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30 黄金の摩天楼

 太陽の熱と光が降り注ぐその都市は、他の国や地域に比べて乾燥している。この国についてまず思い浮かぶのは三大ピラミッドだろう。まだナイル川にワニは生息しているのだろうか? そんなことを考えながら、ゆきひとは暑さに耐えていた。ターバンに白服のカンドューラ。完全なる男装のアラブ衣装だ。

 付き人のクレイやセラもアラブの衣装を身に纏う。

 街の建物は白、灰色、茶色、黄土色などを基調としている。所々に木が植えられており、思ったよりも緑で溢れている印象を受ける。ただこれは思ったよりなので絶対数は多くない。東京やパリと違い街全体の空調は管理されておらず、日の光は容赦なく降り注いでいる。

 旅慣れしているクレイは疲弊している様子を見せないが、セラは少し具合が悪そうにしていた。街中を平然と闊歩しているアラブの女性達が超人に思えるほど、気温が高く暑かった。それよりも気になるのは、アラブの女性達が皆お洒落なデザインのビジャプを被り、モデルのような出で立ちだということ。ガチガチのアラブ衣装で着飾ったゆきひと達は浮いていた。


 そこはエジプトの中心都市カイロ。向かうは近代化が進んでいる西地区。交通機関を使ってもよかったのだが、せっかくなので街並みを見ようと徒歩で進んだ。ナイル川に架かる橋を歩く頃には日が落ちていた。

 西地区に入ると街並みは一変、所々巨大スクリーンがビルに設置されており、広告CMが流れていた。七色に点灯する電光掲示板。アメリカのラスベガスと見間違う程の巨大カジノタウンがそこに広がっていた。

 目指すは摩天楼、オベリスク・ライオネル。そこに二人目の結婚相手、タンナーズ・ライオネルがいる。タンナーズを二番目に選んだのは、事務作業続きで体を動かしたいという理由からだ。深い意味は無い。

 本来タンナーズとの結婚生活は一か月間の予定だったが、入札者として女帝が参加した第二回メンズ・オークションが失敗に終わった為に、急遽二か月間ということになった。

 

 黄金に輝く摩天楼が見えてくる。タンナーズはここにいそうと直感でビビットくるような外観だった。タンナーズはカジノを経営しており、エジプト国内の有名度といえばフランスで有名なフリージオと変わらないレベルだと思われる。

 摩天楼の入り口でゆきひと達を二人の女性が出迎えた。黒服のアバヤを戦闘服にアレンジした格好をしていた。

 黄金の棺の柄をしたエレベーターのドア。中は透明なガラス張りで、カジノ施設が一望出来た。ガチャガチャと鳴るスロットマシーン、ポーカー台に流れるトランプのカード、金色に光る珠が円盤に円を描いて数字のマスに行き着くルーレット。カジノゲームだけではなく、飲食店で食事を楽しむ女性達の様子も、上昇するエレベーターの中からよく見えた。

 

 エレベーターから降り、赤い絨毯の通路を進む。

 ピラミッドが上下に組み合わさった模様のドアが目に入る。謎の迫力があった。

 案内役の二人がドアを開らくと玉座に佇むタンナーズ・ライオネルがいた。

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