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76 天使の都 タイ・バンコク

 天使の都タイ・バンコク。

 発展途上などという言葉は遥か昔の話で、東南アジア屈指の大都市にあたる都である。熱帯の気候は、年間を通して三十三度前後、最低気温は二十度前後と常に暑い。他国の最先端技術を施された大都市同様、気温管理や気候制御の機能はあるのだが、温暖化の波は避けられず、気温の現状維持程度に留まっている。そんな熱が沸き上がるような都市だが、バンコクの中心部にあるチャオプラヤー川では、チャオプラヤー・エクスプレスなる交通機関や、水上マーケットの交流が盛んで、火照った街に、涼しさ、潤いを与えている。その他の名所と言えば三大寺院。通称エメラルド寺院と呼ばれるワット・プラ・ケオ。黄金の仏像が大迫力のワット・ポー。夕陽の反射で美しい暁色を魅せてくれるワット・アルン。

 そんなバンコクの中心部に、クレイとセラの実家がある。


 一行は観光がてらレトロな街並みを徒歩で進み、クレイの実家に着く頃には日が落ちていた。一面広がるグリーンを進むと、クリーム色の屋根がひしめく豪邸が見えてきた。サンデッキ、屋外プールなどもあり、完全に一般人が住む家ではなかった。ゆきひとがクレイとセラの出身国を知ったのはつい最近だが、お嬢様育ちだと感じとったのは豪邸を見てからだった。


「ん、何かわんさかいるな」


 ゆきひとの視界に大勢の女性達の姿が映る。クレイとセラの親戚が大半だが、その中で一際異質な存在の人物が混ざっていた。


「やっほー!」


 フリージオがゆきひと達に向かい手を振っている。

 クレイは顔に手を当てて一瞬固まった後、小走りでフリージオに詰め寄った。


「何で、こっちに来てる!?」


「何でって……僕、ゆきひとと仲良くしたいから」


「今は、私の……いや何でもない」


 クレイは苛立ちを隠せないでいた。

 クールなクレイしか知らないゆきひとは、キョトンとしてしまう。

 そんな戸惑っているゆきひとの服を引っ張るセラ。相変わらず具合が悪そうに咳き込んでいる。

 ゆきひとは「挨拶した方がいいんじゃない?」とのメッセージだと受け取り、セラを連れて親戚一同の前まで歩いていった。親戚の人数はざっと見る限りでも十人以上はいる。その迫力に圧倒されながらも自己紹介を試みる。


「えっと……俺の名前は大桜ゆきひとです。よろしくっ。今はクレイの……」


「えっと! 私の友人のゆきひとだ、よろしく!」

 

 クレイはゆきひとの言葉を遮った。


「友……人?」


「ゆきひと……私の親戚の名前は聞かなくていい。どうせ覚えられないだろう」


「まぁ」


「それと……私達の関係性は、わかっているな?」


「……はい」


 いつものクレイではない。

 身内の前だとこうなるのか。

 それともフリージオがいるからなのか。

 何にせよ、婚約関係なのは黙っておこうとゆきひとは思った。

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