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291 ジュラバス十周年までの軌跡

 八周年のメインクエを終えた俺は、シナリオについての考察動画を見漁った。

 すると、「バディ死す!」のサムネばかりの一方で、内容を見てみるとバディは絶対生きていると予想している人が多かった。

 飲み込みは生存フラグらしい。

 八周年のメインクエスト終了後に、バディの事を拠点の人達に聞いた場合も、「バディさんは生きている」という話が多かったから、多分生きているんじゃないかと俺も思う。

 しかし、トリィについては、ナディアの口から亡くなったとのセリフがあった。遺体を直接見た訳じゃないものの、トリィは本当に死んだのかもしれないと思った。設定上はサイボーグだから頑丈なはずだけど。

 零煌爵に荒らされた広場は、工事中となっており、トリィのいた場所には花が添えられていた。これからの食事担当は、コシロウの役目らしい。

 ハナちゃんがいなくなってからは、海洋拠点の便利屋はクィンとなった。キングは俺達プレイヤーと共に移動するようになったので、海洋拠点の便利屋を利用すると、二匹で寄り添う姿が見られる。

 クィンは、零煌爵に拘束された時に「あちしもモンスターになってハナちゃんを助けたかったけど、あちしがモンスターになったら便利屋がいなくなっちゃうから力が出なかったの……」と言っていた。確かに便利屋が全員いなくなると不便だから仕方ないかな。多分だけど、ハナちゃんは生きていると思う。


 八周年に追加されたモンスターは、「原初たる零煌爵エスシー・ディーオー」と、「大海泳鯨デビルゲイ亜種」の二体。

 「原初たる零煌爵エスシー・ディーオー」は、レイド形式のクエストとなり、「大海泳鯨デビルゲイ亜種」は、あの特殊な球体マップとなっている。マップ名は「海底の水球」で、現状デビルゲイ亜種の専用マップだ。

 戦闘中は、BGMの楽曲名がわからなかったけど、正式名称は「SPACE ZERO」だと公表された。かっこいいBGMだったので、サブスクでヘビーローテーションしてしまった。

 

 今までのエンドコンテンツ防具は、火力特化の火竜装備「スカイハイシリーズ」か防御特化の清竜装備「ガイアシリーズ」の二択だったが、新たに見切り特化の零煌爵装備「ヘブンゼロシリーズ」と回復特化の泳鯨装備「ポセイドンシリーズ」が追加され、プレイヤーの選択肢は四つとなった。

 回復特化と言うと上位層から敬遠されそうだが、一式スキルの「自動蘇生」は中々ぶっ壊れだと思う。一クエストにつき一回までだが、それでも強力な効果だ。

 「ヘブンゼロシリーズ」の一式スキルの「自動捕獲」も中々ヤバく、武器に捕獲効果が乗るようになる。この装備を一式揃えれば、捕獲による周回がかなり便利になる。ただ、一部罠が効かなかったり捕獲できないモンスターもいるので、雑魚専的な使われ方になりそうな予感。少なくともラスボス戦では使えないだろう。


 二か月後、八周年で追加された二体のイベントクエストが配信され、メインクエスト時は火力を抑えられていた事を思い知る事に。

 零煌爵エスシー・ディーオーは、ヘキサトリトンに続いて二番目のレイドバトルとなり、デビルゲイ亜種は、この時点においても「海底の水球」で唯一戦えるモンスターとなっていた。


 同時期にジュラバス業界で事件が起きた。

 サークル世界ランキングニ位の「DUKE YOUR HIGINESS」が、突如として解散したのである。

 リーダーのREIから原因が語られた訳ではないが、噂ではクリスタル・デュークの進化個体におけるストーリー上の扱いに対して不満があったのではないかという情報が、ネット上に広まっていた。

 REIは、それからジュラバスにログインする事が無くなり音信不通に。

 大丈夫かな……REI。

 REIのフレンド情報を調べる過程で、一緒にメダコンを目指したサーマンのアカウントが無くなっている事に気付いた。

 サーマン……ジュラバスやめちゃったのかな……。

 もし、俺達が原因なら申し訳ない事をした。

 オートマは、相変わらずほぼ毎日オンライン状態なので、ホッとした。


 ニ八二九年に入ると、俺達のサークル「BTR,s ANGEL」は、「E-YOUTH」「Pa・Ra・Land」に続いて三位となった。

 「Pa・Ra・Land」の元リーダーのNANAと、「暁の騎士団」の元リーダーのTEOの二人が我がサークルに加入したので、この流れは割と想定内だったりする。

 サークルランキングが三位になったという事は、当時ハルガが所属していたサークル「RISING SCOPE」と並んだ事になり、色々と考え深い状況になったと感じた。ハルガは、未だに「BTR,s ANGEL」に加入していないが、ウサギちゃんやセイカ達とは、よく狩りをしているようだ。


