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第20話 父帰る

 ロンメルは不機嫌であった。ここのところずっと不機嫌であった。司令部中隊の人間は参謀長から兵卒まで、ロンメルに雷を落とされないようぴりぴりと気を遣っていた。


 マルコはロンメルの人となりが最近ようやくわかってきた。周囲の兵士たちは、アフリカ戦線の戦況が膠着しかかっていることが、ロンメルの気を滅入らせているのだと思っていた。マルコは真の理由に気づいていたが、軽々しく口に出来るものではなかったので黙っていた。


 イギリス上陸とソビエトからの宣戦によって、ドイツにはいきなりふたつの大きな戦線が出来た。そのことが人々の耳目をアフリカ戦線から逸らしているのが、ロンメルには忌々しかったのである。


 ロンメルは骨の髄まで職業軍人であった。職業軍人として、その成果について世間の賛嘆を受けたいという気持ちが、きわめて強いのである。


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 イギリス軍は長い遅滞戦闘を終えて、エル・アラメインに腰を落ち着けようとしていた。エル・アラメインは、車両の通りづらいカッタラ低地と地中海に挟まれた地峡で、リビアからエジプトに侵攻してカイロを目指す場合、攻防の焦点となる地勢であった。


 イギリス軍は安定を必要としていた。ドイツのイギリス本土上陸作戦が始まったことに呼応して、エジプトからアフガニスタンにかけての民族運動家や現地将校団が不穏な動きを示したため、イギリス中東総軍は豊富であったはずの予備をオーキンレックの指揮下からもぎ取って、これも貴重極まりない輸送器材を動員して各地へ急派しなければならなかった。トラックや輸送機がイギリス第8軍の手元に補給物資を満載して戻ってくるまで、エル・アラメインの天険が戦線を支えてくれるはずであった。


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 いったん安定してしまうと、戦線は空虚なものであった。


 敵の歩兵が見えても、防御側は可能な限り引き付けて奇襲射撃を加えることを考えるから、小火器の機械的な最大射程がいつも決定的な意味を持つわけではない。しかしこれ以上遠くだと撃っても意味がない、という経験的な距離はあって、ドイツ軍の場合、軽機関銃で1200メートル、小銃で750メートルとされていた。さらに、1000人以下の歩兵部隊が持っている最大の武器である迫撃砲は、各国とも2~3キロメートルの射程を持っていた。従って、互いに相手の射程外に主防衛線を引こうとすると、2~3キロメートルの間隔が開いてしまうのである。


 それは無人の野ではなかった。相手の陣地の配置と動向を探ろうとする偵察隊と、それを阻み、あるいは誤認させようとする前哨隊が腹を探り合い、時に小規模だが凄惨な遭遇戦が起こった。地雷の存在も考えに入れれば、静かなこと以外は危険地帯の条件をすべて満たしていた。


 もし平坦なアフリカの砂漠地帯の戦線に、超長射程の兵器が現れ、これらの陣地構造を射抜いてしまったらどうなるであろうか。弓なりに遠くへ弾を飛ばせば射程が14キロメートルに及び、3キロメートル先から平射すれば(まあ実際には、2キロメートル先の戦車に命中することはほとんどなかったが)ほとんどの戦車の正面装甲を貫通する。そんな兵器が登場すれば、圧倒的な猛威を振るうに違いない。


 アフリカ戦線におけるドイツの88ミリ対空砲は、そのような兵器であった。


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「補給物資は足りているかね。弾薬とか、白い塗料とか」マンシュタインは新型自走砲ホルニッセの88ミリ砲に描かれた白い筋を見ながら言った。砲の周りの白い輪は、太いものが2本、細いものが6本に達していた。


 ホルニッセは、4号戦車の車台に88ミリ対空砲を積んだ対戦車自走砲であった。防弾板に囲われているが天井はなく、砲は左右にはほとんど回らず、仰角は取れるものの対空用の照準装置がないので、対空砲としては使えない。


