エール2〜総理大臣は女子高生
エピソード1「エール」の後編。能登半島地震の支援が進まない政治に我慢できないJKのエイミは、法律改正に向けて動き、地方議会から国政へ。新党を作り総理大臣を目指す・・
[シーン1/Hits-FM番組オンエアスタジオ]
■SE/「Hits Goodmorning Hida」のタイトルコール〜TM.BGM
※以下このページのブラウンの文字は宮ノ下さん
『Hits Goodmorning Hida!
今日はゲストに、地元高山の女子高生をお招きしました。
高山の高校生たちに呼びかけて被災地への支援を続けているエミリさんです!
こんにちは、エミリさん』
『あ、こんにちは』
『エミリさんは元旦の夜から情報収集して支援の輪を広げていったんですよね?』
『いえ、私でなくて生徒会長が中心で動いてくれたんですけど』
『すごいですね。じゃあエミリさんはどうして支援をしようと思ったんですか?』
『私のゲーム友だちが被災したんです』
『そうなんですか・・・』(「それは大変でしたね」とか続けて〜F.O.)
■Emily/番組FOにかぶせてモノローグ
高山の高校生たちによる被災地支援の輪。
その活動が話題となって、地元のFM放送局で紹介された。
生徒会長と副会長が出演を辞退したために、私がインタビューに答えている。
私だって、人前で話すのは苦手なのに。
いやむしろ、私の方が生徒会長よりよっぽどコミュ障だって。
まさか、このゲスト出演が、私の人生を変えることになるとは、夢にも思わなかった。
[シーン2/高山市議会・本会議場]
3か月後。
私は高山市議会の本会議場に立っていた。
高校生との意見交換会などは今までも議会で行われてきたけど、
たった1人で公聴会に呼ばれるというのは異例中の異例だ。
どうしてこんなことになったのか。
地元のFM放送局でゲスト出演したら、
TVや新聞、雑誌など、さまざまなメディアが私たちの活動を取り上げた。
ローカルメディアのニュースから、全国のマスメディアへ。
さらにネットニュースとSNSで全世界へ拡散されていった。
”市やNPOなど、いろいろな団体が支援活動をしているにもかかわらず
高校生の活動だけが注目されている”
この事実を重くみた保守派の議員は、
市議会に本人を呼んで、公聴会で事実関係を確認しようとした。
なんだか大変なことになってない?
ゲーム仲間たちはみんな私のことを心配して、オンラインでの参加をすすめる。
私の大切な友だち、ピリカも、
「私たちを助けてくれたエイミが晒されるのなんて見たくない」
と言ってくれた。
でも、今回提出された議案に答えるのにリモートでは説明しきれない。
それにもう去年までの私とは違うんだ。
そんな思いもあった。
「私たちはただ、私たちができる方法でお役に立ちたかっただけです」
「こんな風に、みんなの前で偉そうに自慢なんてしたくありません」
「だって、こうしている今も、命の危険にさらされている人がいるんです」
「その中には、私たちの友だちもいます。だから」
「物資がなくて困っている人がいて、
物資を届けたくてもどうすればいいかわからない人がいる」
「そんな人たちへ一元化してお届けできる仕組みを考えていきたいんです」
「トレーサビリティを管理するアプリを作りたい」
「私たちがしたことは、そのための小さな第一歩だと思っています」
あ・・・
いつの間にか、結果の報告ではなく、ただの願望になってしまった。
うわあ、炎上したらどうしよう・・・
私の「発言」は、TV中継され、ネットで配信され、あっという間に
1000万回再生、100万リポスト、150万回シェアされた。
国民の10人に1人が見たってこと?
ゲーム仲間でアニオタのキャラ名・チコリンは突拍子もないことを私に告げた。
『こうなったらエイミがこの国の政治を動かせばいいんだ』
『え〜』
ニッチな法律オタクのキャラ名・スーは
『この機会に、高校生にも政治参加できるような法改正を進めていこうよ』
『いや〜ありえない、ありえない』
そんな私のとまどいとは逆に、世の中は変わっていった。
2024年春。
『ハッシュタグ:高校生の政治参加』がトレンド1位となる。
チコリンとスーは、ネットで友だちになっている国会議員に働きかけて
『若年層の政治参加促進法案』という草案を完成させた。
そのあとは信じられないスピードで世界は進んでいく。
2025年春。
「衆議院議員選挙法」と「参議院議員選挙法」が改正された。
通常、法改正は提案と審議に1年以上、委員会での検討、本会議での審議と採決に
数ヶ月かかる。
実際に公布・施行までは何年もかかるのに、なんと1年以内で施行された。
まさにタイパ。
動画を1.5倍速で見るアルファ世代をなめちゃいけないってこと。
結果、衆議院議員になるための最低年齢は25歳以上から18歳以上に引き下げ。
参議院議員も30歳以上から18歳以上に引き下げられた。
成人で選挙権があれば国政に参加できるということ。
よく考えたらそれって全然違和感ないじゃん。
で、これからどうすればいいの?
