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追放先の呪われた森がいつの間にか聖域認定されていた。~【浄化】スキルに目覚めた俺、神竜や大精霊たちに囲まれて一国の王になる~  作者: 戸津 秋太
第二章

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第45話 新たな職業

「……どうやら、前みたいに気を失ったみたいだなぁ」


 目を覚ましたゼスは、視界に広がる見慣れた天井(自宅の寝室)をしばし眺めた後、直前の記憶を整理してから嘆息した。

 最後に覚えているのは、新たに発現したスキルを発動したこと。

 そして体内の精神力がゴリっと削れる感覚を抱いたことだ。


 のそのそと上体を起こすと、ふと引っ掛かりを覚えた。

 視線を向けると、ベッドの隅にもたれかかるようにしてフローラがうつ伏せに眠っていた。


「……そうか、フローラさんの《治癒》か」


 穏やかな寝息を立てるフローラに、ゼスは面目なく思う。

 前に倒れた時と同じようにスキルによる治療に当たってくれていたのだろう。


「感謝した方がいい。彼女、夜通しスキルを使い続けていた」

「うわっ!? びっくりしたぁ!」


 突然の声に飛び跳ねる。

 ベッドの足元を見ると、じとぉ〜とした目でこちらを見上げるユグシルの姿があった。


 ゼスの反応に、ユグシルは不満げに唇を尖らせる。


「ひどい」

「ご、ごめん。……いや、謝る必要があったか?」

「ある。精神力を使い果たして気絶したのはこれで二度目」

「……本当に申し訳ございませんでした」


 ベッドの上で正座をして深々と頭を下げると、ユグシルは小さくため息を零す。

 すると「んんぅ」という声と共にフローラがもそもそと顔を上げた。


 焦点の定まらない桃色の瞳がゆっくりと開かれて、ゼスの顔を捉える。

 その瞬間、


「目を覚ましたんですね! よかったぁ……」


 心底ほっとした様子で胸の前で手を握るフローラに、ユグシルが補足するように呟く。


「以前と違って、《治癒》を使ってもすぐに目を覚まさなかったから心配してた」

「言われてみれば……」


 今こうしてベッドに寝かしつけられていることと、猛烈な空腹感からして一日近く眠っていたのだろう。


「ご心配、おかけしました。それと、治療ありがとうございました」

「……まったくです。あんまり無茶しないでくださいね」


 フローラが腰に手を当ててぷくぅと頬を膨らませる。

「私、怒ってます」と言いたげな態度だが、明らかに怒り慣れていないので怖くない。

 とはいえ、今一度頭を下げようとしたその時。


 ぐぎゅうぅと、ゼスのお腹が盛大に鳴った。


「あっ! 今ピーターからご飯をもらってきますねっ」


 両手を合わせて慌ただしく部屋を出ていく。


「自分で動けるのに」

「それを言うと、また彼女に怒られる」

「……想像できるよ。ここは甘えさせてもらおう」


 肩を竦めつつ、ふと湧き上がった疑問を口にする。


「それにしても、なんで前と違ってすぐに目覚めなかったんだろう」


 ふわりと浮き上がったユグシルは、足元から先ほどまでのフローラの位置に移動し、ゼスの顔をじっと見つめて答える。


「それは、ゼスのステータスが伸びたから。彼女の《治癒》では回復に時間がかかるぐらいに」

「ステータス? そういえば新しいスキルに目覚めたんだった」


 思い出すように心の中で「ステータス」と念じる。



――――――――――――


名前:ゼス

種族:人族

職業:【清浄王?】

レベル:67

筋力:D

防御力:D

敏捷性:B

精神力:S S

持久力:D


スキル

《洗浄》《浄化》

《精霊の眼》《清浄王の加護》

――――――――――――



「……なんだか、色々変わってるなぁ」

「レベルと精神力が伸びてる」

「他のステータスはあんまり変わってないけどね。……なぜなんだ」


 がっくしと項垂れるゼス。しかしすぐに顔を上げてへらりと笑う。


「ま、困った時は皆がなんとかしてくれるだろうし、俺にはいらないステータスか」

「……さすが精神力SS。切り替えが早い」

「なんで呆れられてるんだ?」


 釈然としないながら、ゼスは新たに授かったスキルの効果を思い起こす。


「《清浄王の加護》、か。俺が統治する国の民に浄化の加護を与えるってことみたいだけど、いまいちピンと来ないなぁ」


 スキルは新たに発現した場合、その効果や使い方が当人の意識に刻まれる。

 だが、ゼスの脳裏に閃いた《清浄王の加護》の効果は、「なんとなく使ったらみんなが幸せになるよね〜」ぐらいのふんわりとしたものだった。


「使い道が多岐にわたる埒外の力は、そういう風になる。《浄化》だってゼスは最初、汚れを綺麗にするぐらいの認識だったはず」

「言われてみれば……。と言うことはこのスキルにももっと良い使い道があるのか……?」


 ぶつぶつと考え出すゼスに、ユグシルは微妙な表情で言う。


「ゼスみたいにおバカさんだと、スキルの捉え方もおバカさんになるのかも」

「いや〜それほどでも……って、もしかしなくてもバカにされてる?」

「……気絶したの、二度目」

「まだ怒ってた……」


 そのことを引き合いに出されてしまっては返す言葉もない。

 彼女の鋭い眼差しから逃げるように、ゼスは自分のステータスを眺める。


「あと気になるのは……職業、だよな。【清浄王】ってなんだか仰々しいけど」

「ゼスは王様になったから、不思議でもない」

「まあ理屈はわかる。神様もまさか俺が王様になるなんて思ってなかっただろうし」


 以前、ユグシルは『転職』は神々の想定を上回ることで起きると話していた。

 もしかしたら神々は森流しの刑によってゼスは命を落とすと思っていたのかもしれない。


「……で、なんでまだ職業に『?』がついてるんだ?」


 ステータスの職業欄を指差すと、ユグシルの目線もそちらに動いた。

 彼女もまた《精霊の眼》でゼスのステータスを確認しているのだ。


 なんとなく嫌な予感を抱きながらのゼスの問いに、ユグシルは小さく微笑んだ。


「神様の保険。王様という想定さえ上回るかもしれないと、神々が判断したのだと思う」

「つまり……?」

「また転職するかもしれない」

「……王の次の職業って何」


 さらなる厄介ごとの気配を感じながら、ゼスは頭を抱えた。

 ユグシルはふわりと浮かび上がり、ベッドの上に飛び乗ると、項垂れるゼスの頭をなでなでと優しく撫で付ける。

 もちろん、楽しげな微笑を湛えたまま。


「……ま、どうなるかわからない未来にあれこれ考えても仕方ないか」

「さすが、ゼス」


 顔を上げたゼスはそのまま窓の外を眺める。


「とりあえず、今はできることをしよう」

「今できること?」


 こてんと小首を傾げるユグシルへ、ゼスは力こぶ(矮小)を作りながら得意げに告げた。


「――大樹海の浄化だよ」

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