「対戦車砲弾は足りておりますが、榴弾による間接砲撃の要請が多くなっておりまして、自衛用の弾丸すら残すのが困難になっております」


 中隊長は正直に答えた。ホルニッセ自走砲は試作段階の兵器で、アフリカ戦線に9両の増加試作型が送られ、臨時編成の対戦車中隊に配属されて実戦テストを受けていた。火砲として総合的にあまりにも便利なので、配属された側ではつい色々な任務を頼んでしまうのである。


「それは私の責任だな。榴弾の安定供給については、すでに参謀本部に特段の配慮を要請してある」


 中隊長はかろうじて、上官の前で露骨にいやな顔をするのをこらえた。もちろん彼は対戦車戦闘に専念したいのである。マンシュタインはこんな時、自説を曲げることは決してなかったが、説得の手間は惜しまなかった。


「エル・アラメインの地勢上、徹底的な砲撃の集中が必要なのだ。他の砲兵部隊も追々到着する」


 マンシュタインは参謀本部に対して、砲兵隊-それもできればグラスヒュプファーかヴェスペのような自走砲-の増援と、何よりも弾薬の補充を要求し続けていた。機動の余地がない以上、エル・アラメインの攻防は火力のみで決まるとマンシュタインは考えたのである。


 今回の攻勢は、敢えて北アフリカが夏季に向かおうとするころ発起された。これはイギリス上陸作戦と呼応して、動揺したイギリス連邦軍を一気にエジプトまで追いつめようとするものであったが、直後のソビエトの宣戦によってどちらの動揺が大きいのかわからなくなってしまった。あるいは総統は、イギリス勢力圏すべてをドイツが掌握する可能性を示すことによって、ソビエトの参戦を誘ったのではないか。マンシュタインは最近そんな考えをもて遊んでいたが、ソビエトに対する先制攻撃の利点を放棄して、敢えて先に撃たせることの利益が思い浮かばなかった。彼に出来ることは、命令通りエル・アラメインを突破してカイロに迫る算段をすることだけであった。


 ドイツ軍全体の規模からすれば、リビアに展開している兵力はせいぜい5%といったところである。全戦線が騒然とする中でその小さな部分が攻勢に出たからといって、補給物資そのものが調達できない、ということは有り得なかった。問題は物資の輸送手段にある。最も近い整った港であるトブルクから、すでにエジプト国境を越えてずいぶん深く侵入しているので、トラック輸送の効率が悪くなってきている。いま航空機材はイギリス本土方面にすべて振り向けられているから、陸軍の裁量でなんとか物資輸送の余力を作らないと、マンシュタインの要求する量の弾薬は届かない。これが参謀本部の返答であった。


 マンシュタインは、総統の突飛なアイデアに賭けてみる決心を固めていた。


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 ソビエト軍の侵攻に遭ったドイツ軍は大方の予想に反して、プロイセン王国の故地である東プロイセンを放棄して退却する一方、ルーマニア方面にまず増援を送った。これは当時のドイツの生命線であるプロエステ油田を防衛するための措置であったが、国民はもとより、陸軍の将校団はこの指揮に不満をくすぶらせていた。プロイセン王国以来の地主貴族の末裔(実際には分家を繰り返し、わずかな土地しか所有していない一家も多かった)であるユンカーたちは、東プロイセンに友人や親族が必ず住んでいたからである。


 東部戦線におけるドイツ軍の指揮は、北方・中央・南方の3つの軍集団を束ねる東方総軍のルントシュテット元帥が取っていた。ルントシュテットの将校団における個人的な存在感によって、かろうじて不満の噴出が避けられていたとも言える。


 この重大なときに、ヒトラーは兵器試験場にいた。


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 新型戦車は、泥を跳ね飛ばし、時速35キロで疾走して見せた。専用の砲塔がまだ完成していないために、車体の上には長砲身(43口径)75ミリ砲を備えた4号戦車の砲塔が据えられていた。ヒトラーはにこにこと満足げに振る舞った。


 東部戦線では、4号戦車F型と3号駆逐戦車の43口径75ミリ砲が圧倒的な威力を見せ、弾薬切れになるまではソビエト戦車を寄せ付けなかった。この砲がヒトラーの強い後押しで前線に大量投入されたことは知れ渡っており、前線では「総統砲」と呼ばれていた。


