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219 スーパークラスショータイム!

 Sクラス最初のメインクエストは「ボスジャングルスの討伐」だ。

 マップは「密林」となっている。いわゆるジャングルだ。

 高低差は山岳マップほどなく、割とスタンダードなエリアが多い。

 初期エリア数は「5~7」。川などの水上地形が多く、エリアチェンジの堺が一方通行だったりする場合があるのが最大の特徴である。場合によっては、モンスターをヒート状態にさせエリアを増やす事が、プレイヤーの有利になるケースもある。

 BGMはSクラスの序盤ボスで流れる「ジャングル大戦」。

 英語名は「JUNGLE DRAM」で意味が変わる。

 パーカッションが特徴的で、上位に進むバスターの鼓動と緊張感を表現した楽曲となっている。

 「密林」マップボスの専用曲と思われがちだが、別のマップでも流れる。


 初期エリアに、ユッキー、オジサン、セイカの三人。

 セイカは最初に「早く討伐出来た方がいいのよね?」と確認を入れた。

 ユッキーは「そうだな」と返答。

 セイカはコクンと頷くと一瞬にして消えた。

 ユッキーがまだTクラスに行ってないので詳細を省くが、Tクラスに突入したプレイヤーはエネルギーの集中しているエリアに瞬間移動できる。

 つまり、標的のいるモンスターのいるエリアにすぐ移動出来たり、乙ってもすぐ戦線復帰出来たりする。

 ユッキーとオジサンは飯を食うのを忘れたようで、バディを呼び出し食事カレーを作ってもらっていた。

 その頃、バディはボスジャングルスと一騎打ち。ボスジャングルスは周囲の物を喰らい巨大化してプレイヤーに襲い掛かるモンスター。ヒート状態になると、大ジャンプをしてプレイヤーを潰しにかかろうとする。

 個人的に好きなモンスターで、このモンスターの頭装備が特に気に入っている。ボスジャングルスの素材で作れる頭装備「ジャングルハット」は、スキル「早食い」が付与される。「早食い」は回復アイテムの消費スピードが早くなる。プレイヤーは回復アイテムの使用後、謎ポーズをとるので、その隙にまたダメージを喰らう事が多い。「早食い」スキルがあれば、その謎ポーズを軽減、もしくは無くす事が出来るのだ。

 一部モンスター相手や、ヒーラーにとっては必須スキルとなっている。


 ユッキーとオジサンが、バディのカレーを待っている間に、セイカは一人でボスジャングルスを討伐した。

 ユッキーは「えっ?」と困惑。素材をはぎ取れたのはセイカのみで、クエストクリア画面は、バディの意味深なドアップの顔で締めくくられた。……このバディの顔は、一時期SNS上でコラ画像化されて流行ったシーンだ。ユッキーは、バディの意味深フェイスを見て、「なんじゃこりゃぁ!」と叫んでいた。


 その日は「ボスジャングルスの討伐」のクリアで解散した。

 ゆうこ達の相手もあったし、仕方ないか。

 

 この討伐スピードに関しての感想は、やっぱそうなるよなといった感じだ。

 セイカの武器は武器種ツイスターの「SC・ツインダガー」。Tクラスに入ってからすぐに作れるTクラス武器だ。属性は火と氷。属性相性が悪くない限り、Tクラス序盤はほぼ全てのプレイヤーの武器が「SCシリーズ」で埋まる。

 防具はTクラスの序盤で戦う「ニャルガコウガ」の素材で作れる防具で固めていた。スキルは「回避性能3」「見切り5」「回避堅守3」。Tクラスでは回避が重要になってくる為、Tクラス序盤でこれが作れるようになっている。

 「回避性能」は文字通り回避の無敵時間が延びる。

 「見切り」はクリティカル率UP。

 「回避堅守」は回避成功時、防御力が上昇するスキルとなっている。

 回避堅守のスキルレベル3の場合は、回避一回成功で「防御力1、1倍」、二回で「1、2倍」、三回で「1、3倍」となる。防御力上昇は一分間持続し、回避に成功し続けている限りバフが継続される。

 装飾品は「攻撃3」で純粋な火力強化。スキルレベルが「3」なので、基礎攻撃力に「+15」加算される。

 スキル構成を見ると、火力と回避特化になっている。

 攻撃力は「295」で防御力は「501」。何方の数値も、ユッキー、オジサンのステータスの倍あった。

 

