源光物語
純粋な女の子は、正義だ。
僕がその結論に至ったのはつい最近の事である。
もっと早く気付けよとか、そんな当たり前の事に今まで気付かなかったのかと言われればそれまでかもしれないが、今までの僕は圧倒的恋愛経験の少なさで視野が恐ろしく狭くなっていたとしか言い訳の仕様が無い。
だが今は四人の女の子に告白をした、あるいはされた事により僕も少しは成長したと言ってもいいのかもしれない。
「で、誰にするか決めましたの? 源くん」
「別に無理にアタシを選ばなくていいんだからな、先輩」
「光~。男ならスパッと決めちゃいなさいよ、スパッと!」
「ふふ。大変ですね、お兄ちゃん♪」
成長したと言っても……ごめん、全然言えなかった。
酒呑童子を倒して帰った後、僕と紫ちゃんは様々な言葉をかけられた。そして、その中でも群を抜いておかしかったのは葵のこんな言葉である。
『どうせ一週間分の荷物持ってきたんだし、明日は日曜だからお泊り会やろうよ~』
どこまでいっても能天気な奴だとその時は思ったが、今思い返してみればあの時もう既に葵は紫ちゃんの変化にいち早く気付いていたのかもしれない。
その夜には女子限定パジャマパーティーが開かれ、新生紫ちゃんのお披露目会が有ったとか無かったとか。数刻前まで鬼と死闘を繰り広げた僕はと言えば、一人寂しく別室に隔離され涙で枕を濡らしながら夜を明かした。
今日になっても早朝からどんちゃん騒ぎが続き、女性陣は六条邸のVIP待遇を思う存分満喫し、僕は使用人さんに連れられて六条さん、もとい宮須さんのご両親に強制面会させられた。そして先代のお母様からは「娘とはどんな関係ですか?」と問い詰められ、お父様からは「娘を末永くよろしくお願いします」と頭を下げられる始末。普通、逆じゃないですか?
唯一救われた事と言えば、間をぬって実家に連絡した際に親父に手放しで褒められた事だ。普段はどうしようも無い親父だが、こういうのは普通に嬉しかった。
そのまま夕方になりこのまま解散かなーと思っていたら、最後に事件が起こった。そして、その発端となる一言を発したも言うまでも無く葵である。
『そんでさ~。結局のところ、光は誰が一番好きなの?』
そんな「今日の夕飯何にする?」みたいなノリで発言していい言葉では決して無かった。特に僕に好意を寄せているともうはっきりしている他の三人の前では。
こうして僕は祭りの壇上に引っ張りだされたのである。
「それで、決まりましたか? 源くん」
「いや、アタシは先輩に選ばれなくても、うぅ……」
「は~や~く~、は~や~く~」
「えへ、ドキドキしますね」
だからみんなそんなにこっちを見つめてプレッシャーかけないでよ! 本当にこっちは心臓がはち切れんばかりに緊張しているんだよ!?
正直、答え自体はもう決まっている。でもそれを彼女達にどう伝えていいか、どう伝えたら納得してもらえるのかが分からなかった。僕の今のこんな姿を見たら光源氏は、はたまた酒呑童子はどう思うだろう? きっと苦笑いでもしているんだろうな。
でも、結局のところ僕は自分の言い方でしか彼女達に伝えられない。だって彼女達が待っているのは他の誰でも無い、僕自身の答えなのだから。そう、だから。
「僕は、皆が、ここにいる全員が好きだ!」
震えながらも僕自身の言葉で彼女達の好意に応える。それが最適解なのかは分からない。でも、まぎれもなく自分自身で導き出した解答なのだから。
目の前の少女達は僕の回答時間ギリギリで出した答えを聞いて、揃って目を合わせた。きっと呆れているのかもしれない。怒っているのかもしれない。ひょっとしたら、もう口もきいてくれないんじゃないかって不安にもなった。
けど、同じくらい信じていた。きっと全員笑ってあっさり許してくれるって。だって僕達は自分を思い遣り、相手を思い遣る関係を築いてきたから。それがきっと人を『愛する』事なんだって、知っているから。
「ふふふ、やっぱり源くんはどうしようもない女たらしですわね」
「わ、私は別に構わないぞ。妾だろうと愛人だろうと」
「や~い、このすけこまし~」
だからこんなに温かく返されてしまうと、涙が出そうになってしまうんだ。そうして、視界に入ってきたのは最初から最後まで笑顔でいた少女。恐らくこの結末を最初から知っていたであろうとても優しい、僕にとっての若紫。
「みんな幸せにですね、お兄ちゃん!」
なあ、光源氏。見ているか、この光景を。
僕はあんたの様に生きようと思ったけど、まさかここまで女たらしになるとは思ってもみなかったよ。でもさ、全然嫌な感じはしないんだ。むしろやる気がみなぎってきた。
でもさ、あんたの道をそのままは歩まない。だって僕は『源 光』だから。これは僕の僕による僕だけの物語だ。あんたの血を引いているのは利用させてもらうけど、僕はあんた以上のハーレム人生を歩んで行って見せる。
そして、後世にはきっとこんなタイトルで残るのだろう。『源光物語』ってね。
これにていったん終了でございます。
……最後までタイトル詐欺っぽかったので、ちゃんと紫ちゃんを育てるイチャラブストーリー書けやオラァン!っていう声がありましたら続きを書こうかと思いますが(;・∀・)
でもそんな物語に最後まで付き合ってくださり、またたくさんの評価やブックマークもして頂き、書き手としてこれ以上の喜びはありません。
次回作についてですが、たまにはなろうテンプレートにしたがっての主人公最強系ファンタジーか、バトルもなんもない純粋な現代恋愛を書こうと思っています。
また宜しければ新作をお付き合い頂けると幸いでございます。
ではでは、有難うございました!




