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Last Quest 風を求むもの  作者: 山原喜寛
弐章
8/8

3 Lowell's ambition ロウエルの野心

 頭初、戦況はあまり(かんば)しくなかった。それでもなお持ちこたえられたのは、リュウタが作戦の指揮をとり、兵たちが善戦をしてくれたからにほかない。

 ただそれも時間の問題であった。ロウエル率いるカロ大帝国は、いままでにない戦い方をしてきたのだ。これまでは、馬を使った騎馬戦が得意で、この騎馬隊に前回の大戦では苦戦をしいられた。

 ところが今回は騎馬隊の姿はどこにもなく、遠方攻撃が得意な魔法使いと火器を持った歩兵を配置し、徹底的な遠距離戦を行なってきたのだ。

「いったいどこからこんなものをもってきたのだ。」

 リュウタがぼやいていると、リュクをつれたリュウキが入ってきた。

「戦況は?」

「よくない。相手は、前回と違って徹底的に遠距離をとって戦ている。こちらが予想していた騎馬隊は一隊も出てこない。」

 リュウタは淡々と答えた。

「で。なぜ、子どもをつれて入ってきた。」

 怒り気味に聞かれて少しリュウキは戸惑ったが、こちらも淡々と、

「新しい戦力を連れてきた。」

 と答えた。

「子どもがか、それなりの理由があるんだろうな。」

「あのジイヤをだまらせた。と言えばわかるか。」

「とりあえずはわかったと言っておく。今は一人でも大きな戦力がほしい。つかえるんだな。」

「使える。それに私に良い考えがある。」

 リュウキは、自信ありげにニヤリと笑った。



 ロウエルは、本陣で祝杯をあげていた。

「はっはは。ヘイガスの者どもはさぞ驚いていることだろう。」

「殿下、我が軍の活躍により、相手は兵力が15万7千から12万になっております。一方我々は、19万。5千程の兵を失いましたが、我が軍の快勝は火を見るより明らかかと。」

 ロウエルはさらに高笑いしながら嬉しそうに杯を飲み上げた。

 その時、ロウエルの後ろの方で黒い影が動いた。

「首尾は上々のようだな。」

「お前たち後ろへ下がれ。」

 次々と下がっていく中、一人の部下がロウエルを見ると顔がひきついているように見えた。しかしそう言われたのでなにも聞かず、本陣を立ち退くことにした。


「なにもかも、あなたさまのおかげで。」

「わかっていればよい。お前は私の言う通りにしていればいい。必ず勝利をくれてやる。」

「ありがとうございます。」

「ただ相手もばかではない。そろそろ遠距離攻撃に対応してくるころだ。そこを突いて騎馬隊を突入させろ。」

「わかりました。仰せのままに。」

 ロウエルがそう言い終わると、黒い影は出てきた時同様に、“ふっ”と消え去った。


「ふぅ」

 と、ロウエルが大きなため息をついた。

「(あの方と話をするのは気がつかれる。が、今に見ておれ、ああやって大きな態度をとれるのもいまのうちだけ。ヘイガスさえ落としてしまえば、こっちのものよ。)」

 ロウエルは手にしていた杯を一気に飲みほした。

 その時、本陣の入口がゆれ、人が入っていた。

「誰だ。人払いをしたはずだが・・・」

「そう言うことでしたか。なぜここが、一番奥にあるとはいえ周りに一人も人がいないのか、理由がわかりました。」

 外套で頭をかくした男2人がそこに立っていた。男といつても一人は子どものようであるが。

「そんなことどうでもいい。おまえたちは、敵か味方か。ー体誰なんだ。そもそもどうやって入ってきた。」

 ロウエルは気が動転したのか、助けを呼ぶのではなく矢継ぎ早に質問をした。

「まず、敵か味方かと聞かれると敵だと答えねばなりません。そして、誰かと聞かれると・・・」

 背の高い男の方が、外套を頭からとると、ロウエルは見たことのある顔にハッとした。

「リュウキと名のればわかってもらえますかな。」

「そんなはずはない。お前はあの城の中にいる・・・」

「そう貴方の中では、私は城の中にいるはず。だが、現実にはここにいる。これは紛れもない事実。おっと誰か助けを呼ぼうとしてもだめですよ。貴方が、助けを呼ぶ前に私の呪文の詠唱が終わってしまいますからね。」

 ロウエルは自分の目論みが足元から崩れていくのを、ただその場で立ちつくし感じるしかなかった。

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