298 THE EXTREME FINAL BATTLE
突如戦闘状態に移行し、オメガオリオンが飛行形態に変形した瞬間、ブュゥゥゥウウウゥウゥウゥドォォオンン!! ……と、ジェットを飛ばして俺達プレイヤーに突っ込んで来た。
そのジェットアタックで、ヒジカタはマップの外にはじき出された。
「ウケツケジョーが戦闘不能になりました」「オジョーが戦闘不能になりました」と、チャットが流れた。
俺はドンマイが送り、皆もドンマイのチャットを送った。
「初見殺しかよっ! このクエスト、乙制限は?」
「制限は無い! 武器のエネルギー切れでクエスト失敗だ!」
ハルガの声がした。
ガンナー二人が戦闘不能になった事で、制限時間が四分の一になった。
……とは言っても、まだ時間は二時間以上ある。十一人参加してるから、そんなに時間があるのかと思ったら、時間減少スピードが滅茶苦茶早い。十一人参加してるから十一倍の速度で時間減少してるのか。
オメガオリオンのジェット飛行から周囲の水がうねり出して、足元の海水が流れるプールみたいになった。それからオメガオリオンは天井部分を飛行してガンナーですら届かない距離を滑空していた。まるで、戦闘エリアに降りて来ないスカイ・ティラオスを彷彿とさせる戦い方だ。
「あのラスボスにどうやって攻撃を当てたらいいんだ?」
水面からノーマルクラスのモンスター達が、湧き出て来た。
「ユッキーさん!」
バブルの中にいるスト君の声だ。
「恐らくオメガオリオンは、まだ本調子ではないんだと思います。水面から出現するモンスター達はオメガオリオンとリンクしている可能性が高いので、そっちを優先的に倒していけばオメガオリオンにもダメージがいき、いずれオメガオリオンもバスターさん達の目の前に降りて来るはずです」
「わかったぜ!」
なる程、ヘキサトリトンの能力と同じで、マップや別モンスターとダメージ共有しているのか。
大剣の俺、ライトライフルのオジサン、刀のハルガ、ジェットofランスのNANA、ハンマーのウサギちゃん、シールドandランスのTEO、ツイスターのセイカ、パヒュームロッドのREI、片手剣のセカンド、それぞれが序盤のモンスターを相手に奮闘した。
二号はセイカの傍にいて、ラスカルはセカンドの肩にしがみつき、ただただ戦闘を眺めていた。二号もラスカルも、ただ戦闘を見ていて何もしないお供だ!
オメガオリオンとコスモリウムが共鳴して作り出された、飄獣ボスジャッカル、毒獣ボスハイッエナ、痺獣ボスヒョー、眠獣ボスヤァバ、風馬エアコーン、地魚アストドン、疾風イーエンと、懐かしの面子を次々になぎ倒していく。
俺達の武器は、エンドコンテンツを周回して作り上げた一品なので、序盤モンスターは瞬殺もいい所だった。シナリオの経緯を見た後だと、モンスターをなぎ倒す事に心が痛む処ではあるが。
オメガオリオンは、上空から六色のビーム放って援護射撃をしてくるので、簡単すぎる難易度にはなっていない。それに加えて、敵味方共に足場が流れる水面ということもあって、マップギミックに対応しながら戦うのが中々難しくなっている。
これからもっと難易度は上がってくるだろうが、メインクエストなのでクリアできない難易度にはならないはず。
時間制限や通信障害は気になるものの、戦闘自体はまだ気持ちに余裕があった。
一通りマップ内にいるモンスターを倒すと、電犬ライロウ、水猫バブミケ、火猫ファイニャ、氷犬アイスワンが出現。
ノーマルクラスの後半で戦う奴らだが、まだまだ俺達の敵ではない。
「……てか、ガンナー二人が帰ってこない」
ヘビィマシンガンのウケツケジョーと、魔導弓のオジョーは何処へ?