 増加試作型として、4号戦車砲塔を備えた20両の新型戦車が順次完成し、各地の戦車学校部隊に送られてテストされる手はずになっていた。この戦車のための貨車製作を担当するヘンシェル社と、艀製作を担当するマジルス社のスタッフも、走行試験に招かれていた。


 ドイツのほとんどの野戦架橋器材は、20トンまでの荷重にしか耐えられない。23トンに達した4号戦車の最新生産型が通ること自体、すでに無理があった。ましてやこの新型戦車は40トン近くになる予定なのである。既存の橋も、このような重さに堪えられるようにはなっていなかった。ヒトラーはこの荷重に堪える組み立て式の艀を制式化するよう命じて、本体に潜水機能をつけようとする意見を抑えた。


 幅も問題であった。4号戦車は、ドイツ国有鉄道が使っている貨車の幅にぴたりと合わせて作られていた。だからヒトラーは、新戦車の寸法に合わせて早めに専用貨車を生産するよう示唆したのである。


「新型砲については、現在鋭意準備中です」


 説明に当たっている技術士官は、この重大なポイントにヒトラーが関心をほとんど示さないので戸惑っていた。実際、最初の専用砲塔では、43口径75ミリ砲がそのまま使われる手はずになっていた。このころドイツ軍は50ミリ戦車砲と75ミリ戦車砲に相次いで長砲身の新型を導入し、前の型と砲弾の互換性が失われたため、弾薬生産計画は著しく混乱していた。ヒトラーはここに新しい砲を持ち込みたくなかった。


「現在ドイツは戦時下にある。信頼性、量産性、整備の容易さを残し、残りの要求は我慢せねばなるまい」


 ヒトラーは要人たちに聞こえるように言った。具体的な問題に埋没しがちな開発作業の中で、トップが原則を繰り返し吹き込んでやることには、大きな意義がある。若い技師たちはこの「ささやかな」要求に少しがっかりしているように見えないでもなかったが、各研究チームの指導的な技師たちは、この要求に理があると思っているようであった。


「総統、レオパルドの量産が開始されるまでに、どれだけのご猶予をいただけますか」


 ヘンシェル社の主任技術者が勇を振るって質問したが、居並ぶ国防軍の関係者は一様に顔を強張らせた。納期をトップに勝手に緩められたり縮められたりしては彼らの立場がない。ヒトラーはその心の動きを読み取ったように、苦笑混じりの視線をひとわたりさせた。


「この戦車がなくとも、戦争に勝てる自信はある」


 ヒトラーは静かに、決然と言った。


「しかしながら、来年の春にはレオパルドが各師団に行き渡るようになっておれば、非常に幸いである。東部戦線の動きが鈍る冬の間に、十分な生産が行われねばならない。前線は新型機材を常に待望しているが」


 ヒトラーは全員が聞き耳を立てていることを確認した。


「量産試作の手順を省略して、生産ラインを混乱に陥れるくらいなら、3号戦車を増産した方がまだましであろう」


 砲声がヒトラーの言葉を遮った。新戦車レオパルドが、停車しては射撃するデモンストレーションに入ったのである。ヒトラーはもう何も言わず、レオパルドの機動を見つめ続けた。


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 マンシュタインの来訪を受けたとき、ロンメルは何ら不吉なものを予想していなかった。彼のアウグスタ師団は、少々補給物資にぴいぴいしていたが、概ね良い状態で、過酷な攻撃任務も遂行する能力があった。


「済まないが、君を解任しなければならない」


 いきなりマンシュタインに言われて、ロンメルはしばらく無言であった。まったく理解不能な申し出であった。衝突らしい衝突があったわけでもない。失敗があったわけでもない。


 マンシュタインは、話を続ける代わりに、一通の封書を取り出した。ヒトラーから受け取ったもの(第17話参照)である。


「君に落ち度が何一つあったわけではないのだ、将軍。これを読んでもらえば、私の真意も分かって頂けると思う」



マンシュタイン上級大将

 