 三月十二日、九周年に向けての新レイドPVが公開された。

 新レイドで戦うモンスターも発表され、ヘキサトリトンの上位種「火海神ヘキサトリトン希少種」の追加が告知された。

 原初モンスターが希少種枠で既にいたにも関わらず、ここで改めて希少種を冠するモンスターの登場に、オラはワクワクが止まらなくなった。

 これだけではなく、八・五周年時のアプデで「ワンター」機能が実装された。

 この機能を使い、プレイヤーとAIハスキルーの操作を入れ替える事が出来るようになった。つまりプレイヤーがハスキルーとなり、AIバスターに狩ってもらうというようなプレイが可能になった訳だ。

 

 今年のオンライン世界大会から、ハルガとNANAが復帰。

 昨年の世界大会チャンピオンであり、個人サークルランキング一位のREI不在という異例の大会となった今年は、ソロ部門が、ハルガ、NANA、レムノンの三強対決で、ペア部門は、ハルガとウサギちゃんペア、NANATEOペアの二強対決となっていた。

 八月の世界大会決勝の様子は、オジサンと一緒にメタバースを利用して観戦した。自分がゲームをプレイするだけじゃなくて、他プレイヤーのゲームプレイを観戦するのもいいもんですよねぇ。

 決勝で戦うモンスターは、零煌爵エスシー・ディーオーで、海底の水球マップの戦闘というありえない組み合わせのクエストとなっていた。

 勝敗システムは、制限時間の多い方が優勝となる。

 ソロ部門の優勝者は、NANA。

 ペア部門の優勝者は、ハルガとウサギちゃんとなった。

 サークル未所属での優勝者が出たのは初めての事らしく、ハルガはまた、ジュラバス業界に記録を打ち立てたのであった。


 九月十日に九周年アニバーサリー配信があった。

 まず、来年の世界大会の予選が四月以降からという謎変更告知。

 そして、ヘキサトリトン希少種のかっこいい戦闘シーンが公開され、ジュラバスの最終メインクエストの告知もされた。

 映像は、海底のコスモリウムと思われる施設が流されたのみ。

 色んな意味で意味深なシーンであった。

 しかも、九・五周年に重大発表があるとの合わせ技も。

 最終メインクエストをクリアしたら、俺達プラチナフィストのメンバーはジュラバス引退を決めている。

 ただ、それとは別にこのゲームの行く末は気になる所なのである。

 

 九月十二日に「火海神ヘキサトリトン希少種」が実装。

 プレイ人口が減ってきている空気感はあったが、新規モンスターにより、オンラインはそこそこ賑わいを見せていた。

 ヘキサトリトン希少種の生産武器は、メインが火属性でサブがランダム属性。ヘキサトリトン希少種自身もヒート状態中は火属性になるので、火属性モンスターという印象が強くなっている。

 防具の一式スキルに「属性共鳴・刃」という新スキルが登場し、メイン武器と同じ属性値が強化され、属性変換に合わせて強化属性も変化するというトンデモ性能となっていた。単体の属性特化スキルに強化値は劣るものの実質全属性値を強化出来るので、複数の属性武器を担ぐならこの防具でOKという形になりそうだ。この新スキルは、ヘキサトリトンの生産武器特有のランダム属性に対応していると言える。原種のヘキサトリトン素材で、サブの無属性を変更出来るという仕様があったが、ヘキサトリトン希少種の固有素材を消費する事で、無属性以外のサブ属性も変更出来るようになった。実質、ヘキサトリトン希少種を周回すれば、サブ属性はどうとでも出来る環境になった。

 ただ、戦闘において雷属性武器を担げば何とかなった原種と違い、希少種の方は難易度が高くなったので、周回に一苦労してしまう俺であった。

 