 Tクラスプレイヤーの装備は、Sクラスプレイヤーにとってはバランスブレイカーな存在である為、この速度での討伐は予想出来た。

 これは四天王にいくまで、こんな感じが続きそうだと思った。


 半日経ってユッキー達が戻って来た。

 昨日と打って変って拠点はルアーキャッスルになっていた。

 サークルリーダーの「ウサギ」がSクラスに突入したようだ。

 

 ユッキー達が最初にしたのは、「プレミアムパス」の入会だった。

 BTR,s ANGELのサークルメンバー全員がプレミアムパスに入会したようで、BTR,s ANGELのサークルはカンパニー化された。その時、世界ランキングの表示が見えた。BTR,s ANGELの世界ランキングは「1030位」となっていた。下から数えた方が早いが、出来たてほやほやのサークルなので順位としては順当といった所。

 少なくとも一人当たり、フルダイブ課金、オンライン課金、プレミアム課金で最低三十ドル課金している。五人合わせれば、百五十ドルになり、一気に重課金プレイヤーという感じになった。

 僕的には嬉しい限りだ。


 以前サークルランキングは人気が重要と話したが、基準となるのは、BT、TP、PP、TPを集約したサークル運営費の高さとなる。一般プレイヤーからもゲーム内電子マネーを集める事が出来、サークルメンバーや一般プレイヤーからゲーム内電子マネーをサークル資金に振り込んで貰う事によってサークルのランキングが上昇する。ゲーム内電子マネーはゲームポイントに変換出来る要素がある為、通常プレイヤーから収集するのも若干シビアなシステムとなっている。逆に根強いファンが出来れば、一気にランキングの上位にいく事も可能だったりする。

 ランキング上位にいったからといって、ゲーム内容が有利になる事も無いが、ランキング一桁台になれば、ゲームイベントに呼ばれたり、YOーチューバー的には人を集めやすくなるというメリットもある。


 続いてユッキー達は、Sクラスで火力が上昇した状態異常御三家「毒獣ボスハイッエナの討伐」「痺獣ボスヒョーの討伐」「眠獣ボスヤァバの討伐」へと向かう。

 マップは「密林」固定。BGMは「疾風演」。

 Nクラスで戦った三体の強化版で新モーションも増えているが、拡張種ではないのでヒート状態は発生しない。彼らの敵ではないだろう。この三体もユッキーとオジサンが、最初のエリアでバディにカレーを作ってもらっている間に、セイカ一人で撃破。奇跡的に三連続で、バディの意味深な料理シーンのクリア画面となった。「いや怖いって」というユッキーの小言が聞こえた。

 一体につき、一分ちょっとの討伐スピード。これは装備性能の高さだけではなく、セイカ自身のプレイヤースキルも高いと見て間違いない。


 次の二体は状態異常も行う属性ボス。

 「泡獣ポン・デ・バブルの討伐」と「溶魚ガストドンの討伐」の二クエスト。

 BGMは「ジャングル大戦」。

 クエストに向かう前にユッキーとオジサンは装備更新。

 ユッキーはジェットパーツを共有出来る「ジェットofランス」の武器を作り、オジサンはライトと同じガンナー装備の「ヘビィマシンガン」の武器を作った。どちらも鉱石系でSクラスの「フルメタルシリーズ」。

 防具は頭装備だけ「ジャングルハット」に更新した。

 

 まず「泡獣ポン・デ・バブルの討伐」クエストへ。マップは「密林」。

 ポン・デ・バブルは首周りにドーナツ状の浮わ袋があるライオンのような見た目で雄個体とされている。雌のハーレムを作るモテモテの水属性モンスター。

 戦闘序盤はバブル噴射やバブル光線を連射したり、水上をコロコロ転がりながら戦う。ヒート状態になるとバブルを集めて宙に浮き、地上のバスターから少し高い位置で戦うようになる。大技の「バブルバケーション」には睡眠効果があり、当たると危険だが、大技直後に必ずエリアチェンジするので、実の所、一度耐えれば怖くない。