「ユッキー君、戦闘不能になると別マップに送られるみたい」
「NANA師匠、了解です!」
足元の水面に、ウケツケジョーとオジョーのいる増加したマップの戦闘状況が映し出された。
二人は、睡麻蝸牛フリャフリャと大陸歩鯨イビルゲイの二体と戦っていた。
俺と師匠の会話中に、電犬ライロウ、水猫バブミケ、火猫ファイニャ、氷犬アイスワンが倒された。
天上付近にいるオメガオリオンを確認すると、やはりダメージ共有しているようで、ダメージの表記が見えていた。湧き出るモンスター達を倒していけば、最終的にアイツは降りて来るんだろう。
電犬ライロウ、水猫バブミケ、火猫ファイニャ、氷犬アイスワンの体が、オメガオリオンの発光と共に輝き出した。
マップ天上のど真ん中にいるオメガオリオンが、足元の水面に六色の魔法陣を発生させて、そこを突き破って消えると、倒れた四天王はそれぞれ自分の属性エネルギーを体中から放出させていった。
電犬ライロウは、武士一閃テイデンスサノオに。
水猫バブミケは、太陽王妃フレア・プロミネンスに。
火猫ファイニャは、太陽王フレア・ウォーズに。
氷犬アイスワンは、結晶軍師クリスタル・デュークにそれぞれ進化した。
スーパークラス属性四天王のお目見えだ。
ここで一気に難易度が上がったな。
さっきの水面魔法陣攻撃で耐久特化装備のセイカの体力が八割削られていた。
恐らく、ガンナーがダイレクトに大技を喰らったらワンパンになる火力がある。
出現した属性四天王は、それぞれ分散して対処していく。
テイデンスサノオは俺とオジサンとセカンドとセイカが相手をし、クリスタル・デュークはハルガとウサギちゃんが、フレア・ウォーズはTEOとREIが、フレア・プロミネンスはNANAとの一騎打ちで女帝対決となった。
それぞれ当時は、苦労したモンスター達だ。
多分それは俺だけじゃない、元初心者プレイヤーだったハルガ、NANA、TEO、REIも、それぞれがそれぞれのモンスターに思い入れがあって、苦戦しながらも乗り越えた相手なのだ。
別マップのウケツケジョーとオジョーは、林獣ボスジャングルス、泡獣ポン・デ・バブル、溶魚ガストドン、雷麻リャフリャフの四体と戦っていた。
四天王よりも難易度の低い個体とはいえ、ガンナー二人での対応はキツそうだ。
マップ移動はできないのだろうか? 戦闘不能になれば移動できると思うが、わざと戦闘不能になるのはリスキーだな。
俺達が四天王を倒した時点で、ガンナー二人の戦闘は続いていた。
消えたと思ったオメガオリオンは、ガンナー二人のマップに移動していた。
「あれ? ハルガがいない」
もしかして戦闘不能になった?
Sクラスモンスター相手に、ハルガが戦闘不能になるなんてありえないが。
『瞬間移動機能を使えばマップ移動が出来るぞ!』
ハルガは、何時の間にかガンナー二人のマップに移動していた。
別マップからの声だからか、コスモリウム全体に響いて聞こえた。
……そうか!
瞬間移動はエネルギーが集中しているエリアに移動できるから、オメガオリオンが別マップにいる時に瞬間移動をすれば、そっちのマップに移動出来るのだ。
ハルガに続いてウサギちゃんもマップ移動して、残った雷麻リャフリャフを撃破していた。
俺のいるマップには、刃豹ニャルガコウガと氷水魚アイスドンが出現。
向こうのマップには、痺れ餓パララモスと地鳴り餓グラビティモスが出現した。
向こうはガンナーのカモだから、すぐに終わりそうだ。
……ていうか、もうTクラス個体のモンスターが出現している。
ティラオスやティラメスのような一部の特殊モンスターは出ないみたいだな。
二体の巨大モスが撃破されたマップには、韋駄天イージャンと月光イージャンが出現した。
俺達が、氷フィールドと風の刃で連携を見せたニャルガコウガとアイスドンを討伐すると、NANA、TEO、REIは、ゴリラのいるマップへ瞬間移動した。
廃人勢にとって、イージャンは印象深いモンスターのようだ。
……何なら俺もだが。
それよりも、廃人勢が全員向こうのマップに行ってしまった事で、元々ガンナー二人だったマップが戦力過多になった。
俺達のマップに、水雷獣ポン・デ・サンダーと流水魚ギャラトトスが出現。
こいつらは俺がほぼ初めてソロで挑んだモンスターなんだよな……懐かしいぜ。
この辺りのTクラスモンスター達から、属性を意識して戦わないといけない。
向こうは、ゴリラをハメて即行片付けると、氷馬ぺガリースが出現。
俺達の方も少し遅れてマップにいるモンスターを倒すと、大岩歩鯨デビルゲイが出現した。
馬と鯨が出揃うと、オメガオリオンは再び六色魔法陣水面突き破りジェット攻撃を放ち、馬と鯨が光輝いて亜種個体へと進化した。
オメガオリオンがこちらのマップに来た所で、俺達は大海泳鯨デビルゲイ亜種を、向こうは氷雷幻馬ぺガーリース亜種相手に交戦。
もうTクラス終盤モンスターだ。これで最後かな? プレイヤー人数が多いとは言え、気を抜くとやられる相手なので油断はできない。
「ウサギが戦闘不能になりました」と、チャットが流れた。
皆でドンマイ!