 ヘキサトリトン希少種の実装から一週間経つと、隠しモンスターの情報がネット上を駆け巡った。いわゆる事前告知無しモンスターである。

 そのモンスターの名は、「百華転結アロマテラス希少種」。

 ワイルドサバンナや海峡などのフィールドを駆け巡っていると偶然出会えるとの事で、接触するとサークルクエストで戦えるようになるのだという。

 初めに発見した人は、アロマテラス希少種が「もうすぐ世界が終わる……」と呟いていたので、バグだと思ったと青い鳥のSNSで呟いていた。

 俺とオジサンもフィールドを駆けまわりアロマテラス希少種を捜索。

 サバンナの中心で実際に会ってみると、本当に「もうすぐ世界が終わる……」とアロマテラス希少種が呟き、その場で泡沫の如く消えた。声がハナちゃんの声に近かったので、嫌な予感がブンブンした。

 サークルクエストにアロマテラス希少種のクエストが追加されていたので戦ってみた。海底の水球でアロマテラスと戦う感じとなっており、突然の水中ステージに俺達は驚きつつも、ハナちゃんとは違う個体だよなと思いながら戦って勝った。

 作れる防具は、課金防具の狐スタイルをアレンジした物となっており、「幸運」などのドロップ率UPスキルが中心の装備となっていた。

 この防具、フレンド以外のマルチで装備したら荒れそうである。

 

 十一月中旬、ずっと消息を絶っていたREIが、俺達のサークルにやってきた。

 アバターからも元気が無さそうというというのが伝わってくる感じだった。

 REIは、初心に返って改めてジュラバスに復帰したいとNANAに頭を下げ、俺にも何故か謝罪した。

 REIは、泣きそうな表情で「僕もBTR,s ANGELに入れて下さい」と、NANAにお願いしていた。

 NANAは、元気に「オーケー!」と言い、結果的にREIは、BTR,s ANGELの十人目のメンバーとして迎い入れられた。

 BTR,s ANGELにREI加入とかマジか……。

 BTR,s ANGELの公式SNSに、REI加入の件と、REIが自身のサークルを突如解散させた事の経緯、元メンバーへの謝罪などが掲載された。

 やはりというか、八周年のシナリオの展開が原因だったらしい。

 ほとんどシナリオをスキップしていたREIだったが、八周年のシナリオはちゃんと見たらしく、衝撃を受けた後に考察動画を見漁って気持ちが病んでしまったらしい。引退も考えたとの事だが、ヘキサトリトン希少種が実装された事もあって、ジュラバスの結末にも興味が湧き、復帰しようとの思いに至ったのだとか。

 それからREIとは、ヘキサトリトン希少種を周回しまくり、友達のように仲良くなる事が出来た。


 そして、俺からご報告がある。

 十一月二十二日に今まで貯めていたランクポイントを解放し、俺のランクはBR「999」、HBR「999」となり、晴れてランクカンスト勢の仲間入りを果たした。

 オジサンも俺と同時にカンストさせていた。

 やったぜ!


 二八三十年三月十日。

 三年ぶりにハーフアニバーサリー配信が帰ってきた。

 Vチューバー的なアバターであるP&Dと司会にレムノン。更になんと、オートマの中の人であるアスカ・クライムハザードが、ゲストで招かれていた。

 発狂していたオートマが思い出せない程に、アスカの表情は爽やかだった。

 放送の序盤は、亜種枠と希少種枠とされるモンスターの深堀。

 亜種枠は、「大空の竜スカイ・ティラオス」「豊潤の竜アース・ティラメス」「氷炎竜サザンクロス・デューク」「霹靂一閃テイデンスサノオ亜種」「氷雷幻馬ぺガリース亜種」「大海泳鯨デビルゲイ亜種」の六種。

 希少種枠は、「原初たる火竜レウスカイ・ティラオス」「原初たる清竜レイアース・ティラメス」「原初たる零煌爵エスシー・ディーオー」「百華転結アロマテラス希少種」「火海神ヘキサトリトン希少種」の五種。

 スカイとアースと氷炎竜って亜種枠だったのか……知らなかった。

 亜種と希少種、それぞれが印象深く、錚々たる面々という印象を受けた。

 続いて、ジュラシック・バスターの歴史なんかを振り返っていた。

 こう……思い出を振り返ってみると、ジュラバス歴約三年といえど、感慨深いものがあった。

 そして重大告知が、ここで発表された。


 ジュラシックバスター、最終シナリオ公開後の十周年となる九月十二日に……。

 「サービス終了」。

 えええええええええええええええぇええぇぇえぇぇ!?!?

