レンチンオムライス
処女作となります。
主人公の名前は谷宮 眞紅
女の子の名前は逢坂 紗羅と読みます。
半年前ほどに授業中に思いついたコトをひたすらメモしていたら物語が完成していました。
やっと書く気になったので書いてみましたが色々大変ですね。
ただ、とても楽しかったです。
温かい目で見て頂いたら幸いです。
ここ最近なんとも不思議な体験をする。
しかしこれが、現実なのかが分からない。
夢か現実か分からないのもまた、不思議だ。
あたかも最近の自分に何が起こっているのかを誰かに説明するように起床してすぐの自分に問いつめる。
何があったかは思い出せない。
現在時刻は15時。
9時にタイマーを設定したスマホが鳴っていないことに気づいた。
またやってしまった。
おそらく、夜中にYouTubeを見ているうちに寝落ちしてしまったのだろう。
もうどうでもいいや!
友人との約束を守れなかったことを反省することも無く、慣れた手つきでリモコンのボタンを押し昼時のニュースを見る。
「4月22日のニュースをお伝えします。本日の午前8時、○○町にて23歳の女性が自宅で倒れているのが発見されました。倒れた原因は不明のようです。」
こういうニュースを見るといつも思うことがある。
原因が知りたい。俺はそういう人間だ。
何事も証明だとか、こういう根拠に基づいて〜、的なことがないと納得できないからだ。
しかしなぜだか猛烈な違和感がある。
あれ?これ、前にも似たようなニュースあったよな?
気になったらすぐ調べるという特性を持っている俺は充電を1%にしたスマホで似たようなニュースについて調べた。
ただ、俺が知っている情報とこのニュースのような前例がリンクした事件はなかった。気のせいかな?と思ったりもしたが、鮮明に覚えている。
最近不思議な体験をするのは、”コレ”である。
ある事象に対しての記憶があるのに、それが現実かどうかが曖昧という現象だ。
”コレ”についても気になるので調べるがやはり何もヒットしない。
モヤモヤする頭を抱えながら友人に謝罪LINEを送る。
「タイマーセットしてたんだけど、充電切れていて鳴らなかった。申し訳ない。」
送信、と。
こんなことは全く思っていないのだが、小中で説教を喰らいまくったせいで培った謝罪構文を繰り広げることで難なくやり過ごしている。
グ〜〜と長めに、お腹がエネルギーを欲している信号を送ってくる。
腹減ったな…。
リビングには年中暇なはずの母親がいない。
珍しいこともあるものだと思いつつ置いてあるトレーの上のご飯と添えられたメッセージを読む。
「父さんと結婚記念日のデート行ってくるね♡夕飯はPayPayに1000円送ってるからそれでなんか食べてね^_^」
陽気なおばさんだ。
40後半にもなって恥ずかしくないのかと鳥肌が立つ。今ならニワトリになって飛べそうだ。
まあ、ニワトリは飛べないんだけどね。
レンチンオムライスに描いてあるハートをぐじゃぐじゃにしながら掻き込む。レンチンだがこれはこれでありだなとか思っていると、先程送ったLINEに通知が来ていることに気づいた。
友人だ。
「お前何してんだよ〜!今日いいメンツ集まってたし、楽しくなると思ってたのによ、まあいいよ。また今度遊ぼーな!」
自分が陰キャ寄りなのに母親と言い友人と言い、陽気なオーラを纏った人間が周りに居すぎていつも圧倒される。
「マジで申し訳ない!またなんかある時誘って!」
*
食器洗いは嫌いだ。
何かと手に傷を負いやすい俺はいつも洗剤が染みるからだ。
このヒリヒリする感覚はいつまで経っても慣れない。慣れるレベルまで毎回傷を負う経験するのは俺ぐらいか。
部屋に戻り、付けっぱなしのテレビをぼんやり眺めているとレンチンオムライスにそういう薬が忍ばせてあったのかと思うほどの強烈な眠気に襲われた。
ああ、また時間を浪費してしまうという葛藤も無惨に俺は夢の中に堕ちていく感覚が分かった。
*
なぜか真っ赤な世界。
現実では無いのが自覚できる。明晰夢というやつか。初めての経験なのでどこかワクワクした気持ちを抑えつつ、どのような世界線の夢なのかを把握する手がかりを探った、がすぐに分かった。
「ここ、俺の家だ。」
全く同じ部屋の造り、ベットに置いてあるぬいぐるみ、自室にあるテレビ。
なるほど、現実と似た構成の世界線なのか、また、現実と同じ世界線だが全く人生の内容が違うのか。
これは面白い。冒険のしがいがありそうだ。現実と同じように枕元には自分のスマホがある。
4月22日午前3時。
現実と同じ日なのか。
そう思って、部屋を出ると言えには誰もいない。
まさか、自分一人しかいないのか!?この世界は!