 ヒート状態から大技を放って増えるエリアは固定で「2」。

 長々とポン・デ・バブルの紹介をしたが、セイカ主体で五分討伐。


 「溶魚ガストドンの討伐」のクエストへ。マップは初出の「火山」。

 エリアは「6~8」。スリップダメージの発生する床があるのが特徴のマップ。

 ガストドンはNクラスで戦った「アストドン」の亜種的な個体。

 戦闘序盤は、火炎ブレスを放ち地表に潜って泳ぐ。ヒート状態になりやすく、ヒート状態になると毒ブレスをするようになるが、地表を走るのでヒート状態の方が戦いやすかったりする。大技は「ガストヘルブレス」。被弾すると「火やられ」と「毒」のスリップダメージが恐ろしい事になる為、回復しないとえらい事になる。

 ヒート状態から大技を放って増えるエリアは固定で「1」。

 セイカは有利属性である水武器「ミラージュサイクロン」を使用し、こちらも五分討伐。セイカは属性も意識出来る子だった。


 この二体をクリアすると「豊潤の竜アース・ティラメスの討伐」クエストを受注出来る。マップは「密林」固定。BGMは「大地と陸の共振」。

 密林マップには花びらの舞うエリアがあり、そのエリアで戦うと、美しく戦う彼女を拝む事が出来る。Sクラスにおいての彼女は中ボス戦のイメージがある。イベントに出現したティラメスとは別個体。

 土属性と麻痺を操るので、初見プレイヤーにとっては難敵だが、セイカ姉さんが装飾品で麻痺耐性スキルを付けて十分で討伐。


 続いての二体は「氷馬ぺガリース」と「雷麻リャフリャフ」。

 ぺガリースはエアコーンの、雷麻リャフリャフはフリャフリャの亜種個体のような位置付けとなっている。

 マップは久々の「山岳」で夜固定。ボスBGMは「大気遊戯」。


 この二体のクエストの特徴は、それぞれSクラスラスボス後に受注出来るモンスターが五割の確率で乱入してくるギミック。二体同時はプレイヤーにとって危険だが、乱戦に持ち込んで、討伐目標を倒してもらう戦術も可能。


 まず「氷馬ぺガリース」から。

 氷属性のモンスターで、羽ばたきながら戦う。

 肉質が固いので「ブルー」以上の切れ味の武器がないと攻撃が弾かれる上に、羽ばたきの風を数秒受けていると、睡眠状態になってしまう難敵。

 近接の場合「睡眠耐性」スキルは必須。

 オジサンはNクラスで使用した「ハスキルーガン」を装備し、セイカは「SC・ツインダガー」の高火力に、装飾品で「睡眠耐性」スキルをつけた。

 ユッキーは大剣に戻し、相手が状態異常中に溜め切りを当てる気だ! 緊張からかユッキーの体はフルフルと震えていた。

 戦闘は、状態異常を狙ったオジサンに、ぺガリースの氷結光線が飛んでいきワンパン。防具をほとんど更新していないので、ワンパンは致し方なし。オジサンは「ごめんなさい!」のチャット。残りの二人は「ドンマイ」を入れた。

 果敢に向かって戦うのはセイカで、ユッキーは機動力の高いぺガリースに追いつけなかった。ピカッと閃いた表情のユッキーは、目つぶし系アイテム「暁玉」を定期的に投げた。ぺガリースは肉質が固く機動力が高い反面、体力は低い。オジサンが戦線復帰する頃には、セイカがほとんど敵の体力を削りそのまま討伐した。

 あのゴリラが乱入してくるとこのクエストは楽なのだが、今回は乱入してこなかった。


 「雷麻リャフリャフ」のクエストへ。

 雷属性になった代わりに、睡眠攻撃をしなくなった。しかも蝸牛から蛞蝓になったので防御力も低い。フリャフリャに比べて火力が高いが、戦いやすくなっている。ヒート状態になると電磁浮遊するが、二段ジャンプすれば普通に届く。目が無いので閃光アイテムが効かず、雷麻痺モンスターなので麻痺罠も効かない。

 戦闘の序盤はその仕様に気付かなかったユッキーが、閃光アイテムを無駄にしていた。数分後、イビルゲイの上位種「デビルゲイ」が乱入してきて、乱戦状態に。デビルゲイはリャフリャフよりも格上な為、リャフリャフを一方的にポコパンして倒してくれた。デビルゲイはSクラスでは初出の「酸系」状態異常モンスターで、リャフリャフは酸まみれで見るも無残な姿に。オジサンはその様子を見て「何かかわいそう」と呟いていた。


 Sクラスのメインクエストを怒涛の如くクリアして、この日は終了。

 次のクエストは、あのスカイ・ティラオスと再び対峙する。

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