ぺガリース亜種による雷鳴や氷柱による猛攻と、オメガオリオンの援護射撃を躱すのは難しかったようだ。この援護射撃、マップを貫通してその流れ弾が別マップに飛んでいくようで、足元に映し出された別パーティの戦況も確認しながら戦わないといけないようになっている。
ウサギちゃんが、俺達のマップに戻って来た。
半水球となっているエリア内を、洗濯機でかき回すように変形させるデビルゲイ亜種に少し苦戦したが、無事撃破。
向こうのぺガリース亜種は、有利属性武器を担がないと倒せない相手ではあったが、歴戦の猛者が四人もいたので危なげなく討伐していた。
廃人四天王が戦力的に物凄く心強い。四天王というより、皆王様って感じだな。
BGMが止まった。
それは、嵐の前の静けさのようだった。
ふと向こうのマップを確認すると、向こうのマップにもオメガオリオンが出現していた。俺達のいるマップと向こうのマップにそれぞれオメガオリオンがいる。
分身を作ったのか?
『準備が整ったわ。これから私が相手てててtttt』
「ん?」
『ユッキー、リアルの方で通信障害が発生してる!』
向こうのマップにいるオジョーからだ。
「えっ! これからいい所なのに!?」
『このゲームは、特殊なサーバーだから大丈夫なはず……』
画面が揺らいでノイズが発生し出した。
マップも、ドォォン! ドォォン! ……と揺れている。
お願い! サーバーちゃん……もって!
『ユッキー、絶絶絶望ゼツボーンしななななさい!』
今まさに絶望しているんだが……。
バディのセリフがバグってますやん。
ピアノの旋律が流れてきた。
この状況も相まって、中々に怖い。
オメガオリオンの六色発光が眩く光り、マップのノイズと合わさりながら周囲がグイングイン揺れると、メンバーの一部がシャッフルされている事に気付いた。
「オジョー!」
「あれ? 私こっちのマップに戻って来たんだ」
「ウサギちゃんが向こうのマップに飛ばされたみたい」
「今配信の方確認したんだけど、太陽フレアの影響でYOーチューブ動画がこの配信以外視聴不可能になっているみたい。ゲーム関係のサーバーも、このゲームとクラシックバスターβ版以外は、通信障害かサーバーが落ちてる」
「この配信だけ無事なのか」
「だから、見る動画が無くなった視聴者達がこの配信に集まってる! 現時点で同時視聴者数が百万を越えた」
「同接百万越え!?」
「ユッキー!!」
「なんだオジサン!」
「僕達の獣人スキンが解除されているぞ!」
「何!?」
自分の体とオジサンを見ると、完全に元の人間キャラに戻っている感じだった。
俺とオジサンは、リアルそっくりにキャラクリエイトしているので、俺達の事を知っている人がこの配信を見たら顔バレしちゃうな。
……ま、今そんな事を気にしている場合じゃないか。
俺、オジサン、オジョーが、まごまごしていると、別マップのウケツケジョーが『こっちで大変な事が……!』と騒ぎ出した。
「どうしたウケツケジョー!」
『こっちにいたはずのオメガオリオンのフォルムが変わってる!』
天井に映し出された別マップの様子を見ると、分身体オメガオリオンの六色発光の色合いが銀一色となっており、フォルムもより飛竜に近い形へと変化していた。
オメガオリオン胸部の中から、優男風の青年が出て来た。
『へィ! やっとお前達を消し炭に出来る時が来て、僕はとっても嬉しいよ!』
「誰!?」
『僕は未来からやって来た銀河的美少年である、十年後のストさ!』
「十年後のスト君!?」
別マップのTEOから補足が入った。
どうやらスト君完全放置ルートを進みバディが味方になった場合のラスボスは、十年後のスト君とオメガオリオンとなったピンチになるようだ。
……こっちのルートに進まなくてよかった。
