過剰な干渉 -前編-
2話目がとんでもなく遅くなってしまいました。
他の作品に夢中になってたからですね。
申し訳ないです。
2話目から前編後編分かれるんかい!って思った人へ。
私も同じことを思いました。
赤い空の下を2人で言葉も交わさずに肩を並べて歩く。
なんというか、母親に彼女と歩いてるところを見られた時と同じ気まずさがある。
まぁ、俺彼女できたことないんだけど。
勢いで「締結!」とか言っちまったけど契約ってなんなんだよ。
契約って聞くとやけに事が重く感じるんだよな。
俺が”あの”逢坂と契約か。
…てか、なんで俺なんだよ!
もっといい人がいたろうに…
赤い空のせいでまるで現実味は無いが、ここまで意識がハッキリしていると夢の中じゃないと思ってしまう。
事件も事件だよな。
どのくらいの規模の事件かも分かんねぇし、どんな内容かも知らない。
「なぁ、逢坂。1つ聞きたいことがあるんだけど…」
逢坂は待ってました!と言わんばかりの表情で勢いよく俺の方に体を寄せる。
「なになに?ドリームマスターことわたくし、逢坂紗羅にお任せあれ!」
なんでこいつこんなにノリノリなんだよ。
今から事件が起きるって言うのに。
「今俺達はどこに向かってるんだ?」
逢坂はナイス着眼点!と勢いよくグッドポーズをとる。
「今は夢の案内人のところに向かってるんだよ。」
「案内人?そんな淡々と言われても俺なんもわかんねぇよ…」
「まず夢には案内人がいるの。まぁ簡単に言うと事件の起きる場所とどんな内容かのヒントを出してくれる人達なんだよ。」
なるほど…案内人がいないと事件解決には一歩も進めないと。すげぇ重要な人物じゃん…
「その案内人はどんな人なんだ?」
「あー、その事なんだけど…あ、着いた。」
気がつくと俺達はこの街では見たことないようなポップなデザインの建物に辿り着いた。
~『ゆりかご薬局』~
「なんだここ…現実にはこんな場所ないよな?」
「ないよ!夢限定…だね。」
なんかいい感じの言い方しやがって…
「ここに案内人がいるのか?」
「そうだよ。じゃあ入ろっか、しんく!」
「え?もう?なんの説明もなしに!?」
「大丈夫大丈夫。いこいこ!」
「お、おい!」
逢坂は強引に俺の袖を引っ張り建物の中に連れ込んだ。
建物内はまるでキッズルームのようにカラフルで様々な薬剤の名前と使用法が壁にペイントされている。
・レスタミン
・レンドルミン
・エチゾラム …
全てに共通して書いてあることは
「※ 過剰摂取をしないこと!」
ODってやつか…
そんなことを考えていると、
『ようこそ、いらっしゃいました。』
と、双子…?の白衣を纏った女性店員が息ぴったりにセリフを読み上げる。
「逢坂さん、ありがとうございます。本日担当を務めさせていただく、レスタと」
「レミです。」
あれ、俺は触れられないの?
居ないことになってる?
確かに陰キャだけど!
「はい。今日起きる事件についての案内をお願いします。」
「そんなド直球に聞くんだ…」
「では私たちから1つ…」
『道が尽きる場所に、彼女の秘密は眠る。右に曲がれば、忘れ去られた痛みが彼を待ってる。』
『…です♡』
いやいやいやいやいやいや!なんもわかんねーよ!
『です♡』じゃねーよ!なにかっこいいセリフ決めた後に可愛さを出してきてんだよ!
「なるほど。ありがとうございます!さあしんく帰るよ!」
「逢坂あのヒントだけでわかったのか!?!?」
『では、またお待ちしております。』
「はーい。ありがとうございました!」
逢坂はさっきと同じように袖を引っ張り俺を外へ連れ出した。
「ちょっと待たんかい!…え??」
まだ聞きたいことがあり、戻ろうとすると、さっきまでの出来事が夢かと思うほど薬局の影は跡形もなく消えていた。
夢かと思うほど、じゃないか。
夢だもんな今。
「しんく〜、さっきのヒントで分かった?」
「分かるわけないだろ。あんなのヒントでもなんでもないじゃないか!」
「だよね〜、私も全くわかんない…」
「は?お前分かったから急いで外に出たんじゃないのかよ!?」
「いや、普通に薬局の匂いが苦手で早く出たかっただけだよ?」
「ヒントがわかんねーと意味ねぇじゃねぇか!建物も消えるってこと初めて知ったし…」
「あはは!確かに!」
こいつマジでなんも考えずに生きてるな…
「こっからどうするんだよ…」
「ででーん!こんな時のために薬局での音声を録音してました〜!」
逢坂はレコーダーらしきものを空に向かって突き出し今日1番のキメ顔をする。
「お前レコーダーあるんなら先に言えよな!」
「いや〜ごめんごめん。サプライズだよ、サプラーイズ!!!」
「いいから再生しようぜ。」
「もー、しんく冷たい!!!」
俺がレコーダーの再生ボタンを押し、逢坂は機械側に耳を向ける。
~『道が尽きる場所に、彼女の秘密は眠る。右に曲がれば、忘れ去られた痛みが彼を待ってる。』~
道が尽きる場所、右に曲がる…?