 この手紙はドイツ国防軍最高司令官である私から貴官に宛てた私信であり、命令書ではない。しかしながら、陸軍総司令官ハルダー元帥およびムッソリーニ統領閣下はこの手紙の写しを所持している。私はマンシュタイン将軍が必要と認めた相手に対し、この私信を示すことを許可する。

 

 枢軸軍がエジプトに前進し、エル・アラメイン、あるいはカイロ近郊に達したとき、貴官は枢軸軍の補給状況を好転させ、必要なだけの弾薬あるいは機材を調達する絶対的な必要に迫られるかもしれない。そのような事態を打開するため、貴官は補給物資の使用率の特に高い将軍について、その任を解き帰国させることが適当だと考えるかもしれない。

 

 貴官がそのような意向を持ったとき、それを実現させる手続は、一般的に定められており、今回の事例を例外と考えるべき理由はない。私はそのような手続に政治家として、またドイツ国防軍最高司令官として介入する意志のないことを、ここに言明する。

 

 

 

                   アドルフ・ヒトラー(署名)

 



 名指ししてはいないが、明らかにロンメルを念頭に置いた文面であった。ロンメルは大戦が始まったころヒトラーの護衛責任者をしており、総統の知己を得ていることを利用して、不利な扱いを逃れようとする可能性があった。この手紙はそれを完全に封じ込めるものであった。


「すでに参謀本部には君を離任させる許可を得て、後任の発令を要請している。君と一緒に、アウグスタ師団の歩兵の半数も帰国させる予定だ。それだけの人数の食糧を浮かせることが出来れば、十分な弾薬を輸送することができる」


 マンシュタインの冷静な説明は続いていたが、ロンメルはもう聞いていなかった。


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「悪いニュースです、首相。オーキンレック将軍が防衛線を後退させ始めました」


 イズメイ大将はチャーチルに不吉な事態を報告した。


「エル・アラメインでは長期の防戦が可能ではなかったのか」


 チャーチルはイズメイを鋭く見た。


「ドイツ軍は我々の予想を越える火砲を短期間で調達して、地雷原を掘り返して前進してきました。ロンメル将軍が更迭された模様です」


「ナイルデルタの防衛は可能かね」


「海軍の支援がありますので、大丈夫だとオーキンレックは伝えてきています」


 エジプトのアレキサンドリア港は、いまや東地中海におけるイギリス海軍最後の要港と言ってもよかった。そこに封じ込められた戦艦は、ナイル川下流域の戦闘に支援を与えることが出来る。枢軸国空軍が基地を前進させて来ても、ナイルデルタの整った航空基地を圧倒して優勢を勝ち得ることは困難であろう。


 イズメイは、ロンドン周辺の戦況が安定していることを説明した。ソビエト軍の攻勢にもかかわらずドイツ軍に目立った動揺は見られないが、英米加連合軍の反撃準備は整いつつあり、1週間もすれば流れが変わり始めるであろう。


「そこが最も問題なのだ、将軍。ヒトラーは攻勢の限界を予見できるくらい、考える時間が十分にあったはずだ。なぜヒトラーはあえてドイツ海軍のすべてをつぎ込んで、上陸などを仕掛けてきたのだ」


 イズメイは曖昧に微笑した。憶断で物を言うことは、チャーチルが最も嫌うところである。もちろんそれは、チャーチル自身が憶断を口にしないということではなかったのだが。


----


 ヒトラーは、ロンメルをローマで出迎えた。


「済まんな」


 右手を差し出すと同時に、ヒトラーは言った。ムッソリーニも同席しての会見である。アウグスタ師団の兵士たちを迎えて盛大な凱旋行進が行われ、ロンメルの首には今もらったばかりの柏葉付き騎士十字章が輝いている。


