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昨日の続き

途方もない話に、春斗は戸惑ってしまった。すると、この施設は宇宙船なのか、それも800年も前に地球に来た、他の惑星の乗り物なのか。それと、ただ命令するだけでいい、と言われても、命令すれば、自分もこの船と一緒に旅をする事になってしまうのではないか。それでそれらの事を質問してみた。


「その通りです。私は、宇宙船です。それに私を動かすには、命令が必要です。あなたが、この船の主人になって、私と共に旅をして欲しいのです。あなたには選択権が有ります。だめでしたら、このまま下船してください。今までのお礼に、ある程度の水と食料は分ける事が出来ると思います。ただ、私は自由に動けませんので、あなたを何処かへ運ぶ事は出来ません。私も、次に乗船する人を待たなくてはなりません。」


春斗は、それを聞いてもまだ全部を信じられずにいる。

「決心する前に、一つ質問をさせてください。」

「構いません。どうぞ。」

「私は飛行機事故で、この島へ墜落して運良く助かりました。他に助かった人が居るのかどうか、調べる事は出来るのでしょうか。」

太陽の近くまで行く事が出来るというテクノロジーだ。生き残った人たちを、見つけ出す事も出来るのではないかと期待した。

「分かりました。調べてみます。」

案の定、声はそう言うと、しばらくの間沈黙した。


「残念ですが、この島の中と、その周辺には生存者はいません。またまだ近くに接近している生物も、魚と鳥以外は見当たりません。」

美玖は、死んでしまったのか。覚悟はしていたが、そう聞かされると急に涙が溢れて来た。しばらくは、声を出して泣いていたが、春斗は決心した。美玖が居ないのであれば、生きていても死んだと同じだ。

「分かりました。お供します。」


「有難うございます。それではあと23時間43分の間、この部屋で寛いでください。時間が来れば、あのテーブルに食事が出ます。片付けなくても、自動で片付けも行います。それに出発時間の10分前には、お知らせしますからそれまでは自由にしていてください。ただ、まだ室外へは出歩かないようにお願いします。この船は、あなたが思っている以上に大きいと思います。その説明も、後でします。私の主人としての登録が終わるまで、案内も一部しかできません。23時間41分の間は、我慢をお願いします。」


その言葉を最後に、声は消えた。

春斗は、美玖の死をまだ受け入れられないでいた。眠りから覚めたばかりなのに、まだ疲れも覚えている。風呂に入りたい。そう思って、誰も居ない空間へ問いかけた。

「風呂に入りたいけど、出来ますか?」

すると、壁の一部がスーツと開いた。中を覗くと洗面室とトイレ、それにバスタブとシャワーが完備されている。まるで、ホテルの部屋のユティリティースペースだ。


春斗はバスタブに湯をたっぷりと張ると、裸になってその中へと身を委ねた。

風呂から上がり、用意されていた清潔なタオルで体を拭くと、全裸のままベッドへ横たわった。疲れが全身を包み、直ぐにまた寝入ってしまった。


次に目覚めた時には、また食事の用意がされていた。今度は洋食だった。それにしてもこんな食事や、タオルや湯など、その原資はどこで調達しているのだろう。考えても仕方がない事だったが、考えざるを得なかった。ベッドの脇には、新しい服も用意されている。その服は、普段着ている服と何ら変わりはない。この船の修理の際に、地球上の情報を色々集めた、と言っていたが、その情報の中にこれらも含まれているのだろうか。そんな、食事と睡眠を繰り返したために、疲れはすっかり取れてしまった。


時間ももう直ぐに、24時間は経つだろう。それと、もう一つ気付いた事が有った。それは、空気が綺麗になったという事だ。最初は埃臭かったような気がしたが、今では全く気にならない。電源が確保できたことで、空調も働いているのだろうか。それも、自分に合った空調になっている。


「時間が来ました。この部屋を出る前に、衣服を着替えて頂けますか?強制ではありませんが、クローゼットの中の服と着替えて頂けると有難いのですが。」

壁が開いて、その中には同じような服が並んでいる。シャツは淡い色が多かった。白やグレー、ブルーやグリーンも有ったが、全ての色が薄い。手に取ってみると、ボタンだけは濃い色で、そのシャツの色を濃くした色だ。白のシャツには、黒のボタンが付いていた。タートルネックになっていて、長袖だった。ズボンも何着かあったが、全部が黒で形も同じだった。靴下も靴も用意されている。春斗は白のシャツを選び、着替えをした。


着替えが終わると、それを確認したかのように部屋のドアーが開き、例の緑の誘導灯が壁に灯る。春斗は、その誘導灯に導かれて、初めての部屋へ入った。何の変哲もない狭い部屋だ。その部屋が他の部屋と違っていたのは、壁が円形をしていた事だ。直径は5メートルほどしかない。そしてその中央には、これも又直径が2メートルほどの円盤が、床から10センチあたりまでせり出している。その部屋へ入ると、声が聞こえて来た。


「中央の円盤の上へ載ってください。」

春斗がその上へと進む。

「少し足を開いてください、回転します。円盤上で動かないようにしてください。」


春斗は、足を開き踏ん張った。すると、部屋の明りが消えて、真っ暗になった。瞬間、春斗の頭上から体全体に、スポットライトが当たった。足元の円盤がゆっくりと回転を始める。春斗は、何が始まったか理解が出来なかったが、円盤の上で踏ん張っているしかなかった。体は30秒ほどを掛けて、1周した。すると、スポットライトは消えて、また部屋に明りが戻って来た。ハルトの全身を、センサーに掛けたようだ。


「これであなたの、主人としての登録が終わりました。これからはあなたがこの船の主人です。4つ目のお願いの後は、自由にこの船を使ってください。疑問に思える事は、沢山あると思いますし、これからも沢山出てくると思います。出来る限りサポートをします。それでは、最上階へ移動して、4つ目のお願いを実行してください。」

そう言い終わると、丸い壁の一部が開いた。でも、出口ではない。ただの四角い箱だった。


続きは明日。


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