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8 第三回メンズ・オークション開場

 西暦二八二五年四月十六日。東京都文京区にある東京サークルドームで第三回メンズ・オークションイベントの開場が始まった。ドーム型の会場である巨大施設に続々と女性達が集まってくる。上空からでも長蛇の列が確認出来る。

 

 すでに内部のフードコートやファッションコーナーは人だかりで賑わっている。女性達の熱気で溢れ、どことなく甘酸っぱさが漂っていた。

 

 会場が熱気で包まれる中、関係者用の控室に幼い容姿の女性が鏡を見ながらメイクをしていた。ピンクのツインテールにホワイトのシャツとブラックのカットジョーゼットオーバーオール。シンプルながらも可愛らしさを演出している。


「はぁ……何でこの仕事受けちゃったんだろう」

 

 一度はやると決めたことでも、本番直前になると気が重くなる。

 

「この服で良かったかな。変に目立つと叩かれるし。ねぇマネージャー」

 

 後ろを振り返るが誰もいない。


「そっか、もういないんだっけ」

 

 女は重い腰を上げて控室を出る。

 女の名前はパステル・パレット。元アイドルだ。主催であるSWHからの依頼で司会進行役を引き受けた。一度干された彼女にとって断る理由はなかったが、メンズ・オークションの司会進行役は誰もが羨む憧れの役職で、嫉妬の対象にもなる。パステルはそのことをよく理解しており、気が滅入っていた。

 

 パステルはステージのある巨大フロアに足を運んだ。中央に大きなステージがあり、それを取り囲む形で客席が広がっている。一階席、バルコニー席、二階席に続々と女性客が並んでいく。彼女にとってこの熱気は懐かしくもあり怖さもある。

 

 三人の入札者が入場するステージ席も設置されている。北入口、東入口、西入口と三か所から伸びる通路。モデルが歩くようなランウェイだ。その先にバルコニーがあり座席が設置されている。北にはピラミットを模った座席。東には紅葉をあしらったソファ。西にはパソコンデスクとチェアがある。パステルはそれを見て三年前自分が入札者側として参加していたことを思い出した。


「はぁ……」

 

 極度の緊張と不安がツインテールの髪を引く。そのどんよりとした感情でパステルは指定の関係者用バルコニーに向かう。そこには、かったるそうにしているソフィアがいた。


「パステル、こんちわー」

 

 ソフィアは科学者兼部長で他にも様々な分野に手を染めている。イベント前半の「アンドロイド・ランウェイ」も彼女がプロデュースしている。

 パステルは、友人であるソフィアの顔を見てホッとした表情を見せた。


「あー良かったソフィアがいて安心した」


「安心するのはまだ早いわよ。これ乗れる?」


 ソフィアの指さす先には、電動立ち乗り二輪車がある。


「何かこれ見たことあるある」


「これで空を飛ぶのよ。空飛ぶ電動立ち乗り二輪車、名前はスカイパージよ」

 

 スカイパージは、ソフィアの言葉に合わせて熱を放ちながら宙に浮く。

 

 パステルは泣きわめいて拒否したが、開演十五分前だったので急いで練習をした。リハーサルが無いことを恨みながら持ち前の当たって砕けろ根性でスカイパージの乗り方を覚える。そんなパステルの熱意を見て、ソフィアは親指を立ててグッジョブとエールを送った。


 開演の午前十一時十分。客席は満員御礼。

 関係者用バルコニーにアメリカ本社SWHの代表取締役社長のギフティ・トルゲスがいた。オレンジベージュのショートボブ、少し緩んだ髪型を黒いスーツが引き締める。傍には男性型アンドロイドを二体連れており、重々しい空気を放っていた。ギフティはヴィーナとソフィアの妹だが、立場上は二人の上司にあたる。

 

 辺りが徐々に暗くなり女達のざわついた声が響く。

 そして第三回メンズ・オークションは華々しく開演した。

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