「有能な軍団長というものは、いろいろなところで必要とされているものなのだ。君も知っての通り、私はフランスに勝利した後、少々気前良く軍団長を昇進させすぎたのでな」


 機嫌を取られていることが分かっていながら、ロンメルは多少感情の鋭鋒を鈍らせた。


「次の任地は決まっているのですか」


 ロンメルが問うと、ムッソリーニとヒトラーは顔を見合わせ、まずムッソリーニが、そしてヒトラーがつられて笑い出した。


「いや、失礼した、将軍」


 ムッソリーニはまだ顔に笑いを残していた。


「噂に聞く通りの人であったもので」


 ムッソリーニはどこかいそいそと右手を差し出し、ロンメルと握手した。


 着席したロンメルが何か言おうとしたとき、ヒトラーが割り込んだ。


「君は装甲軍団を率いることになる。それ以上のことは今は言えん。君にはもっと差し迫った用事があるからだ」


 ヒトラーはゆっくりした口調になった。


「国は戦禍を受けても山や川は残る、と古代中国の詩にある。我々がいくら忙しくしていても、季節は巡り、子供は成長する。ある時期でなければ、子供の心に残らない事柄というのは、あるのだ」


 ヒトラーは机の上の書類挟みをロンメルに手渡した。ホテルの予約証らしいものが顔を覗かせている。


「3日後にベルリンへ帰国したまえ。新しい任務については、そのとき伝えられよう。それまでは奥さんとお子さんに対して、君の成すべきことをしたまえ」


「ひとつ質問してよろしいでしょうか、総統」


 ロンメルは言った。


「総統は最初から、このような形で私を帰国させるお積もりだったのですか」


「人間は出世すると、悪事も働かねばならんのだ」


 ヒトラーは言った。


「君の資質は東部戦線で最も必要とされている。私はこの展開をそれほど意外と思っていないことは認める。さらに言えば、年内にもう一度君の叙勲式典を行うことになったとしても、私はまったく驚かない」


 ロンメルの表情は硬かった。ヒトラーは言外に、近いうちの昇進の可能性はない、と言っているように聞こえたからである。


 事実、その通りであった。


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 クララ=ペタッチは美しい女性であった。ムッソリーニはヒトラーに、その子供を引き合わせた。


「トミオとつけたのや。どっちの国でも通るようにな」


 男の子を抱いたクララは関西弁がわかるわけもなく、きょとんとしている。


「富雄かいな」


 ヒトラーは苦笑した。


「頼むでえ」


 子供の顔を覗き込むヒトラーの背後で、ムッソリーニが真剣な声音で言った。


「あんたんとこだけが頼りやからな」


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 マンシュタインは圧倒的な火力でエル・アラメインの重厚な防御陣地を突破し、ナイル・デルタのすぐ手前で態勢を整えた。


 ベルリンから届く指令は、最近急に弱気になってきていた。マンシュタインはカイロを制圧する自信があったが、エル・アラメインを突破してから補給が滞りがちになっていたし、何よりも空軍が前進してこないので、折角の戦機をイギリス空軍の介入で逃すことが度重なっていた。


 総統はこの状況をどう総括するつもりなのだろう?


 全世界が、それを知りたがっていた。



ヒストリカル・ノート


 この作品に登場するホルニッセは、史実の同名の兵器が積んでいた88ミリ砲より短い、在来型の主砲を積んでいます。このため重心が前に偏らず、史実のホルニッセのように特別に延長された車体を使う必要がありません。ただ砲尾を省スペース型に改める必要があったかもしれず、この場合空軍の88ミリ対空砲との弾薬の互換性はなくなります。


 史実でこれと同じ砲を積んでいたタイガーI型戦車は、やはり時々砲兵代わりに間接砲撃に加わるよう配属先から命じられたようです。この砲は対戦車戦闘のためのものなので榴弾はあまり供給されておらず、いちいち応じていると歩兵などに出会ったとき撃つ榴弾がなくなる危険がありました。


 新戦車レオパルドは、史実で試作に終わったVK3601とほぼ同じ車両です。4号戦車と比べて車体は大きく、装甲は分厚くなっています。ただエンジン出力が重くなった車体を動かすには不足で、主力戦車として高速で長時間走るには、VK3601の側面装甲をもう少し削る必要があるでしょう。


 タイガーI型戦車の初期型には、実際に潜水装置がつけられました。


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