1 The God in Earth ?! 地上界の神?!
「汝は風を求む者か……
汝は風を追求する者か……
汝は風に想いを馳せる者か……
汝は……
かつて風は世界を征した
しかし
人の世に成り
今や
風を恐る者なし
汝は……
汝は風を見い出す者か」
何もない大地。花も動物も、ただ、重苦しい空と茶色く焦げた地面、あとはその二つを分ける地平線。
ここは昔、地上界と呼ばれていた。この世界には大きく分けて天界と地界とがある。そしてこの地上界はその中間、狭間に位置していた。
「……」
ふと気付くと、いつの間に現れたのだろうか一人子どもが立っていた。ちょうど幼稚園を出た頃だと思われるが……
「親父が来るはずだったのに……何で僕にこんな役が回ってきたんだろ。」
リュウキ、そう彼はリュウキと呼ばれていた。だが名前などどうでも良かった。この大地に、この子の名を呼ぶものは誰一人いないのだから。
「しかし、普通僕を選ぶ?上の考えていることは分からないよな。そもそも、あの時に親父があんなことにさえならなければ、僕はこんなことしなくても良かったのに。」
あの時、そう何もかもあの大戦がこの世界のすべてを変えた。
この時より遡ること約千年、地上界は花々が咲き乱れ妖精が暮らす穏やかな楽園であった。誰もがこの楽園を永遠不滅、未来永劫だと思い、疑わなかった。しかし、永遠に平和が続く訳はなく、この平和にもやはり終わりを告げるときがきた。
それは、本当に些細なことであった。本当に……、しかしこの出来事により天界と地界の均衡が崩れ、至上最大、最悪の大戦へと変化させていった。天を焦がし地を裂き……、この大戦によって各々の死者は数億を数えた。
そう、これが後の世に長く語り継がれることになる神魔大戦である。
だが、この大戦でもっとも被害が大きかったのは天界でも、地界でもなかった。両方の中間にあった地上界、ただ狭間にあったというだけで、今まで楽園であった地上界は、妖精達の住む世界が妖精界として分離し、残った地上界は植物も枯れ果て何も育たない死の大地となってしまった。
しかし天界と地界は考えた。このまま大戦を続ければいずれこの世界は消えてしまうと。そして、天界と地界は休戦条約を結ぶことにより長い大戦に終止符を打つことにした。
休戦条約にはこう書かれている。
「……地上界については、
双方から代理人を出し、均衡を保つよう努力すること。
以上、この条約は天、地どちらかが
地上に関与しない限り永遠に有効とする。」
そしてリュウキがこの地上界に送られた。天界の代理人として、
「しかし、聞いていたけど、本当に何もないとこだよね……まっ、この方が良いんだけどね。」
天界が代理人としてリュウキを選んだのは、ある意味、選択を誤っていたかも知れない。
しかしこの時、リュウキの父以外でこの仕事をできる者は天界ではただ一人、リュウキだけだった。
だが、もしもこの時、天界がリュウキではなく他の誰かを選んでいたとすれば、一万年もの後、こんなことにはならなかっただろう。そうこんなことには……