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265 世代交代の波 変革の兆し

 次の日、案の定というかジュラバス界隈は荒れていた。

 ハルガとREIのチャームをかけた争いは、REIが最大最少を先に引いたという事で、単純に見ればREIの勝ちという事なのだが、通常の方法ではなく乱数調整をした事と、完全な一対一の勝負ではなかったという事もあって、ハルガ派のユーザーがネット上で暴れていた。

 他には、チャームバトルの考察を上げているYOーチューブ動画も何本か出てきて、ルームに謎のドラゴン(ユッキー)を立たせていたのは、ハルガの乱数調整妨害の為とか言って再生数を稼いでいる人もいた。仮にあれが乱数調整妨害だったとしたら、下準備の時点でハルガの負けは決まっていた。コメント欄を見てみると、REIは流石に妨害行為はしない的なコメントや、そもそも乱数調整自体が正規なやり方ではないといった意見で溢れ、REI派とハルガ派の間で、バチバチの言い争いになっていた。

 こういう流れになると、SNSをやっている本人に矛先がいきそうだが、ハルガはSNSをやっていないので、ハルガの所属サークル「RISING SCOPE」のメンバーであるオートマに注目が集まった。


 金冠祭騒動の次の日のオートマは、SNS及びYOーチューブの配信を一切行わなかったので、ネットの攻撃を回避出来ている状況だった。


 数日間の間は、ハルガ派とREI派、配信にいた謎の竜人スキンプレイヤーは誰だったの派の三つの勢力に分かれて混沌としていた。


 ユッキーは、REI達の祝杯に参加した後一日半休んで、十四日に自分のルームを作ってログインしてきた。早速NANAを呼んだ所、「せっかくだから金冠祭を楽しみなさいよ!」と言われたので、メインクエストの進行はなかった。

 NANAは、フレア・プロミネンスのチャームを入手出来たらしく、それを自慢して去っていった。


 金冠祭の最初の二週間に解放される最大最少サイズのモンスターは、「スカイ・ティラオス」「アース・ティラメス」「フレア・ウォーズ」「クリスタル・デューク」「テイデンスサノオ」「フレア・プロミネンス」のSクラス人気所な六体。

 二日も経つと、チャームはもう取られてしまっているので、メダルコンプリートの為に最大と最少の図鑑を埋める形となる。

 ユッキーは、「スカイ・ティラオス」のチャームを狙っていたみたいで、出遅れた事を残念がっていた。


 五日後。

 ユッキーと二号がログインすると、NPCであるナディアから呼び出しがあった。

 ユッキーは、ナディアから「サイズサーチャー」という道具を入手した。

 このサイズサーチャー、二週間内の後期の一週間使用可能となる道具で(つまり、金冠祭の一週間後から七日事に使用が出来る)、クエスト開始時点でマップ内のモンスターが図鑑登録よりも大きい場合と小さい場合に光って知らせてくれる。大きい場合と最大は緑色に光り、小さい場合と最少は黄色く光る。

 昨年のアプデで更に機能が拡張され、サイズサーチャーに最大最少狙いのモンスターを登録、その登録したモンスターを連続で倒すとポイントが加算され、上限の「50」まで貯めて登録モンスターの救援に入ると、確定で最大か最少のクエストに参加出来るようになった。

 途中で別のモンスターのクエストに行ったり、リセットか帰還、上限値に確定機能を使って最大か最少を引くと、貯めたポイントはゼロになる。目当てのサイズではない場合の離脱を防ぐ為の機能である。

 サイズサーチャーは、一度入手していれば、次回の金冠祭でナディアイベントは発生しない。使用出来る期間になれば使用出来る。時が経って亜空間の情報を把握した事により、サイズが早い段階でわかるようになったというのが、サイズサーチャーの設定である。


 ユッキーは、「サイズサーチャー」を駆使して、解放中のモンスターの最大と最少を一つずつ埋めていった。動きはまだぎこちないが、敵ダウン中に火力貢献出来るぐらいには、プレイヤースキルが上がった感じだ。


 その間、RISING SCOPEのサークルチャットにコメントが入った。

 オートマから「来月に入ったら、皆で集まって狩りをしませんか?」との事だった。オートマは、多分ハルガとREIのイザコザを知っているのだろうけど、あえてその事には触れなかった。僕は、「いいですね! 久しぶりに集まりましょう!」とチャットを流し、数時間後にルースターも「OK」とコメントを入れていた。

