表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/61

第3話 ギルベルトの家

 森を抜けると、こじんまりとした家があった。

 ギルベルトの家らしく、彼は私を招き入れると、簡単な食事を用意してテーブルに着いた。


「今日はすまなかった」


 持っていた林檎を袖に擦り付けながら、ギルベルトはぼそっと呟く。

 湯気の上がるお茶を覗き込んでいた私は顔を上げた。


「だいぶ、歩かせた。疲れただろう? 食べたら、すぐ寝るといい」


 ギルベルトはそう言うと、赤い林檎を齧った。

 赤銅色の髪も、鳶色の瞳も、手元の林檎も、燭台の蠟燭に照らされて、より赤く見える。

 ただ林檎を齧っているだけなのに、彼のひとつひとつの動作が男らしく、それでいて洗練されていて、とても魅力的に見えた。


(本当、かっこいいなぁ……)


 目の前に、夢にまで見た人がいる。

 ゲームでは声を吹き込まれなかったような、何気ない会話にも、彼の低音ボイスがもれなくついてくるのだ。


(でも、一体この夢はいつまで続くんだろう)


 籠に入った丸いパンに手を伸ばして、口に運びながら考える。

 確かにギルベルトとこうしていられるのは幸せの極みなのだけど、やはり私にも生活がある。

 早く目覚めて、女子大生に戻らなきゃ。

 そうこうしているうちに、体が温かくなってきて、頭がぼうっとしてきた。

 瞼を上げるのに苦労する。


——眠い。


 ふわっと体が浮く感覚。

 でも、目が開けられない。どうしてこんなに眠いんだろう。


「おやすみ、ミア」


 ギルベルトの低くて、優しい声が降ってきた。

 きっと抱き上げてベッドまで運んでくれてるんだ。

 お礼を言いたかった。

 でも、意識が遠のいて、そのまま眠ってしまった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