リアルな第二の世界-キャラクター作成
初の小説投稿になります。
拙作故読みにくい点等あるとは思いますが末長く付き合っていただけると幸いです。
うるさいセミの声とテレビのCMにたまに混ざる風鈴の音色が、口の中に広がる西瓜の味が夏を告げていた。
「ホープノア、起動」
目を一度閉じてもう一度開くとそこにあるのは広大な草原。肌に確かに感じる爽やかな風と草の匂い。
俺、櫻井奏多はこの日から住む世界が一つ増えたのだ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「西暦2050年、過去の人たちが思い描いた未来はどんなものだっただろうか。
車は空を飛ばなかった、一家に一台のロボットが家事を全てやってくれるなんてこともない、だが人の思い描いた願いの一つは叶った。医療の発展からもたらされた技術が娯楽を確かに一つ上のレベルへ上げたのだ。
それがこのフルダイブ型コンピューター"ホープノア"。
カプセル型の端末内に座り、ヘッドギアをセットすることで君もネットワーク世界の住人だ!
おおっと!もちろん楽しさだけじゃない、安全面も確保されている。お父さんお母さんも安全安心な仕様だ!
夏場の熱中症や冬場の冷え込み対策にカプセル内には空調を完備。
15時間以上の連続使用も使用者に警告後、停止する。
空き巣や犯罪が心配な人は家のオートロックや監視カメラと接続、登録されていない不審な人物を検知した際に停止なんてこともできる!
気になるお値段はなんと――――」
居間のテレビから聞こえる広告の声を聴きながら俺は部屋でほくそ笑む。
「ふふふ、ついに正式サービス開始だ。学校も夏休み!さぁVRMMO漬けだ!」
フルダイブVRMMO「RordEach:Radiant」
短くした際の表記がRE:RとなるためSNS等では略称としてリアルと呼ばれている。
人と話しているような感覚を覚えるNPC、スキルポイント制で自由に出来るキャラビルド、プレイヤーは自由に世界を飛び回り善も悪も中立もできる様々なクエスト。
とにかく自由度が高い"五感に感じるファンタジー"がウリらしい。
ともかくまずはスイッチオン!キャラメイクからだ!
「はじめまして、新たな冒険者様」
目を開くと目の前には一見すると人のようにも見えるが耳の部分にセンサーのようなものが付いている機械然とした美形が立っていた。
髪はショートカットに切りそろえられており、中性的な服装と顔立ちをしている。
おそらくはチュートリアル用の案内AIだろう。
最近は家電にもチュートリアルAIが付く時代だ。
「はじめまして、チュートリアルのオペレーターさんで良いのかな?」
俺が尋ねると首を縦に振って肯定する。
「はい、管理用オペレーターAI、リア・ルーツです。気軽にリアルちゃんとお呼びください」
「そうか、ルーツさんよろしく。早速キャラメイクを―――「リアルちゃんとお呼びください。」
リアルちゃんは少し不満そうに俺の言葉を遮ってきた。そんなにリアルちゃん呼びが好きなのだろうか。
公式トレーラーでもNPCの性格は多種多様って書いてあったしな…こんな感じで好き嫌いや性格があったりするのか。本当に人と話している感覚があるな。
「…わかったよ、リアルちゃん」
「はい、よろしくお願いしますね。手始めにあなたのお名前を教えていただけますか?」
リアルちゃんと呼ぶと笑顔になって話を始める。
お名前…ってリアルネームじゃなくキャラネームのことだよな?だったらもう決まってる。
オフゲーでも西洋なら俺はこの名前を使うことにしてるんだ。
「ああ、カナタ、カナタ・ブロッサムだ」
「承知しました、カナタ様…データベースに登録いたします。…はい、では次にキャラメイクですね。まずは種族を候補の中から選んでください」
目の前に種族のリストが表示される
「どれどれ…結構種族多いな」
エルフやドワーフ等、ファンタジーの定番らしいのもあれば魚人のサハギンとか機械のロボティーっていうちょっと変わった種族もあるな…種族によってゲーム開始時の初期地点と初期ステータスが微妙に違うのか。
「あれ?初期地点が違うってことはフレンドとプレイしたい場合は同じ種族にしないといけないのか?」
俺はソロでやるつもりだしそんなに困らないが…これフレンドと最初から一緒にプレイしたい人が大変じゃないか?
「その点は心配ございません。種族によって初期地点はいくつかの街から選択できます。そしてどうしてもフレンド間でうまく初期地点が合わなかった時用に全種族で中央都市、セントラルを選択できます。魔物プレイは別ですけどね。」
その辺の救済措置はやっぱりあるのか。
「ちなみに種族といくつかのスキル、初期リスポーン地点は公式ホームページに掲載されています。」
「あ、そうなんだ?キャラビルドとかもゲームやりながら考えるつもりだったからあんまり公式情報を見てないんだよね」
まぁせっかく色々な事ができるゲームなんだ、種族は能力値が平均的な人間を選択っと…
ちなみに人間の能力値は以下の通り。
HP:20
MP:15
STR:8
DEX:8
AGI:8
VIT:8
INT:8
MND:8
LUC:8
うん、比較対象なしに人間の能力値だけじゃよくわからんね!