 チャット欄も俺と同じ反応だった。

 アスカは、少し息を詰まらせてから「私もビックリですよ~!」と、少し悲しげな笑顔を見せていた。いや、俺も悲しいわ!

 ジュラバスのオンライン世界大会は今年が最後らしく、ソロ、ペアの他に、最初で最後のレイド部門が設立されるとの事。

 他の情報としては、シナリオの分岐でプレイできなかった全メインクエストを、メモリークエストとしてプレイ可能に。

 重大発表は、ここで終わらなかった。

 

 Pから発表があり、ジュラバスのゲームシステムをベースにした次回作となる「クラシックバスター」が発表された。

 えええええええええええええええぇええぇぇえぇぇ!?!?

 チャット欄もサ終発表の時の俺と同じ反応だった。

 「クラシックバスター」は狩りメインのゲームになるらしく、シナリオはAI生成される為、プレイヤー事にシナリオが変わるそう。

 登場モンスターは、主にジュラバスのモデルであり原点でもある、モンハァンのモンスターが多数登場するとの事。

 クラシックバスターでは、ジュラシックバスターのゲームシステムを元に、モンハァンのモンスターが狩れる!!

 チャット欄にいるモンハァンのファン達からは、歓喜の嵐となっていた。

 クラバスをめちゃめちゃプレイしたい気持ちになったが、ジュラバスのサ終と共に俺はハンティングVRゲームを引退するの……だ!

 リアルの都合があるから、しょうがないんだZE!

 ジュラバスの最終シナリオをクリアすると、最速でクラバスのβ版をプレイ出来るようになるそうだが、エンディング後はジュラバスをプレイできなくなり、そのままクラバスに垢移行するのだとか。   

 勿論、そのままジュラバスを終わらせる事も可能。

 これは、ジュラバスをサ終直前までプレイしたいなら、最終シナリオはサ終直前までお預けって感じになるのか。うーん……悩ましい。

 ジュラシックバスターとクラシックバスターの直接的なゲーム内引継ぎは無いらしいが、ゲーム内電子マネーとフォト内容は引き継がれるらしい。

 それらポイントが使えるコンテンツは、クラバス正式サービス開始直後は無く、後日実装するという話で、スタートダッシュは皆一緒になる。

 課金によるスキンアイテムも再使用出来るようにするとの事

 三年ぶりとなるハーフアニバーサリー配信もなんやかんや盛り上がって終わったが、最後はアスカの寂しそうな笑顔が、俺の心に残る形で締めくくられた。

 

 ジュラバスのサービス終了まで残り半年。

 俺は、まず心残りだったメインクエスト、「黄金の不死鳥」をオジサンと一緒にプレイした。

 メモリークエストは、メモリーピースを消費する必要があったが、既にメモリーピースの所持数はカンストしていたので、俺達には何の問題もなかった。

 今戦っても普通に難易度が高く、鬼嫁の恐ろしさを改めて痛感した。

 ……とは言え、何とか一乙もせずにクリア。

 対策は練りに練っていたし、装備もインフレしているしな。


 心残りを終えた後、BTR,s ANGEL内のメンバー何人かで、オンライン世界大会のレイド部門に出場する事になったというか、そう決めた。

 もう、身バレなんてどうでもいい。

 BTR,s ANGEL公式SNSの方でも、その事を告知。

 レイド決勝で戦うモンスターは事前に発表されており、相手はエスシー・ディーオーとイビルゲイ亜種とヘキサトリトン希少種の三体。

 バトルは勿論レイド形式の海上ステージ。

 普通にクリア出来るかも怪しい難易度だな……。

 クリアの速度よりも、安定して三体を討伐出来るかどうかが焦点となりそう。

 世界大会参加メンバーは、俺、オジサン、ウサギちゃん、NANA、TEO、REI、そして……ハルガ!

 リアルの方では、ハルガはもうプラチナフィストの仲間になっていたが、未だにBTR,s ANGELには加入せず、俺達と共に無所属で世界大会に出場する事となった。

 俺達メンバーは、予選から決勝までを常に一位通過。

 その過程で、BTR,s ANGELは世界サークルランキングのトップに君臨。

 更に、八月七日の世界大会レイド部門を、見事優勝で飾ったのだった。


 やっ……ったぜい!!