 ハルガのコメントは、数日経った現在も入っていない。

 ゲームにはログインしているのだが……。


 Sクラス人気モンスターズの期間が終わり、Nクラスモンスターの最大最少が解放された。

 Nクラスの人気所は、やはり「ティラオス」と「ティラメス」。

 ユッキーは、ティラオスのチャームを狙っているようで、十七時からティラオスのクエストを自発していた。

 三十分後に招待が来たのか、ユッキーはREIのルームへと移動した。REIは、ティラオスのサークルクエスト中で、ユッキーはそのクエストに参加した。

 これは……まさか……。


 ユッキーの参加したクエストのマップは、「山岳」。

 ユッキーは、瞬間移動でREIとティラオスのいるエリアへとワープした。

 エリアにいたティラオスは恐ろしく大きかった。

 これは……乱数調整で出現パターンが解析されているな。

 対策する必要があるけど……どうかな。

 Nクラスの難易度なので苦戦する事も無くユッキーとREIは、ティラオスのチャームを入手する事が出来た。


 初チャームでご機嫌なユッキーに、ハルガに勝ってご機嫌なREIが、サークルランキングについての話を振った。

 

「ユッキーちゃん、僕達のサークルがランキング三位になったんだよ!」


「へぇ、凄いですね」


 何……!?

 サークルランキングを確認してみると、三位が「DUKE YOUR HIGINESS」で、四位が「RISING SCOPE」になっていた。

 サークル発足以来「DUKE YOUR HIGINESS」に、ランキングで抜かれた事はなかったので、この順位は初めての事だ。

 ……これは、来月メンバーで集まるのが気まずいなぁ……。

 ……とはいえ、二週間前のチャームバトルに関して言えば、REIを含むDUKE YOUR HIGINESSのメンバーによる作戦は見事な物であった。

 一般ユーザー目線だと、REIとハルガの勝負は、ただの勝ち負けという風に見えるだろうが、長年ジュラバスを追ってきたユーザー目線になると、あの勝負は明確な世代交代の瞬間だった。

 DUKE YOUR HIGINESSによる見事な乱数調整とリセマラの統率を生で見たのであれば、順位を抜かれるというのは、致し方ないという結論にはなる。

 ハルガの単純に早く狩って回すというオーソドックスなやり方は、決して間違ってはいないが、あの舞台ではデジタル計算による勝ちとアナログ一辺倒の負けという構図が、勝負の明暗としてくっきりと見えてしまっていた。

 順位を抜かれたのは悔しいが、こればっかりは仕方ない。


 ユッキーとREIが盛り上がっていると、別に招待を受けていないNANAがルームに入ってきた。REIの部屋にユッキーがいたから、気になって見に来たのだろう。NANAとREIはフレンドではないが、NANAとユッキーはフレンドなので、ユッキー経由でREIの部屋に入れた形だ。


「お邪魔しまーす!」


「おや? NANAさんじゃないですか。そういえば、ユッキーちゃんとフレンドでしたね……」


 REI、ちょっと嫌そうな顔をする。


「君達ー! 二人で何やってるの?」


「……僕達のサークルが、RISING SCOPEを抜いて三位になったって話ですよ!」


「へぇ……まぁ、知ってたけどね! でも、私達のサークルは一……!」


 ユッキーに肩を叩かれるNANA。


「REIってば凄い! RISING SCOPEサイコー!」


 ユッキー、NANAの耳元へ。


「……DUKE YOUR HIGINESSですよ」


「……あ、DUKE YOUR HIGINESSサイコー!」


 眉をピクピクさせるREI。


「まぁ、いいでしょう……それで何の用です?」


「私も目当てのチャームはゲットだぜ! ……したので、要件は済んだかな」


「それでは、ごきげんよう」


 優雅に手を振るREI。


「ちょっとーちょっと、ちょっとー! キックしたそうな目で私を見ないでー! キック出来るものならしてみなさーい! 勿論、キックガードチケットは九十九枚持ってるわよ!」


「キックは無駄という事ですね。でも、流石に高貴で有名なNANAさんをキックなんてしませんよ。鍵をかけなかった僕が悪いので」


「わかればいいのよ! REIは物分かりがいいから、私大好き!」


 REI、内心イラッってしてそう。

 NANAの前に立つユッキー。


「NANA師匠、そろそろメインクエストを進めようかと……」


「そろそろそうね!」


「ユッキーちゃんのやるメインクエストって、タイムバーン・レックスですよね」


「じゃぁ、それ用の装備をレクチャーしていきまっしょい!」


 約三週間ぶりに、ユッキーのメインクエストが進行するっぽい流れになった。

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