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37 紅咲く肌を紅葉狩り

 足を運んだのはブラジリアンワックスのお店。

 予約が必要で脱毛サロンに行くという提案があってから数日が経っていた。

 萌香とヴィーナは互いに目を合わせた後、外からお店の内装を眺めた。

 一見、ただのエステティックサロンのよう。

 美しさを磨く女二人は脱毛に余念はなかったが、ブラジリアンワックスは初体験。足が一歩進まない。今時無痛で脱毛出来る所などいくらでもある。なのに何で肌に激痛の走るブラジリアンワックスをやらなければならないのかと、萌香は思っていた。


「二人共……入らないんですか? 俺行きますよ」


 ゆきひとは女二人を急かした後、店内に入っていった。

 萌香も意を決して中に入る。


 萌香が受付に向かうと、ゆきひとはサロンスタッフと話し終えて既に奥の方へと行ってしまっていた。 

 脱毛サロンに行き慣れているのは見ればわかるが、ここは男にとっては八百年後の未来。何故平然と脱毛へと向かえるのか、萌香は不思議で仕方なかった。この男は只者ではない。更に男の事が欲しくなった。


 まず最初にカウンセリング。

 小部屋で萌香はサロンスタッフから様々な説明を受けた。

 その中で聞き慣れない言葉があったので話を止める。


「VIO脱毛ってなんでしょうか」


「ハイジニーナ脱毛といって、ぶっちゃけ下半身の脱毛ですね」


「……!? 先程の殿方もお受けに?」


「はい」


 不敵な笑みを浮かべるサロンスタッフ。

 萌香は想像してしまい顔を赤くしてしまった。メンズ・オークションの性の話題の時と同じ反応。「落ち着け、萌香」と自分に念を押した。何度も何度も念を押しては顔を赤くしていった。少し経って突然何処からともなく寒気が走った。原因がわからず部屋を見渡した。


「どうか、されましたか?」


 萌香はサロンスタッフの目を見る。

 正気が感じられず死んでいる。寒気の原因はこの目だ。理由は考えなくてもわかる。恐らくこのサロンスタッフは、男の脱毛をしたかったのだ。


 萌香は下着を脱ぎベットに横になる。サロンスタッフの正気のない目が、彼女の恥ずかしさをやわらげた。胸部の白雪のような桃二つをタオルで隠し、じっと茂みを抜かれる瞬間を待った。

 萌香の頭は色んなことで埋め尽くされている。

 今、男は何処を脱毛しているのだろうか。あんな所やこんな所を想像してしまう。今、わたくしは下半身を露出している。やっぱり恥ずかしい。今、サロンスタッフは死んだ目でわたくしを見ている。言いようのない恐怖心を感じてしまう。

 そんな時だ。


「あぁぁぁん! ダメダメダメッいやぁぁん!」


 ヴィーナの声だ。

 もう既に脱毛を受けているのだろう。

 萌香のいる小部屋まで聞こえてくる。

 「なんてエロい声で泣きやがるんだ」と萌香は驚愕した。確かに痛いのかもしれない。しかし普通に脱毛を受けてあんな声が出るのだろうか? 

 ヴィーナの喘ぎ声を聞いたら、きっと男は燃え上がってしまう。


「もう抜いていますが、痛みを感じませんか?」


「えっ?」

 

 サロンスタッフの言葉に萌香は戸惑った。

 あまり痛みを感じなかったからだ。

 考えごとをしている間、既にある程度毛は処理されていた。


「いたっ」


 萌香の反応はこんなものだ。

 もしヴィーナの声をゆきひとが聞いていたら、気持ちがヴィーナにいってしまうかもしれない。負けられない。萌香は無理にでも大声で喘ぐことにした。


「いやあああぁぁぁぁっん! らめぇぇえぇぇえぇぇえぇっ!」


 サロンスタッフがドン引きしても関係ない。メンズ・オークションの号泣動画がブログサイトでまとめられた時に比べたら大したことはない。男の気持ちを掴む為に出来ることは何でもやってやる。今までの努力を無駄にしたくない。萌香は茂みを抜かれる度に果実を揺らした。


 一方のゆきひとは、ベットの上でダイナマイトシックスパックを惜しげもなく見せつけていた。もはやこの時代に来てから三度目の全裸、羞恥心などはない。興奮しながら脱毛しているサロンスタッフをよそに、男はナノマシンのミュージックBOXを利用し、スポーツミュージックを聞いていた。つまり外部の音は聞こえておらず、萌香の努力は無駄に終わった。

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