248 科学所長のナディア
タンポポノンの納品クエストをクリアしたユッキーは、ログアウトしたオジョーと別れた後にバディに話しかけ、イベントが進行した。
「タンポポノンの花をこんなに取って来れたんだ。……ありがとう! これで、ナディアのお土産が準備出来たわね」
「取って来れたんだという言い回しが気になるが、まあいい。取り敢えずこれでいいんだな?」
「ユッキー、細かい事を気にしちゃ、ダ・メ・ン・ズ・だ・よ? 今回バスターランクの上に、危険度が高いクエストを受けられるハイバスターランク(HBR)を新設したので、優秀なバスターであるユッキーには、ハイバスターになってもらいます」
バスターランク(BR)の上限とハイバスターランク(HBR)が解放され、ユッキーのランクは、BRが「15」、HBRが「3」となった。
本来、BRの上限開放は、Sランククリア後にすぐ可能となっているが、一気にTクラスに進んだ為、このような形となった。
「おぉ、ランクが上がった」
「ナディア達が潜水艇に乗って浜辺まで来たとの連絡があったから、迎えに行きましょう」
「……達?」
「ナディアは武器防具製作を担当している部下達を数人引き連れて来るから」
「ふーん」
便利屋ハスキルーのヒジカタがやってきた。
「拙者も同行するワン」
「おう!」
ユッキーは、威勢のいい返事で応えた。
ユッキー、二号、バディ、ヒジカタは、オヤジのトラックで浜辺へと向かう。
竜人、写真廃犬、受付ジョー、漆黒犬が、荷台に乗っているという異様な光景が流れる。
浜辺付近に着くと、ユッキー達は荷台から降りて海岸沿いに向かった。海が一面に見える所に行くと、ゴォォォォオォッという音と共に、巨大な蒼の潜水艇が浮かび上がって来た。潜水艇の甲板から、ナディアがぴょこっと出て来る。
「よいしょ」
ちょっと傷んでいるブロンドの髪に褐色の肌を持つ彼女は、南国育ちを思わせるキャラで、服装は研究者のような白服だった。
ナディアは、機械オタク風男子の部下二人を引き連れて、ユッキー達が立っている場所まで行き、バディの前に立った。
「バディ、おヒサー」
「おヒサー!」
天然な雰囲気のナディアに対して、元気いっぱいのバディ。
その様子をジロジロ見ていたユッキーは、ぽつりと呟いた。
「ナディアは、オジョーに似てるな……」
ナディアが、オジョーに似ている?
僕は、オジョーの中の人、ソフィアを検索した。
ソフィアは、オレンジベージュの髪に白い肌、一方のナディアはブロンドヘアーに褐色の肌。カラーに関しては一致していないが、顔のパーツは物凄く似ていた。
ナディアのモデルに関しての話は、もしかしたら聞いていたかもしれない。
実装当時はブラックウォッシュだとかで、そういえば一部界隈で炎上していた事もあったな。そっちのイメージが自分の中で強く根付いてしまって、細かい事を忘れてしまっていた。
「今、私のビジュアルに感想を仰った方が、英雄と噂のバスターさん?」
「いや、俺は英雄じゃねぇ!」
「ウフフ、やっぱり。お名前は?」
肯定しても否定しても、この場面のナディアのセリフはこのセリフになる。
「ユッキーです」
「ユッキーとお呼びしても?」
「イェス!」
バディは、タンポポノンの花束をナディアに差し出した。
「タンポポノンの花、バスターさんが摘んできてくれたのよ?」
「あの花の近くには、今……恐ろしいモンスターが出現するはずなんだけど……凄腕のバスターさんなのね。そういう事なら、話を早く進めても大丈夫そう」
「……」
ユッキーは、目を細めてバディを見た。
バディは、目を合わせなかった。
ナディアは、話を続けた。
「今起きている事柄をスカイホライゾンで話そうと思ったけど、すぐに新たな拠点に向かいましょう」
「何が起きてるんです?」
「潜水艇の中で話しますので……バディ、ユッキー、ヒジカタと見慣れない犬……」
「二号っス!」
「二号、中に入ってくれない?」
「潜水艇に入りますか?」から、「はい」「いいえ」の選択肢が表示された。
「イェス!」
一行は潜水艇の中へ。
ナディアの部下に船内を案内される一行は、豪華な一室に入った。
青、蒼、藍の、壁面の中央に赤いテーブル。そこを囲んだ形でふかふかの赤いソファが設置されており、部屋左手のソファにユッキーと二号が、右手のソファにバディが、手前のソファにヒジカタが、奥のソファにナディアが座った。