 

 ソロ部門は、無所属となったレムノンが優勝。

 大会の大トリとなるペア部門は、レムノンとオートマのペアが優勝した。

 二人には、ゲーミングカラーの紙吹雪が舞う中、世界大会出場者全員から拍手が送られた。あのハルガも、ペア優勝の二人に拍手を送っていた。オートマは、そんなハルガを見てしまった事で、目を覆い隠しながら泣き出してしまった。レムノンも釣られて、オートマを抱きしめながら号泣。彼女もジュラバス最後の世界大会において、やっとの事でソロとペアを制覇する事が出来たんだもんな。

 二人共凄いぜ! おめでとう……!

 

 八月十二日、ジュラバス最終シナリオが公開。

 俺達BTR,s ANGELのメンバーは、ジュラシックバスターのサ終日である九月十二日に最終シナリオをプレイする予定だ。

 なので、九月十二日までネットの情報を封殺するつもり。

 八月十二日から九月十二日までは、ラストマンスリーフェスという事で、全てのイベントクエスト解放、全てのプレイヤーが可視化された。

 

 残り一か月、俺はジュラバスで何をしたいのかを考えた。

 メダコンも達成したし、メモリークエストを含めた全てのクエストも制覇した。

 でも、それらはサービス終了と共にデータが全て消えてしまう。

 俺がサ終までする活動……それは、フォトモードを堪能する事だった。

 写真に思い出を記録するZE!!


 俺は、ワンター機能を使って、セカンドと操作キャラを入れ替えた。

 セカンドが俺の使用していた竜人キャラクターを使い、俺が赤犬のハスキルーとなった。

 ゲーム中、ワンちゃんとなった俺は、竜人のセカンド、獣人のオジサン、二号を連れまわして、ジュラシックバスターの広大なフィールドを駆け回った。

 思い出を残そうと、写真を次々に残していった。

 ゲーム開始からずっと付き合いのあったスト君、オーガ、ピンチとの記念撮影。科学所長のナディア。元探偵のコシロウ。受付担当のボディ、リンス、シャンプー三姉妹。便利屋のキングとクィン。最近利用しなくなった移動手段のオヤジ。

 それぞれの拠点で、生活する住人達。

 無属性の暴力で突破した、Nクラスのモンスター達。

 キャリーされながらも勢いで突破した、Sクラスのモンスター達。

 初めてソロみたいに進行して苦戦した、Tクラスのモンスター達。

 属性四天王は、お花が咲いている所にチョコンと座っている瞬間を撮った。呑気に欠伸をしているモンスター達は中々可愛いものである。ここでは隠れ蓑スキルを駆使。

 亜種のモンスター達は寝顔を狙って撮った。皆カワウィ!

 希少種枠は、呑気にフォトする余裕なんてなかったので、かっこいい戦闘シーンを激写。

 アロマテラス希少種ちゃんは、ヒジカタを呼んで二体で写真を撮っておいた。

 それから、飛竜のピンチとオーガに飛び乗って大空を飛行した。

 澄み切った青空、黄昏の夕焼け空、幻想的な星空、そのどれもが何時もより綺麗で特別に感じた。

 流星群と一緒にナイトスカイドライブ。

 この広大な世界も、サ終と共に無くなっちゃうんだよな。

 何か泣けてきちゃったよ、俺……!

 

 撮った写真は、オジサンのナノカメラに全て保存。

 心残りがあるとすれば、バディ、トリィ、ハナちゃんの写真を撮れなかった事。

 撮れなかった皆は、二号のフォトに残されていたから、そのデータを全てコピーして頂ける事になった。

 ありがたや……ありがたや……。


 日を追う事にプレイヤー数が減少していっているようで、可視化した皆がいなくなっていく様を見るのが、とても寂しかった。

 サークルも次々に解散していっているらしい。

 最終シナリオ実装当時は賑わっていた浜辺も、九月に入ると、ほとんど別のプレイヤーを見かけなくなっていった。

 終わっちゃうんだな……本当に。


 そして、ジュラシックバスターのサービス終了となる九月十二日が、遂に訪れてしまった。

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