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結婚パレードの後、遂にゴドウィンの工房はトラックの販売に乗り出した。
パレードによる宣伝効果も相まってトラックを欲しがる人が殺到した。まあ、あんだけ派手なトラックなのだから宣伝効果が無いと困る。
基本的には二トントラックを販売して、デコトラは特別受注生産となった。
デコトラの荷台の絵に関してはメッサジェントのツテを使い、普通の画家を雇うことになった。アカンサスさんに任せるといつまで経っても完成しないからだ。
アカンサスさんは結婚パレード用の絵を描いて満足したのか、特に文句も言わずに自宅に帰って行った。ほんの少しだけあのプルンプルンな胸とお別れした事に寂しさを覚えた。人間失ってから大切な物に気付くのはどんな対象でも同じだ。
デコトラの荷台の絵は普通の画家が普通の絵を描くかと言うとそんな事は無かった。
これもパレードの宣伝効果なのか誰もが異世界感が無いあの画風を頼んできた。そう、鯉やら龍やらまさしくザ・デコトラの絵だ。
顧客は領主様のデコトラの絵と被るのはいけないので日本から持って来たトラック雑誌を見ながら、
「この絵がいい」「虎にしてくれ」「コンジキヤシャって奴を頼む」
と好き勝手に注文してきた。
そんな今まで描いた事のない画風を無茶振りされた気弱そうな画家は断る事も出来ずに今日も黙々と注文通りに絵を仕上げている。
断らないのは領主直々の紹介だからなのと、注文してくる相手が軒並み圧の強い強面のおじさんだからだろう。
新たな発明品が世に出れば新しい仕事も生まれる事になる。
この世界でもトラックだけでは動かないので必然的にガソリンスタンドが必要になる。
大きな街にそのガソリンスタンド的なモノができた。
このトラックはガソリンの代わりに火吹きトカゲの油をとやらを使っているらしいので各地に火吹きトカゲ牧場ができた。
僕の密かな楽しみは燃料補給中に眺める火吹きトカゲである。うるさいドワーフから離れてヨタヨタ歩く火吹きトカゲを見るのは最高の癒しだ。
こんなにも早く各地に牧場ができたのもメッサジェントが大金を出したおかげだ。何でも直ぐに投資資金を回収できるほどこのトラックによる運送は画期的らしい。
これのおかげで僕も燃料切れの心配せずに、更に遠くへトラックに乗って行けるようになった。もはや自他共に認めるトラックドライバーだ。
トラックは大人気でゴドウィンの工房だけでは手が足りず、ドワーフの里全体の産業となった。
里のドワーフは忙しくて手を空けられない、僕は物作りは出来ない。まあ、何と言うか、つまりこれまで以上に各地へ使いっ走りされるようになった。
それはいい。仕方ない。適材適所って奴だ。僕も一人の方が気楽なのでトラックを運転するのは好きだ。
ただ一回の長距離移動で効率よく物を運ぶとなると重要なのはトラックにどれだけ荷物を詰め込めるかだ。
僕は今まで目立たず生きてきた。この世界で軽トラを乗り回す事になり注目を浴びたがそれも慣れた。
でもまさか僕がデコトラを運転するとは夢にも思わなかった。
やたらとゴツいライトに装飾。ピカピカに光るフレーム。そして異世界にとって場違いな荷台の絵。絵はアカンサスさんの置き土産で最後に描いていった。
何でだ?何でよりにもよって般若を描いたんだ。街に行くと子供が泣くんだ。通り過ぎる人が凄い顔してるんだ。俺が降りると皆んな距離を取るんだ。これ社用車だろ?宣伝効果とかあるのか?工房の風評被害が出ないか?走るネガティヴキャンペーンだよ!
有名な芸術家のアカンサスさんの絵だから下手に描き変える事も出来ず、今日も僕は般若が描かれたデコトラに乗り、各地で白い目で見られていた。