『新党を作るのよ』
ゲームの中で私たちパーティのリーダー格、キャラ名・ハンプさんがさらっと言う。
ハンプさんは年齢・性別不詳。
実は現役の国家官僚だという噂もある。
2025年夏。
結局、私たちRPGパーティの5人を中心にして新しい政党「JK」を結成した。
法人格を取得し、定款を作って選挙管理委員会へ登録する。
代表者は・・・
「え〜私!?無理無理無理無理」
って言ったのに、結局「JK」党首となってしまった。
幹事長はハンプさん。
書記長はピリカ。
政調会長はチコリン。
選挙対策委員長はスー。
いいのか、これで?
そんな不安をよそに、党員の希望者が続々と集まってくる。
希望者は、私たちJKに賛同して、ほとんどが高校生!
「自分たちでこの国を変えたい」
みな一様に、この言葉を口にする。
そして、2026年夏。
4年に一度の衆議院議員選挙。
18歳以上になる党員は揃って立候補した。
選挙活動は、若者の集まる場所と高齢者施設。
みんなおじいちゃんおばあちゃんが大好きだからね。
私は日々SNSを駆使しながら、高山駅前と古い街角、平湯バスターミナル、
飛騨古川駅など飛騨エリアを自転車で走り回った。
岐阜県内すべてを回りたいんだけど、極力お金使わないからそれは無理。
その代わりネットとSNSで毎日ライブ配信した。
「義援金や支援物資を送った時点から被災者の手に渡るまでをもっと透明化します!」
「被災した県の指定する物流ルートと配送拠点も透明化します!」
「物資の仕分けをする拠点も全国の各エリアでまとめます!」
「福祉にもっと予算を使って、高山を今より子育てしやすい、すみやすい街にします!」
「私たちデジタルネイティブ世代が、インバウンドに向けたDXで街を活性化します!」
「中部縦貫自動車道を一日も早く開通させ、東京からスキー客を高山へ呼び込みます!」
「JK」のマニフェストで一番に掲げるのは被災地支援と子育て支援。
さらにそれぞれの地域が抱える課題に積極的に取り組むことを訴え続ける。
だって地域があっての国家でしょ。
岐阜県の選挙区は定数2名だから大激戦。
勝てるなんて思っていないけど・・・
選挙には史上初のネット投票が採用され、スマホで投票できるようになっている。
私が街頭で話すワードは毎日トレンド入りし、
SNSのアカウントにはいいねとフォロワーでお祭り状態。
私の思い、若者たちには十分届いていると信じたい。
ついに、開票日。
メディアが一番注目したのは、投票率。
前回2022年の投票率は52.05%。
今回の投票率は驚くことに、80%を超えた!
原因は明らか!
高校生が起爆剤となって、若者世代がネット投票の後押しで票を投じたのだ。
その結果、過半数の議員数を獲得したのは
なんと私を含めた、わが「JK」!!
TVに映し出される各地の自宅兼選挙事務所で、みんな泣いている。
すぐにハンプさんからLINE電話が入った。
『なにしてるの?』
『いますぐみんな集めて東京へいらっしゃい』
「え?どうして?」
『もう〜』
『私たちのJKが第一党なのよ』
「うん。うれしい」
『それがどういうことかわかる?』
「えっと」
『あなたは内閣総理大臣なの!』
「あ!」
『さあ、これからどんどん暴れるわよ!エイミ首相!』
「はい!」
この荒唐無稽なお話は、もちろんフィクションです。
でも、絶対にありえないお話ではありません。ふふふ。
JKが一番がんばってる!そんな物語をたくさん書いてみました。
物語はすべてボイスドラマになっています。こちらからご視聴ください↓
https://emiri.jp/wp-content/uploads/2024/01/18s_primeminister_web.mp3