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23 花の都 フランス・パリ

 花の都フランス・パリ。カフェやブティックが点在し、色とりどりの花で飾られている。特徴として、百を超える美術館や博物館が並び歴史的財産が大切にされている。

 ゆきひととオネットの結婚生活はパリでの二か月間。

 一行は空港からバスに乗り、そこから徒歩でオネットの自宅マンションに向かう。美しい街並みを見ながら歩いていると、個性的なバルコニーのある青い屋根の六階建てマンションの前に着いた。螺旋階段を上り五階へ。年季の入った建物でエレベーターなどは無い。玄関を開けると、靴棚の上に置いてある赤いリボンをつけた猫の縫いぐるみが出迎えた。

 オネットは靴を脱いで振り返る。


「初めてのパリはどうだい? それとも来たことがあったかな?」


「海外自体初めてですね。素敵な景色に見とれちゃいました」

 

 ゆきひとは額の汗を拭う。海外に渡航した記憶が無く、精神的に余裕が無い。その為質問された内容に当たり障りのない言葉で返してしまう。


「汗凄いけど大丈夫かい? 客間があるから休むといいよ」


 オネットの言葉に甘え客間のベットに横になる。こんなことで疲弊してしまうなんて不甲斐ない。ゆきひとは頭を抱えた。

 暫くして体を起こす。枕が固く寝心地が悪い。固い枕をサンドバックして客間を後にした。

 ダイニングに向かう。オネットはコーヒーを淹れて、クレイとセラを持て成していた。姉妹はL時のソファにちょこんと座っている。男っぽいクレイとお淑やかなセラだが、並んで座っている所を見ると不思議と雰囲気が似てくる。大の男が入りにくい空気ではあるが、ゆきひともその輪に加わった。


「さっそくなんだが、ゆきひと君。今の時代の法律に興味はないか?」


「あるかないかと言われたらありますね」


「では弁護士である自分の補佐をしてはくれないだろうか?」


「補佐……ですか?」


「そう。その為には少し法律の勉強をしてもらうことになる」


 興味はあるが勉強となると気が引ける。

 脳筋のゆきひとの頭が拒絶反応を示している。

 だが法律を知ることは武器になる。

 男は頭に気合いを入れた。


「俺、勉強します!」


「よしっ! そうきたら」

 

 オネットは分厚い青緑の本を持ってくる。テーブルにズシンという音。フランス語で書かれた法律の本だ。分厚さに興味を削がれるが、それ以前に問題があった。


「あの……俺……日本語以外読めません」


「えっ、でも自分達普通に話せてる……あーそうかナノマシンによる自動翻訳か! 一応ナノマシンに視覚での翻訳機能もあるが……一々翻訳してると時間がかかるかな」


 静まり返る。

 クレイとセラは興味ありげにコーヒーを飲んでいるが口を挟むことはしない。


「そうだ。明日は三人でパリ観光でもして来たらどうだ?」


「オネットさんは行かないんですか?」


「私はクライアントとの予定があるからな! いい機会だから楽しんでいってくれ!」


 オネットは結婚というものがわかっていなかった。

 自由にしてもらえるのはゆきひとにとって有難いことではあるが、本職の人間に話を聞けない。とはいえ法律の勉強をすると決めた以上、引き下がる訳にもいかない。自分なりに勉強をすることに決めた。

 

 次の日。

 目を覚ましてダイニングに向かうゆきひと。

 ダイニングは時間的に太陽の光が窓から差し込んでいてほんわかと暖かい空間になっていた。その空間にオネットはおらず、ソファでスマホを見て時間を潰しているセラの姿があった。


「オネットさんはもういない?」


「仕事に向かいましたよ」


「内容とかわかる?」


「守秘義務があるので詳しくは教えてくれませんでしたが、難しい案件らしいです。オネットさんは不倫や離婚を得意としている弁護士なので、そのどちらかと思います」

 

 何時の時代もやることは変わらない。だが疑問が浮かぶ。この世は九分九厘が女性だという点だ。


「女性同士の恋愛の縺れってことか」


「大抵の場合はそうですね」


「……え? 他に何かある?」

 

 セラは少し考え込む。


「私も法律に詳しくないので世界常識になるのですが、今の結婚って二パターンあるんですよ」


「ふむふむ」


「一つは同性婚。異性がいないので当然といえば当然ですね。……後一つはわかりますか?」


 後一つと言われて他に何があるのだろう。ゆきひとは自身の脳筋を揉み解すが正解は導けそうになかった。

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