多分、ウケツケジョーがスト君完全放置ルートで進めたから、分身体の相手が変更になったのかもしれない。
初見なので、バグなのか仕様なのかわからない辺りが困る。
「もしかして、僕とバディさんは逆だったかもしれないんですね……」
『そうだよ、過去の世界線の僕! 僕はSUITE BUYBUYに洗脳されてから、自分も戦う為の武器が欲しいと考えていた。そしたら、ピンチがオメガオリオンリバースへと進化し、僕の武器となってこの世界に復讐するチャンスを与えてくれた』
「オーガはどうしたんだ!」
『オーガは死んだよ。汚い大人達に殺された。自分達の都合でペットを子供に与えるくせに、不要になったり都合が悪くなると簡単に破棄してしまう。子供にはルールを守らせるくせに歩き煙草は平然とする。怖い相手だと見て見ぬふりをして、攻撃しやすい年下ばかりを標的に注意する。僕はそんな大人が嫌いだ。大人なんて、大嫌いだっ!』
ゴゴゴゴゴとバグっていた、バディ搭乗中のオメガオリオンが動き出した。
『ユッキー……絶望なさい……ゼゼゼゼ……テ・テ・テ・テテテテテテテttttttttt、鉄棒なさい!!」
「鉄棒!?」
バディ搭乗中のオメガオリオンが、戦闘態勢に移行した。
別マップの青年スト君も、オメガオリオン亜種に搭乗して戦闘態勢を取った。
『身勝手な大人達は、この僕が駆逐してやるっ!!』
現在のスト君が……洗脳された世界線を歩んだ未来のスト君を見ている。
大丈夫、今の君なら復讐心に捉われないはずだ。
『私が、邪魔なお前らを鉄棒させるっ!』
「俺は、鉄棒しねぇ!」
……クソッ! セリフがバグだらけで収集がつかない。
『大人達はアルコールを飲みすぎてしまった。これから酒で悲しむ人が出ぬよう、この僕に肝臓をささげよっ!!』
『もう滅茶苦茶だよ』と、別マップのREIが唖然としていた。
回想ムービーが三時間もなければリアルで太陽フレアが起きる前にエンディングへと到達出来たかもしれないが、今日最終メインクエストをクリアすると決めたのは俺達だ。
このバグだらけのラストバトルになってしまったのも、俺の人生なんだ!
「恐らくこのクエストを失敗したら、もうリスタートはできない! 皆、絶対ラスボスを初見でクリアするぞ!」
両マップから、鼓舞するような掛け声が湧いた。
元受付ジョーであるバディの搭乗したオメガオリオンを相手にするのは、俺、オジサン、セカンド、セイカ、オジョー、お供のラスカルと二号。
未来青年スト君の搭乗したオメガオリオンリバースを相手にするのは、ハルガ、ウサギちゃん、NANA、TEO、REI、ウケツケジョー。
その両者の戦闘が始まった。
ずっとピアノ旋律だったBGMは、某ファンタジーRPGで有名なイントロとなってそこから激しい曲調へと変化し、極限の最終戦を思わせる旋律で俺達の最凶最高調のラストバトルを心震わせるほどに躍らせた。
俺の相対するオメガオリオンは、六色のビームで弾幕の雨を降らしながら瞬間移動で近接回転アタックで攻撃してくる。容赦ない攻撃が続き、別マップを確認する余裕がない所ではあるが、時折別マップのリバースによるビームもこちらに飛んでくるので、全く見ないという訳にはいかない。
マップ内は、ノイズの他にタイムラグも発生し、仕様で瞬間移動しているのかタイムラグで瞬間移動しているのかわからなくなっていた。
唯一隙のある攻撃が、サザンクロス・デューク時も使用していた必殺技である「メドアロー」。こちらが被弾すれば即死だが、その分大きな隙が出来るので、その間に溜め切り攻撃を当てる事が出来た。
ただその大きい隙の発生中に、バディがホーミングレーザーを乱発操作してくるので棒立ちは厳禁。バディの操作状況は、ちょいちょい周囲の水面や天井に映し出されるので、多少攻撃予測が出来るようになっていた。