俺はポケットに手を突っ込んで、ゆっくりと考え込んだ。
「…そういう事か!」
「え、しんくわかったの!?」
「突き当たりだ。」
逢坂が首を傾げる。
「なんでそう思うの?」
「だって、突き当たりって言ったら道が尽きるところだろ?右に曲がるってのは言葉通りだ。この道の突き当たりを右に曲がるとたしか、一軒家があるはずだ。」
俺は「決まった」と確信し、ドヤ顔で逢坂を見る。
「凄いけど、しんくのその顔なんかムカつく。」
逢坂はムスッとし、俺が言った通りの道を進む。
なんか俺が決めた時だけ冷たくね?
*
「ここが例の一軒家ね。」
そこには古民家的なレトロな雰囲気の家が佇んでいた。
本当にここで合ってるんだろうな?
「これ、勝手に入っていいものなのか?」
「へーきへーき。ここで事件が起こることは間違いないんだから!」
「勝手に入っていい理由にはなってないだろ…」
「細かいことはいいの。入ろ入ろ!」
「お邪魔しまーす…」
ドアを開けた先の玄関には蜘蛛の巣が入り組んでおり、部屋の中は薄暗く、どこか不気味な雰囲気を醸し出している。
「何、このニオイ…」
ニオイをたどって、玄関から右手の奥の方に進むと、洗面所がある。
そこには恐らく洗濯してから何日も干してないであろう衣類が散乱している。
例えると、牛乳を拭いた雑巾をそのまま放置してあるような、嫌な生乾き臭がする。
「こりゃあ、ひでぇな…」
「ここには人は居ないか…」
「人が居ないと解決も何も無いからな…」
「そんな事ないよ!ここにもなにか事件に関連する”カギ”があるかもしれないでしょ?探してみよー!」
「この洗濯物の山の中から!?」
正直言うと触りたくない。
顔も性格も性別も知らない相手の洗濯物を漁るなんて気が気でない。
「そんな露骨に嫌な表情をされてもね…」
「え?そんな顔に出てたか?」
「出てたっていうか顔に”やりたくないです!”って書いてあったよ。」
「んなわけないだろ。」
「やらないと事件解決どころじゃないし、やるんだよ。」
「まあ、やるしかないもんな。」
二人で山積みになった生乾きの洗濯物を漁る。
「ん?なんだこれ。」
見慣れない物を触れている。
丸くて、平たく、同じようなものがもう1つある。
「しんく、それ…」
逢坂はどこか緊張した顔で俺が手に持っている丸い物体を指さしている。
「逢坂、これが何か分かるのか?」
「うん、分かるけど…」
「コレなんなんだよ!?教えてくれよ!」
「なんて言えばいいかなぁ…」
なんでそんな赤面してんだよ。
何か危ない物なのか?これは。
「なぁ、逢坂。なんで普通に教えてくれないんだよ。」
「もう、分かった。教えればいいんでしょ!」
なんでそんなムキになるんだよ。
「それ、ブラパットだよ。」
へ…?ブラパット?
聞いた事ない言葉の羅列を頭の中でグルグルさせる。
「あー、ブラパットね。うんうん。久しぶりに見たから分かんなかったわー…」
赤面した逢坂にもう一度聞くのはなんか申し訳ないので、なんとか誤魔化しに回る。
後で調べとこ。
「忘れるとかないでしょ…」
逢坂の俺を睨むような目つきがチクチクして痛い…
*
しばらく漁って見たがこれといった”カギ”は見つからなかった。
「これが最後のアテだな。」
さっきまで山積みになっていた洗濯物が今では綺麗に纏められてある。
洗濯機の中から最後の洗濯物であるデニムを取りだし、ポケットの中を確認する。
指にチクチクしたものが当たるのが分かる。
「これか…」
取り出した物は”レンドルミン”とかいてある、錠剤だった。
「錠剤…風邪だったのかな?」
逢坂は指を顎に当て、考えるポーズを取る。
「風邪が直接事件に関連している可能性は少ないね。」
「なんでそう言い切れるんだよ。」
「だって、案内人が居た場所思い出してみてよ。」
「そうか。風邪なら普通、案内人が居る場所は病院なはずだよな。」
「鋭いね〜、やるじゃんしんく!」
逢坂はお決まりのようにグッドポーズをとる。
「じゃあ、錠剤が直接事件に関与してるのか。」
「その可能性の方が高いよね。錠剤で事件といえば…」
「貴方達、誰?」
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見て頂きありがとうございます。
2話目は終わりどころが難しかったです。
このまま続けるつもりだったんですけど、やけに長くなりそうで後編に持ち越ししました。
小説書くの楽しいなぁ…
また次回で!