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転校生はヴァンパイア〜転校してきたJKは月に一度、吸血鬼じゃなく人狼になって友達を食い散らす

岐阜県高山市の高校に通う女子高生たちを主人公にしたボイスドラマ

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高山の学校に転校してきたJKエミリは、実は狼男だった!?

満月の夜になるとヴァンパイアとなり、人間を襲うのだ・・・

[シーン1:プロローグ】


■SE/狼の遠吠え


2024年8月20日。十五夜。

高山市街は幻想的な月の光に包まれていた。

こんな夜には数多くの伝説が語り継がれる。

誰もが知らないのは、その伝説が現実に存在していること。

悪夢は、夏休み明けの9月に始まる。

それは高山市内にある高校の教室だった。



[シーン2:転校生エミリ】


■SE/学校のチャイム〜教室の雑踏/蝉の声


「今日からこの学校に転校してきました、大神エミリです」


お、なんか、美味しそうなJKがいっぱい・・・

・・・とっとっと。

私もJKだったわ。


でも、実は私、フツーのJKじゃないんだよねー。

ま、普段はいたってフツー。

っていうか、口数の少ない、目立たないタイプのフツー。


フツーじゃないのは、月に一度だけ。

心も。身体も。食べ物の好みも。フツーじゃなくなる。


驚かないでほしいんだけど、私、ヴァンパイアなんだ。

あ、ヴァンパイアって言っても吸血鬼じゃない。

人の血を吸うんじゃなくて、食べる方。

そう。狼男。

いや、正確にいうと、狼女?

Wikiには、狼人間とか人狼じんろうとか書いてあるわ。


私、満月の夜になると、どうしようもなく狩をしたい衝動に駆られるの。

前の学校でも、それでちょっと食べ散らかしちゃって、

パパとママがあわてて転校手続きしてくれたんだ。

ほら、ニュースになったでしょ。

どこかの街で、クマが出没して、何人もの被害が出たって。

あれはクマじゃなくて私。てへ。

って笑い事じゃないな。


パパとママはいたってフツーの一般ピープルなのに

私だけがヴァンパイアの血を引く。

どうもおじいちゃんがヴァンパイアで、隔世遺伝みたい。

満月の夜、パパとママは特別にしつらえた座敷牢に私を閉じこめる。

「エミリ、ごめんね」と言いながら私の手足をしばって。


あと2週間もすれば・・・中秋の名月。

ヴァンパイアにとって一年で一番、テンションの上がる夜。

去年は座敷牢の太い柱を、小枝のように捻り潰して街に飛び出していった。


今年は、大丈夫だろうか・・・

不安にかられて眠れぬ夜を過ごした翌日。


■SE/学校のチャイム〜教室の扉が開く音


「今日から転校してきました、月読マコトです」


え?転校生?・・・2日連続で?


■SE/〜教室の雑踏


教室がざわつく。

だって彼は色白で端正な顔立ちのイケメン。

まるで月の光を背負っているかのようにクールだ。

クラス中の女子のハートが射抜かれてるみたい。


先生がみんなを静めてあらためて彼を紹介をする。

鹿児島県の桜島町というところからやってきたそうだ。

月読は、私の横を通るとき、なにか言いたげな視線を送って席についた。

ん?なに?なんか言いたいことでもあるの?



[シーン3:1週間後/教室の噂話】


■SE/学校のチャイム〜教室の雑踏


転校してきてから1週間。

高山市内のクマ出没情報と合わせて、

クラス中が私の住んでた町の噂をしてる。


”あの町に出たのは、なんかクマよりでっかい化け物だって”

”高山にも来るんじゃない”

”大神さんのいたとこだよね”


あ、ハナシがこっちきそう。

と思ったとき、


『あれは、ヒグマだよ』


彼、月読が割って入った。


『本州にはいないけど、飼われていたのが逃げ出したんじゃないかな』

『大丈夫。さすがに高山までは距離があるって』

『大神さんの住んでたところからも離れてるみたいだよ』


え?