まぁとにかく全部平均値ぐらいなんだろう。
「種族の次は初期リスポーン地点を選択してください。」
リアルちゃんが無機質な声で次のリストを示してくれる。
人間が選べるリスポーン地点は…
中央都市"セントラル"、和乃国"大和"、機械都市"マシニクル"、魔帝国"サスカンド"(囚人からのプレイとなるためお勧めできません)、ランダムリスポーン
「リアルちゃん、このサスカンドってのとランダムリスポーンってのは何?」
囚人からのプレイ…縛りとかダークなストーリー展開を好む人とかがやるのだろうか。
「魔帝国サスカンドは魔王が治める魔族種、いわゆる魔人の国ですね。魔人とは言っても別言語や人類種とはを全く違う価値観を持った亜人種という考えの方が強いです。ちなみに魔物プレイも可能となっており、そちらについてはーーーーーー」
魔物プレイヤーについて説明してくれるリアルちゃんだが、それよりも気になってしまった事がある。別言語と価値観?モンスターmobもNPCとかと同じようなAI持ちってことか?
敵性mobでも戦って生き残れば生き残るほど強くなる、人類種に対する好感度みたいなものもありえる?
うわっちょっとモンスターを倒すのに罪悪感が湧いてきたぞ。
「とまあ、魔物プレイの説明はこんなところですね。囚人から始まる理由についてはとても簡単です。」
まだリアルちゃんの説明が続いていた。
「魔物種と人類種が絶えず戦争をしており、魔物種に捕まった捕虜から開始するためです。」
システム面とかは見てたけど世界観まで気にしてなかったな、そう考えると人間で良かったかもしれない。
下手にエルフとか魔族とか選んで常識知らずな言動から冷や飯食いとかになろうものならいきなり詰みだ。
「戦争?そりゃなんでまた。」
「ホームページにも載っております。そのくらいの情報でしたらNPCからも聞けますのでゲームにインしてからご確認ください。」
あれ?なんか質問をやんわり断られた?
「こんな風に質問を断ることもありますので、カナタ様はお分かりだと思いますが物に対する感覚でゲーム内のNPCと接触する事はおやめください。というチュートリアルです。」
ああ、チュートリアルか。びっくりした。
にしてはリアルちゃん、微妙に笑ってないか?もしかして今俺おちょくられたのか?
「とりあえず了解。んで、このランダムリスポーンってやつは?」
「完全ランダムで決まる人間限定のゲーム開始地点です。セーフティエリアから始まるとは限りませんのでご注意ください。」
これ《ランダムリスポーン》完全にソロ限定だろう。
「待ってくれ、つまりダンジョンとかから始まる事もあるのか?」
「はい。ちなみにダンジョンで死亡した場合のリスポーン地点はダンジョン内の牢獄やダンジョンで最初にリスポーンした地点になります。」
なにそのいきなり詰みみたいなゲーム…RPGで魔王の城から始まるとか無理ゲー以外何物でもないぞ
ちなみにこれキャラの作り直しによるリセマラも無理だそうです。はい。
でもなぁ…ソロで気ままにやろうと思ってるし別に街から始める必要性もないよなぁ…
「このランダムリスポーンって装備とかはどうするんだ?始まっていきなり敵に囲まれて装備無しは悲惨だし、何か貰えるのか?」
リアルちゃんは首を縦に振って答える
「はい。装備はゲーム開始時に全プレイヤーに対して配布されます。それぞれ取得したスキルに応じて種類が決まります。ランダムリスポーンのメリットはランダムでランク:ノーマルのスキルが一つ手に入る事です。」
「よし、決めた。ランダムリスポーンで。」
「承知しました。では次にスキルを3つ選択してください。」
これまた色々あって悩みに悩んだがスキル構成はこんな感じに設定。
槍術:1
精霊魔法:1
根性:1
俺は平和な国でぬくぬくゲームばかりして過ごしたインドア人間だ。
運動経験がそんなにあるわけでもないし、スキルによる動作アシストがあるにしても近距離での打ち合いには不安がある。
槍なら剣とかよりリーチ長くて使いやすいかな?と思って"槍術"。
そして精霊と契約する事でその属性の魔法や精霊召喚が可能な"精霊魔法"。
んでもって最後のスキルがちょっと変わり種。
HPが0になった時に確率で発動、HP1で耐える事ができるスキル"根性"。
この"根性"が有れば相討ちに見せかけて自分は立ってるとか敵に吹っ飛ばされた後に戦場に戻って「待たせたな」とかめっちゃ格好いい演出が出来る!
まぁそんなギリギリで格好つけてる余裕あんのかって言われたら無さそうだけど。
というか使い道もあるのか怪しいけど。
まぁ1枠くらいネタスキルがあっても良いだろう。
どうせこちとらカジュアルゲーマーよ、へっ。
設定が終わるといよいよゲーム開始だ。
さて、何処に飛ばされるのかな?