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追放された転生王子、呪われた森を《浄化》スキルで聖域化する ~のんびり辺境開拓していたらいつの間にか国ができてました~  作者: 戸津 秋太
第三章

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第48話 新たな拠点探し

『追放先の呪われた森がいつの間にか聖域認定されていた。』から書籍版のタイトルへ変更いたしました

 ロバートが自分を探している――そんな情報をハクから聞きつけたゼスは、早速彼の下へと向かっていた。

 ユグシル村の財務担当であり、シルク商会との交易において大きな権限を有する彼は、交易所にいることが多い。

 そんなわけで真っ先に交易所へ足を運んだが――。


「ロバートさんならゼス様のご自宅へ向かわれました」

「入れ違いになっちゃったかぁ」

「会議室でお待ちください。今、呼んでまいります」

「いやいいよ。みんな忙しいでしょ」


 急いで交易所を飛び出そうとする文官を呼び止め、自宅へと向かう。

 ゼスがユグシルと共にいた大樹の中腹からは交易所よりも自宅の方が近いため、結果的に遠回りになってしまった。


「それにしても、本当に人が増えたなぁ」


 大樹からも見下ろしていた村の光景も、視点が変わると抱く印象も違う。

 自宅への道すがら、周囲を見回しつつゼスはポツリと呟いた。

 その呟きに、隣をふわふわと浮かびながら並び歩いていたユグシルが思い出したように口を開く。


「ララドたちが、移住者の住居をどこに建てるか悩んでた」

「確かに、だいぶ手狭になってきたよね。ここを拠点に決めた時は、大樹海の中でも開けた場所だと思っていたけど」


 思い起こされるのは、森流しの刑でこの大樹海に飛ばされた翌日。

 ハクの背に乗って上空から定住に適した場所を探していた時のことだ。


 ユグシルが宿る大樹の周りに広がる、開けた平坦な土地。

 そこが今や、建ち並ぶ建物や施設で埋まっている。


「その割に、洗浄できるものがないんだけど……」


 一周回って頭を悩ませている問題に再びぶつかったゼス。

 ぐるぐると螺旋を描く思考を打ち切るように、慌てた声が飛び込んでくる。


「! ゼス様!」

「ロバート、やっぱりここにいたんだ」


 ゼスの自宅からちょうど姿を現したロバートが、手にたくさんの書類を抱えたまま駆け寄ってくる。


「ハクから聞いたんだ。俺を探していたんだって?」

「ガルゥ!」

「まさかわざわざ私をお探しに? 大変失礼をっ」

「いいからいいから。それよりも相談って?」

「! そうでした。詳しい話は中で――と、家の主人ではない私が言うのもなんですが」

「まぁまぁ、細かいことは置いといて」


 恐縮しっぱなしのロバートに苦笑しつつ、ゼスたちは家の中へと入っていった。




    ◆ ◆ ◆




「――ゼス様、本題に入らせていただく前に、現状を整理させていただきます」


 自宅の中に設けられた執務室にて、テーブルの上に腕いっぱいに抱えていた書類を広げながら、ロバートが口を開いた。

 ちなみにハクもテーブルに乗り、物珍しそうに書類を眺めている。


「現在、私たちは先の建国宣言を大陸諸国に承認してもらうべく、他国の要人を招いての建国祭を開こうとしております」

「うん、そうだね」

「建国祭を開催するにあたっては、他国の要人たちへゼス様の威光を広く知らしめ、国としての権威を確固としたものにするための場所――王城の建設が急務なわけです」


 王城。あるいは、王宮。

 国の長の住処にして、国の中枢としての役割を持ち、謁見や外交の場としての象徴的な機能も果たす。

 ゼスとしては、この村で最初の建物であるこの自宅を気に入っていた。

 だが、王として立派な建物に住まなければ他国に足元を見られ、建国の承認を得られないかもしれないと言われては、納得するほかなかった。


 こくこくと頷き続けるゼスへ、ロバートはさらに詳細の展望を説明し、いよいよ本題へと移る。


「この村――いえ、この国の興りは通常とは特殊なのです」

「まぁ大樹海だからね」

「それもそうなのですが……一般的に国というのは、幾つもの共同体を束ねる形で形成されます。しかしこの国は違う。ユグシル村という一個の共同体が、ゼス様やユグシル様、ハク様といった強大な力と存在によって、本来通るべき段階を飛ばして国となりました」


 ロバートは真剣な面持ちで、ずずいと前のめりになる。


「そこで、問題が発生しております。現状、この地で受け入れることのできる住民を遥かに超える移住希望の申し出があります。現在は家屋や施設が用意できるまで保留という形にしていますが、それにも限界があり――」

「つまり、ユグシル村だけでは対応できないと」


 ここに来るまでの道中でまさにゼスも実感したことだった。


 ここは大樹海の中。魔物の脅威がなくとも、木々が青々と生い茂る森の中で、人が住むのに適した場所には限りがある。

 建設資材の確保のため開墾は行われているが、焼け石に水と言える。


 話が見えてきたゼスは、一つ大きく頷いた。


「つまり、ユグシル村以外にも人が住める場所が欲しいってことかな」

「その通りです。ゼス様が浄化なさったアークライト王国との中間地域にも次々と人が入ってきているとの報告もあります。その人々の管理も進めたく、ゼス様のご許可をいただきたいのですが」

「それはもちろん、拒否する理由なんてないけど――」


 そこまで考えて、ゼスは口を止めた。

 不安そうにするロバートや訝るユグシルたちの視線を浴びながら、ふと思う。


(これって、いい機会じゃないか?)


 ここしばらくゼスの頭を悩ませていた問題。

 人が増えてやることがなく、怠惰な生活を過ごしていたこと。

 そして、《清浄王の加護》によって《洗浄》する機会がなくなったこと。


 その二つの問題を、一気に解消する妙案が浮かんだ。


「新しい拠点の土地選び、俺に手伝わせてよ」

「ゼス様ご自身が、でございますか?」

「この国の村や町を増やすなら、俺も直接見て回りたいしさ」

「なんと……下々に目を配るその姿勢、やはりゼス様こそ王冠を戴くに相応しい……」

「うん?」


 何故だか感極まった様子のロバートに首を傾げつつ、ゼスはニッとした笑みを浮かべる。


(拠点探しをしている間は怠惰じゃなくなるし、何より大樹海に入ってきてる人たちに出会えば、《洗浄》できるいい機会だ! これぞまさに、一石二鳥の妙案!)


 感涙するロバートと、キラキラと目を輝かせるゼス。

 二人の姿にユグシルは小さく息を吐き、テーブル上のハクもまた困った様子でバサバサと翼を広げるのだった。


「それとゼス様、立て続けに申し訳ないのですが、建国祭までにこの国の正式な名称をお考えいただけませんか」

「えっ」

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