かく図示されていたが、大まかにそう覚えた。最下層のエンジン室から外部に向かって3つの噴射口が飛び出していて、その部分が平面図で言うと、後部の直線部分の下側だった。したがって、下層へ行くほどその床面積は広く、一番上はサブコントロール室と、その後部に何かの施設があるだけのようだ。時間が有ったら、船の中を探索してみようと思った。全長は300メートル、幅は200メートル、高さは70メートル、それが春斗の乗っている宇宙船だった。宇宙船の概要が分かると、春斗は、部屋へ行く、と言い残してエレベーターに乗った。


「部屋へ。」

そう告げただけで、扉が開くとそこはもう春斗の部屋だった。

「コーヒーが飲みたいな。」

何気なしにそう呟くと、机の上にその下からコーヒーの入ったカップがせり上がって来た。

〈そうか、こうして声に出せば、欲しいものが出て来るのか。〉

春斗は、ブラックでゆっくりとコーヒーを飲んだ。

「おいしい!」

そう言ってみたが、それに答えてくれる声は無い。一人はつまらない。


こんなに大きな宇宙船が有っても、宝の持ち腐れだ。何の役に立つんだ。その時に、はっと気づいた。声に出せば、欲しいものが出て来るんだよな、と。

「七海美玖が欲しい。」

そう言ってみた。でも美玖はおろか、何も出てこない。

〈なんだ、何でも出て来るんじゃなかったのか。〉


半分はあり得ないと思っていても、少しは期待した自分が居た。その時にやや間が有ってから、あの声が聞こえて来た。

「まだ、ご命令に応じられません。時間をください。」

〈えっ、時間が欲しい、という事は、時間が有れば美玖が現れるという事か。〉

どういう事か分からなかったが、期待をして待っていよう、そう思った。


続きは明日。


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