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始まりの朝

  僕は19歳の浪人生だ。名前は平野慶多

 今は予備校に通っているが、予備校には友達はいないし、高校の時仲良かった友達とも何となく連絡しづらくて遊ぶことも会うこともない。浪人生なんだから当たり前といえば当たり前かもしれないが、去年までの自分と比べると想像もつかないことだ。

 こうやって毎日1人で過ごしていると自分のことについて考える時間が多くなる。そんな時によく考えるのは、こうやって1人で過ごしたり、一言も喋らず一日を終える こんな自分が本当の自分なんじゃないかと、そう思うのだ。なぜなら去年までの高校の3年間や、中学校、小学校では無理して明るく振舞っていたという自覚があるからだ。

 それのおかげで悩んだことも、1人苦しんだことも多々ある。そのくせに冴えない3年間をすごしたのだから救いようがない。

 そんな高校生活の3年間をみんなに見てもらいたいと思う。


 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 「………………」


 ベットの真横にある机から携帯のアラーム音が鳴り響いている。止めては鳴り、止めては鳴りを繰り返してかれこれ30分になる。正直目は覚めているし、別に起きれなくもない。だが気持ちはまだ寝ているのだと自分に言い聞かせ、布団をかぶり続けている。しかしそろそろ起きなくてはまずい時間に近づいているし、姉達がこのアラーム音がうるさいと怒鳴ってくるのも時間の問題だ。そろそろ心を決めよう…と思ったところでいつも母が起こしに来る。


「ケイ! あんたほんといつまで寝てんの?今日入学式でしょ いつもより遅いからって寝すぎ 早く起きなさい」


 本当にタイミングの悪い人だ 起こしに来なきゃ自分で起きてたし人に起こされるのは好きじゃない。だいたい無理やり起こしてくるから起きる気力もなくなるのだ …とブツブツ心の中で文句を言いながら体を起こす。


 これだけは覚えていて欲しい

 "朝は苦手"だ


 寝起きは最悪に悪い 朝ごはんもまともに食べれないし、何より明るく振る舞えるほどの余裕もないから友達に対しても本当の自分を隠せない。ちょっとしたからかいすらもいなすことが出来ず、イライラが顔に出てしまう。


 だがそんなことを言っている余裕もないからブツブツ文句を垂れ流しながら新しい制服に袖を通す。母はまだ僕がこれから10センチは成長すると思っていつもよりワンサイズ以上も大きい制服を買った。

たしかに何センチかは伸びるだろう、だが10センチとなると話は別だ 自分的には伸びてあと5センチだろうと思う。中学の時点で成長するスピードは落ちていたし、何よりうちの家族にそんなに大きい人はいない。

父は平均以下の身長だし、母は女性の平均より少し大きいぐらいだ。姉達も小さいし、現時点での僕は背の順で並んで半分より少し前当たりだ。

母は僕に過剰に期待しすぎるとこがある。勉強に対しても身長に対してもだ。正直いってその期待に応えたことは今の今まで1度もない。その程度の男に期待し続ける母が時に可哀想にも思えてくる。


 時計は8時半を指していた。今日は4月8日 僕がこれから3年間通う 北涼高校の入学式の日だ。朝ごはんはヨーグルトで済まし、家を出た。中学が同じだった奴らと共に登校することを約束していたので最寄りの電車の駅に向かう。

 

駅に着くと中学の時からの親友の加藤大希が先に駅に着いていた。お互い頭のネジが2本も3本も抜けているからか、1度も同じクラスになったことないのになぜか気が合う。こいつは朝に僕が機嫌が悪いことを知っているので無理に笑顔も作る必要がなく楽だ。軽い挨拶を済ませると、あとは喋らなくてもいいかと思っていたが、こいつはそうはいかない。なぜならこいつは朝機嫌が悪いことを面白がってくるやつだからだ。


「なあ、けいた」


「ん?なに?」


「怒ってる?」


 始まってしまった……僕が1番嫌いな絡み方だ。『怒ってない』と返せば『いや、おこってるじゃーん』となり、『怒ってる』と返せば『なんで怒ってるのさぁ』となるさらにイライラを増大させる最悪の絡みだ。こいつは僕がこれを1番嫌っているのをわかってて始めてくる。しかもこの朝という平野慶多という人間にとって最悪の時間に……!

 正直この絡みの対処法はいつになっても分からない。無視するのが正解なのか、好きにやらせるのが正解なのか、とりあえずはそれをやめろという意思表示を含めた 必殺『嫌な顔』でこの場を乗り切ろうとした。すると


「え?やめて欲しいの? やっぱおこってるってこと?」


「だりぃ…………」


 そんなやり取りが結局電車が来るまでの間の10分ぐらいの間続いてしまった。なんだか高校生になっても変化がない気がして、またも中学と同じ冴えない3年間が始まってしまうのかと思うと不安でしかなかった……。






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