突然の孤独感に苛まれながらも家を出てみる。
家を出てすぐの道路。車もないし、もちろん人も居ない。当てがあるわけないのでひとまずほっつき歩いてみる。
「人影だ!」
10m先くらいに、明らかに人の形をしたものがいる。
なんせ空が真っ赤なものだから、どんな顔をしているのかなどの情報が全く掴めない。少し怖い気もするがこの世界には他の人も存在するということが分かった安心感の方が強かった。
「え!?人だ!」
向こうも俺に気がついたようだ。
タッタ、と軽い足取りで走ってくる。
女の子だ。
ロングヘアでストレート。身長は僕よりも10cmほど低く、服は俺が通ってる高校と同じ制服だ。特に目は吸い込まれそうなほど大きくて綺麗だ。
蒼穹のように澄んでいて、この世界の真っ赤な空と対照的でやたら美しく輝く。
「ねー、ちょっと、聞いてるの?!」
美貌に見蕩れて彼女の話は全くの上の空だった。
「ああ、ごめん。で、なんだって?」
「もう、なんなのそれ?話聞いてなかっただけじゃん!」
「いやぁ、ちょっと色々状況が掴めなくて。」
「まぁ、普通はそうだよね〜…」
気まずい沈黙が5秒ほど続く。俺たち以外誰もいないから、余計に長く感じる。この空気、変えねば!
「ところでさ!君は何か知ってるのかな?俺、こんなの初めてで何も分からなくて…」
彼女は待ってました!と言わんばかりに人差し指をピンと突き出す。指長ぁ。
「よくぞ聞いてくれました!ここはまさしく夢の世界!それもただの夢の世界じゃなくて現実とリンクしてるの!」
「ほぉ…?」
「あれ?あんまり驚かないタイプだ!じゃあもっと詳しく説明してあげるね。」
「頼みます…」
「単刀直入に言うと明日事件が起こるの。」
「ん?それとこれのなんの関係が?」
「まあ簡単に言うとその事件が解決できるまで夢から出られないよー!って話だよ。簡単でしょ?」
「いやいやいや。そんなこと急に言われてもできっこないよ!探偵じゃあるまいし。」
「大丈夫だよ。私も何度か夢で事件を解決して気づいたんだけどね、事件の当事者は悩み事を抱えているの。」
「悩み事?」
「そう。悩み事!人の内面的な事情だよね。それを見つけてあげたら万事解決だよ。」
「何回夢を重ねたら、そんなところまで辿り着けるんだよ…」
ん?ちょっと待てよ。
「じゃあ夢から覚めたら、その事件はどうなってるんだ?」
「現実では“まだ”起きてない。だから、未遂。誰にも知られてない。そういう扱いになるの。」
「…つまり、誰にも知られずに終わるってことか?」
「ううん、そうじゃない。未遂で終わるってことは、何か自分のなかで心境の変化があったから、じゃない?」
彼女は得意げに笑って話を続ける。
「つまり、誰かに心を救われたことは覚えているの。ただ、私たちが助けたってことまで覚えている人はそうそう居ないでしょうね。」
「俺たちは夢で誰かの救いになる、ってことか。」
「未来が変われば、現実で事件は“起きなかったこと”になる。誰にも知られず、誰も傷つかずに済む。…これって、最高じゃない?」
「でも、俺たちが見てる夢が本当に“未来”だとしたら……どうして、そんなことができるんだ?」
「さあね。けど、“助けたい”って気持ちが、きっとこの力を引き寄せたんじゃない?」
「本当か…?」
勢いに任せたような彼女の言動はどれも疑わしいものばかりだった。ただ、身振りをする度にする香りはどうも女の子特有の匂いがする。いい匂いだな…
「ところでさ私と契約を結ばない?」
急な交渉に驚いたが、こんな美女との契約。つまり関係を結ぶってことじゃん!?どんな内容であっても結びますとも!!!