どういうこと?

私を庇ってる?


まさか、ね。


でもみんな私のことなんて、頭の中から飛んじゃってる。

月読を見て、全員キュンってなっちゃってるから。


ん?

ちょっとちょっと、なに?

月読、なんで私のこと見てるの?


あんた、なにもの?



[シーン4:中秋の名月】


■SE/虫の声


いよいよ、中秋の名月がやってきた。


「パパ、ママ。いつもより思いっきりきつくしばって。

今夜の衝動は尋常じゃないの」


パパとママが悲しそうな顔で私を見る。

だって、先月、あんなに爆食いしちゃったんだもん。

ダイエットもしなきゃいけないのに。


私たち一家が引越してきたのは日枝神社の近くの古民家。

そもそも日枝神社に祀られている山王=山の神は狼にゆかりがある。

日枝神社の由来書を見ればその神使じんし=使いは狼だ。

大昔、山王が狼を救った伝説のように、

私を救ってほしいという両親の思いが伝わってきた。


今夜、私は血に飢えたヴァンパイアに変身する。

それも多分、過去最強の狼に。

鉄格子で囲まれた座敷牢は持ち堪えられるだろうか。


■SE/鉄の檻を捻じ曲げる音〜狼の唸り声


はぁはぁはぁ。


ここはどこだ・・・


座敷牢じゃない。外だ。


まさか、鉄格子を破ったのか・・・


狼に変身すると、私の記憶はまだらとなり、抜け落ちていく。


パパ、ママは!?


いや大丈夫。鉄格子の寝室に隠れててもらってるはず。

ホッとすると同時に、また意識が遠のいていく。

ダメだ。やばい・・・


とそのとき、


『ひふみ よいむなや こともちろらね』


私の耳にハッキリと祝詞が聞こえてきた。


『エミリ、助けてあげるよ』


月・・読?


『いまから結界をつくって、魔物を分離させるから』


なん・・だと?


『臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前!』


うぉぉぉぉ〜!


『これで魔物は動けない。

いいか、このまま位山へ行くから、気をしっかり持つんだ』


位山・・?


『山王祭は春だ。大山咋神はそれまで動けない。

だが、ここ高山には位山がある。

あそこに鎮座するのは天岩戸。

僕の守護神、月読命にもゆかりの聖域なんだ』


月読命って、あんた・・・なに・・もの?


『みちみち話すよ。

僕の故郷には、月読命を祀る神社があるんだ。

僕はそこの氏子。

先月、神託で魔物の動きをとらえ、ここ高山まで転校してきた。


月読命は、月を司り、夜を統べる神。

月の神にとって、中秋の名月は年に一度の大祭なんだ。

祭を汚す魔物は祓わなければいけない。

僕はそのためにきたんだ』


「私、殺されるの?」


『違う。救ってあげるんだよ。

エミリの悲しみが伝わってきたから』


悲しみ・・?

そうだ、私、喜んで人をあやめてたんじゃない。

こんなこと、もうやめたかった。


『いいかい。いまから大祓祝詞をあげるから!

もう、魔物とは縁を切るんだ』


うん・・そうしたい・・・


『高天原にかむづまります すめらがむつ かむろぎ・かむろみのみこともちて・・・』


月読は、まるで魔法の呪文のように祝詞をとなえた。

私の体から邪悪な魂が抜けていくのを感じる。


『はらえたまえ きよめたもうことを あまつかみ くにつかみ

やおよろずのかみたちともに きこしめせと まおす・・・』


■SE/二拍手(柏手)


位山に朝日がのぼる。

目覚めた私を見て月読が微笑む。


黄金色に輝く笑顔が、夜の終わりを告げていた。

私、フツーの女の子になれるかな。

これからは私も、月の神様を信じてみよう。

読んでいただき、ありがとうございます!

よろしければ、ボイスドラマもお楽しみください!

https://emiri.jp/wp-content/uploads/2024/10/little_vampire.mp3

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