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来て来て結婚式

僕は相変わらず雑用と買い出しに追われる日々を過ごしていた。そんな時、僕と工房宛に一通の手紙が届いた。何かの紋章で封蝋されている手紙は気品を感じられた。絶対にお偉いさんからの手紙だとバカでも分かる。

 僕はこちらの世界の文字は読めないのが手紙を渡してくれた使用人っぽい人が差出人を伝えてくれた。先日助けたビアンカさんとメッサジェントだ。

 僕宛でもあるが工房の名前も入っているのでゴドウィンに渡して読んでもらった。内容は驚愕のものであった。

 結婚のパレードをするから軽トラを運転して欲しい、そう書いてあった。ビアンカさんが思い付いたらしい。

 確かに荷台に立てば新郎新婦は目立つし、今まで見たことのない軽トラでのパレードは目を引くだろう。しかし軽トラ?本気なんですかビアンカさん。

 日本人である僕はその感性は全く受け入れられない。いや、記憶が確かなら軽トラに乗って優勝パレードをした人がいるにはいるが。本当にそれでいいのか?

 とりあえず僕の手に余るのでゴドウィンに判断を委ねた。こう言う難しい問題は上の人間に丸投げに限りのだ。

「いいじゃねーか。何が問題なんだ?」

 ゴドウィンはあっさり了承した。そりゃそうだゴドウィンはこちらの世界の住人であり、僕の感性と常識に合うわけがない。

 何も言えずに頭を抱えていた僕にアスカさんが話しかけた。

「ヒカルの悩みは分かるぜ、確かに軽トラでパレードは気が引けるよな」

「そうですよね!アスカさん!」

「何が問題なんじゃ?」

「馬が引く野菜とか入れてる荷台みたいな感じなんだよ、軽トラって。いくら頼みだからってお貴族様をその上に乗せるのは気が引けるんだよ」

「なるほどな」

「まあ、軽トラに装飾を施せばいいんじゃねーか?今のままだとパレードって感じでもないし」

「装飾か、ちょっと待ってろ」

 ゴドウィンはそう言うと奥に引っ込んだ。そして何かを持ちドカドカ戻ってきた。

「これなんかどうだ」

 ゴドウィンが持って来たのはトラックの雑誌であった。そこのデコトラのページを開き僕らに見せた。

「こんなに派手ならお前らも納得だろう。軽トラに二人を乗せて、後ろはコイツで華やかにする。完璧な式典だ」

 いや、納得するわけないだろ。デコトラだぞ。見た事ねえよ。しかしそれも日本人の感性なのだろう。周りには集まったドワーフが、いいじゃないか、いいじゃないかと囃し立てる。コイツらも自分は関係ないからって好き勝手言いやがる。

「まあ、いいんじゃねーの?向こうがトラックでパレードしたいって言ってんなら」

 アスカさんはなんか投げやりになってる。でもデコトラを作れるかもしれないと思っているのか、何だか嬉しそうに笑っている。アスカさんもそっち側の人間ですか。

「そうと決まればメッサジェント様に予算を貰わないとな!恥をかかせないようにド派手にしてやろう」

「「おうよ!」」

「それに事がうまく進めばトラックの量産化も夢じゃないぞ!この機会を逃すなよ!」

 ゴドウィンはそう言うと早速手紙の返事を書きに行った。周りのドワーフ達も盛り上がっている。

 ゴドウィンの野郎、結婚式の準備を理由に人の金でデコトラを作りたかっただけじゃないか。て言うか本当にデコトラで結婚パレードをするのか?俺は不敬で殺されたりしないのか?

 結局僕の悩みは解決する事なくどんどん話は進んでいった。僕が頭を抱えてているとゴドウィン立ち止まり大声で僕を呼んだ。

「そうだ!ヒカル!手紙にはお前に操縦して欲しいって書いてあったからな!忘れんじゃねーぞ!もし失敗したら投獄じゃ済まされねーぞ!ガハハ!」

「え?」

 そんな話全く聞いていない。俺がパレードで運転するの?嫌だ!嫌だ!嫌だー!小心者の僕がそんな事出来るわけがない。

「そんな重大な事を僕にやらせないで下さい!」

「仕方ねーだろ!向こうの要望だ!それにでっけートラックはアスカに運転させないといけねー!残りはオメーだけだ!」

「そんなのゴドウィンが運転すればいいじゃん!」

「あー手紙を書かないとなー。忙しい、忙しい」

 わざとらしい事を言いながらゴドウィンは去って行った。悪態をつきながら叫ぶ僕にアスカは慰めの言葉をかけてくれた。

「まあ、楽しもうぜ、文化祭みたいなもだろ?」

「え、えー?」

 アスカさんが楽観的なのか僕が悲観的なのか。工房内は早速バタバタと忙しくなっていった。

 

 

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