239 儚く飛び立つ青い鳥と、ごめんなさい
「ズパァァン!」という爆音の後に、「キーン!」と鐘が鳴り耳がバグったような演出と、「ジュプリュウウジュプシュ」的な効果音と共に、SC・デュークに砲弾が的中し、「3000」ものダメージを与えた。
その刹那、SC・デュークの断末魔が響いた。
勝利のBGMが鳴る。
「やったか」
ユッキーがやってないフラグを立てたのはさて置いて、オジサンが倒れたSC・デュークに近づくとイベントに入った。
ハルガは、ここでクエスト離脱となる。
「ワイ……ユルセヌ……ユルセヌ……」
そのセリフを吐いたSC・デュークは、灰のような色合いになった途端、細かく細分化され粉々になった。
「剝ぎ取れないのか?」
戸惑うオジサン。
その細分化された灰は、それぞれ青い小鳥となって空に飛んでいった。その小鳥は天の川のように流れ、亜空間の彼方へと消えていく。
コシロウは、額に手を当て遠く見た。
「何だったんだ……アレは」
時空砲を操作していたユッキーとストが、オジサンとコシロウのいるエリアの中心部に行った。
「皆さん……守って頂き、ありがとうございました」
項垂れるようにお辞儀をするスト。
コシロウは、A・ティラメスにライトライフルを向けた。
「次は、あの黄色い奴だよな」
ストは驚いて、A・ティラメスの前に立ちはだかった。
「この子はダメです!!」
ユッキーは、コシロウの頭にチョップ。
「どう見てもスト君を守ってるだろうが」
「痛いっスよ、パイセン!」
「それに多分、あの子はティラオスのアレだろうし……それより……」
ユッキーは、ストの方を向く。
「そのティラメスは、スト君とどういう関係なんだ?」
「……」
目に涙を溜めるスト。
「えっ、その、別に言いたくないなら……」
A・ティラメスは、ストを優しく手に持った。
「……ごめんなさい」
A・ティラメスが翼を広げると、ストは涙目でユッキーを見た。
「……ユッキーさん、オジサンさん、ごめんなさい!!」
A・ティラメスは、ストを手に持ったまま飛び去った。
S・ティラオスは、ユッキー達の前に立ちはだかる。
「ティラオウ」
S・ティラオスは、A・ティラメスの後に続いて飛行し、亜空間の彼方へと消えて行った。
この「ティラオウ」は、考察班曰く「ついてくんなよ」と言っているらしい。
「QUEST CLEAR?」の表記と共に、Sクラス最後のメインクエストが終了した。
アイテムドロップ画面が表示される。SC・デュークのウィーク個体から剥ぎ取りは行えないが、素材はここで幾つか手に入る。
ユッキーとオジサンが、拠点ルアーキャッスルに戻ると亜空間の異常が回復し、通常の空間へと戻っていた。しかし、施設の大半が大破しており、TIMカンパニーの職員は復旧に追われていた。
城門跡にトリィとバディがおり、二人からクエスト進行のアイコンが吹き出していた。何方かに話しかけると、第一エンディングに入る。
ラスボス戦からすぐエンディングに入らないのは、フルダイブユーザーのトイレ休憩などが考慮されている。
「オイ、トカゲ!」
ルームにまだハルガがいた。
「あ、ハルガさん、お手伝いありがとうございました! ウサギちゃんは?」
「エンディングを見た後、俺に感謝の言葉をくれて、疲れたからと言って先に離脱していったぞ」
「そうでしたか」
「オレも抜けるから。お前ら二人との狩りはもうやる気無いけど、今日は楽しかった。そんじゃな」
「ちょっと待って下さい!」
「なんだ?」
「俺と、フレンドになって下さい!」
竜人ユッキーは、勢いよく四十五度のお辞儀をした。