「条件を教えてくれないか?」
彼女は一瞬ニヤっとしたがすぐに濁りのない瞳でこちらを見つめた。
「君がこれから毎日夢を見る度に私と事件を解決してくれない?」
…え?んーーー???そもそもの話、俺が毎度夢を見るとは限らないし。正直、滅茶苦茶な条件だ。
申し訳ないが、前言撤回とさせて貰おう。
「俺が毎回夢を見るとは限らないだろ?だから…」
拒絶するための言葉を並べていると遮るように言った。
「いや、毎回見るんだよ。」
なんだこの小娘は。まじで訳が分からない。
夢なんか毎回見れるもんなら見たいわ!
「どうやるんだよ。見ようと思って見れるものじゃないだろ!」
少々イラついてしまったからか、思ったよりも強く言葉を吐いてしまった。
やらかした〜…
「あのね、君が今日明晰夢を見ているのは私のせいなんだ。」
俺の慌てぶりを見て落ち着かせるためか優しい口調でそう言った。
「は?」
「いやぁ〜、夢の中にずっと独りだと寂しいじゃん?だから願ったんだ!」
今度はさっきの優しい口調が嘘みたいに明るく振舞ってみせた。
「ちょっと待て、何を言ってるんだ?願うって何をだよ!」
彼女は大きな目を瞑って僕の手を握った。柔らかくてすべすべな肌と暖かい感触で不意に彼女から目を逸らしてしまった。
「寝る前に神様、どうか、優しくて高身長なイケメンを私と同じ夢の中に誘ってください!って願ったの。そしたら君が居て…」
「フツメンで平均身長の俺をいじってるだろ!」
「ははは!ウケる!冗談だよ!」
どこからどこまでが冗談なんだよ。
「だからこれから毎日夢を見ると思う。」
「そして夢を見る度に一緒に事件を解決する、と?」
「そう!理解早ーい!」
毎日夢を見るなら退屈しないし、悪い条件でもない。
「よし分かった。契約締結といこう。」
「ないすー!最高じゃん!」
やけにテンション高いな。このテンション感なら1人でもやっていけるだろ。
「そういえば君の着てる服、岩成の制服だよね?岩成生?」
僕らの今のとこの唯一の共通点、岩成高校の制服を着ていることだ。
「そうだよ!2年1組のの逢坂紗羅!紗羅って呼んでねー!」
逢坂紗羅、か。
美人な故、水泳部で全国大会に行くレベルの運動神経の良さ、成績も優秀でまるでアニメのヒロインのように欠点のない、岩成高校での有名人。さらに言えば超陽キャだ。俺とは正反対の人間。
1発目から名前呼びを強要するなんてさすがの一軍女子だ。
「えーと、君は?」
「2年4組の谷宮眞紅。趣味はえーと…」
「趣味て、お見合いじゃん!」
プッと吹き出し爆笑された。
なんか顔が熱い…やべー、めっちゃ恥ずかしい。
「あっはは!」
いつまで笑ってんだよ
「笑いすぎだろ…」
「だって言われてから顔赤くするんだもん!こんなん笑っちゃうよ!」
「も、もういいだろ、さっさと事件解決しようぜ。」
「は〜、笑った笑った。じゃあこれからよろしくね!眞紅!」
「名前呼びしろとは言ってない…」
「私がしたいからしてんの!いい名前じゃん眞紅って!」
照れて頬に射し込んだ紅の色を隠すように歩き出した。
次回の内容は大体どんな進め方をするのか決まっております。
受験生ですので、更新が遅くなるかもしれませんができる時にできるだけ書こうと思います。
何か意見がありましたら感想・レビューの方にお願いします。
ではまた次回で!