主にダメージソースとなっているのは、ライトライフルのオジサンと魔導弓のオジョー。ワンパンを防ぐ為に、片手剣のセカンドがガンナー二人の盾になりながら戦っている。こちらが受けるダメージは、回復全体化スキル持ちのヒーラーセイカが担って回復してくれている。
別パーティの様子を確認すると、向こうはTEOによるタンクにヘビィのウケツケジョーが隠れながら回復や攻撃をして、他メインアタッカー達が敵視を散らしながら戦っているようだ。
『鉄棒しろっ!!』
『肝臓を捧げよ!!』
二体のオメガオリオンが、水面魔法陣突破ジェット攻撃の大技を放って往復し、水球コスモマップの色彩がとんでもないレインボー爆撃で火花の海と化した。
油断していたセイカが落ちたが、復帰後のマップ移動が無くなった事を確認出来たのは不幸中の幸いと言った所。
時間経過を確認しようにも、数字がバグっているので確認できなくなっている。
これ……後何回落ちたら、クエスト失敗になっちゃうんだ……?
オメガオリオンは、その時々のカラーで弱点属性がわかるようになっており、コンスタントに弱点攻撃を与えているので、プレイヤーサイドの制限時間は回復しているはず。
僅かな勝機を頼りに踏ん張っているが、相手の体力がバグってしまったら、討伐不能になってしまうし、そもそもサーバーが落ちた瞬間にゲームが終わってしまうので滅茶苦茶焦る。
次第にオメガオリオンがちょいちょいローポリになったりして色々ヤバくなっている! 当たり判定もフレア・プロミネンスの尻尾フリフリ並に可笑しい!
「ユッキー、上を見て!」
セイカの声で天井を見る俺。別マップの戦闘状況が表示されているのかと思いきや、文字が高速で流れていた。
「配信チャットがバグで表示されてしまったみたい……」と、オジョー。
バディも「何、天井がgagagagagaバグっているの?」と言って、バグだらけのラスボスが天上バグに反応していた。メタ発言もお構いなしになってる。
セイカは「私のアイテムバックからハチミツが無限増殖してる!」と、一人悲鳴を上げていた。
天井のコメントを拾うと、「ハチミツクダサイ」「ハチミツクダサイってイッテンダヨ!」「グリーンダヨ」「ハチミツくれた女忍者ガンバレ!」とのコメントが散見された。
もしかして、ゆうこシスターズもこの配信見てるのか?
高速で流れるチャットでも確認出来るほどに連投しているようだ。
『ハチミツぐらい、自分で採取しろよ!!』
その意見は、ごもっともです。
『ユッキー、もう鉄棒した? tttt鉄棒したわよね!? 私がaaaaaナタ君に更なる鉄棒を与えてあげげのげ!!』
セリフが相変わらずバグっているが、攻撃の弾幕が激しすぎて気にしている余裕が無い。バグセリフを無視して行動していると、急に手元がフッと軽くなった。そう思った瞬間、俺の大剣が次元の彼方に消えて無くなった。
オジサンのライトライフル、オジョーの魔導弓、セイカのツイスター、セカンドの片手剣は攻撃手段の剣のみ消失して盾のみとなっていた。
『武器が無ければ、もう私達に攻撃できmaimai!』
「武器消失バグ!?」
イキっているバディだが、別マップのリバースとダメージ共有しているようで、ダメージはちゃんと受けていた。
「ハルガ、そっちはどうなってる!」
『こちらの武器は消失してない! ラグも少ないし普通に戦えてる!』
俺達パーティは、ラスボスからの攻撃を避ける事しかできなくなり、ハルガ達が討伐するまで極力戦闘不能にならないように立ち回る事しかできなくなった。
『hahahahhahaha!!』
バディは楽しみながらオメガオリオンを演奏するように操縦し、一方的にエリア内を縦横無尽に飛び回って、水流で彩られたフィールドを色彩豊かな花火大会へと昇華させていた。
武器が欲しい。
今、俺が戦う為に必要な武器が……武器が欲しい!




