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215 新調査拠点ルアーキャッスル

 それは見事な城壁都市のようであった。

 門番には、焔色ハスキルーと雫色のハスキルーがお出迎え。場内は、対モンスター用の兵器が無造作に並び、その奥にバスターやTIM職員の為の施設が蟻の巣のように枝分かれして造られていた。

 内装の殆どは茶色か灰色で、大部分は鋼で出来ているようだった。


 トリィに連れられて、城内を関心しながら見て回るユッキーが抱いたであろう感想を、僕なりに代弁してみました。


「どうじゃ? 凄い所じゃろ」


「トリィさん。凄いパネェっスよ」


 そんな会話がちらほらと流れた後、ルアーキャッスルの会議室で話し合いが行われた。室内には、ユッキー、オジサン、スト、バディ、トリィと、門の所にいたハスキルー二体がいた。


「この拠点の新たなメンバー、キングとクィンじゃ」


 ストが手を広げて紹介すると、二体のハスキルーが飛び出した。


「わしの名前はキングだワン! よろしくなのだ!」


「あちしの名前はクィンなの! よろしくなのよ!」


 キングは焔色のハスキルーで雄、クィンは雫色のハスキルーで雌となっている。


「キングとクィンだな。よろしくなっ!」


「キングとクィンは、スカイホライゾン担当のヒジカタの代役をしてくれる。キングには電子マネー交換所などの新たな施設に対応しているので、ポイントが溜まったら利用してみてくれ」


 ゲーム内に説明が入る。

 「ポイント交換所」について。

 キングの交換所では、BT、TP、PP、FP、それぞれのポイントと、その時流通している貴重なアイテムと交換出来る。

 いらない道具を売って、ポイントを入手することも可能で、その日のレーティングで入手ポイントが変わる。

 BT枠で売れば、BTが貰え、BT内でその売った商品が流通する。一度に並ぶ商品は五十種類。一時間ごとに商品が変わる。基本的にトレンド上位の商品が並び、たまにレア素材が数点出品されたりする。全世界のプレイヤーの流したアイテムが対象で膨大な数になるが、売られていない商品が流通する事は決してない。

 ゲーム内電子マネーは、課金アイテム購入などに使えるゲームポイントとも交換出来るので、ゲームポイントを溜めている人は、アイテムを売る目的で利用する場合がほとんどだ。


 ストが手を上げて話を進める。


「クエストの受注は何方の拠点でも出来ます。ルアーキャッスルではバディさんに、スカイホライゾンの方では、新入社員のボディさんがいますので、そちらで受注して下さい」


「名前が似てるな……。でもまぁ、今まで通りスカイホライゾンを拠点に活動してもいいのか」


 ユッキーの発言に、バディが手を上げる。


「ルアーキャッスルではトリィが調理担当ですが、スカイホライゾンでは今まで通り私が調理します。ウフフ、逃しませんよ」


 ユッキー、バディを一瞥。


「……それはともかく、気になる事があるんだが?」


「何じゃ?」


「会議に参加しているメンバーなんだけど、人間が少ないような。主要メンバーは犬……いや、ハスキルーが多いし」


 この質問に反応したのはバディだ。


「うち、TIMカンパニーはアルバイトが多いんですよ」


「……アルバイト?」


「そう。職人気質が多くて、会議に参加したがらない人もいますが、隙間時間に働きたいとか、好きな日に働きたいとか、数か月で職種を変える子もいますし、そういうバイトの子達に深い事情は話せないじゃないですか。それだったら長時間労働してくれる知性の高いハスキルーに責任のある仕事を任せた方が理に適っているというか」


「いきなり生々しい設定やめてぇっ!」


「AIが盛んだった時代もあったようですし、今は仕事を犬に任せる時代だと考えてもらえれば」


「そんな時代来るかなー? とりま、犬の惑星みたいな設定じゃないって事だな」


「ウフフ、可笑しな事を言うのね。ユッキーったら」


「バディ……お前、キャラがブレてきてるぞ」


「見てわかると思いますが、TIMカンパニーは新しい会社なので若い子が多いんですよ。最年長は三十代のトリィですし」


「トリィさん、えぇ……年上ぇ。……でもオヤジさんもいたような」


「オヤジさんはTIMカンパニーの社員じゃありません。現地の人で業務提携しているだけなので、彼も会社の内情には詳しくありませんよ」


 スト、挙手。


「話を戻しますが、ここで拡張種の生態を調べ、今後起こりうる未曾有の危機に備えたいと思います!」


「何時の間にか話が大事になってきたな」


「この先は、ユッキーさんとオジサンさんの活躍にかかっています!」


 オジサン、挙手。


「スト君、そこはオジサンさんじゃなくて、オジサンでいいぞ」


「目上の方を呼び捨てなんて、出来ないですよ!」


「どう言ったらいいのか……難しいな」


「ここにきて、オジサンの名前に元々敬称が入っている事に問題が出てきたな」


「スト君、話しの腰を折ってすまない。話を続けてくれ」


「ハイッ! オジサンさん!」


 オジサンは、そっぽを向いて笑いを堪えていた。


「これからは各地に出現した亜空間内のジュラシックモンスターを積極的に討伐し、研究を進めていきたいと思います。よろしくお願いします!」


 ストがお辞儀をした所で、イベントが終了し解散となった。


 さっそくユッキーは、クエスト受注カウンターにいるバディに話しかけた。

 ここですぐにクエストに向かわず、ルームを製作。これにより、別のプレイヤーがクエストを受注する時点で入室可能となる。

 ルームの人数上限は十二人、一つクエストに参加出来るのは四人までになる。


 僕はふと疑問に思った。

 ユッキー達のサークル、BTR,s ANGELのメンバーは現在「ウサギ」「ラスカル」「ユッキー」「オジサン」の四人。

 この四人でクエストを進行しないのかな? ……と。

 敵モンスターの体力が固定だったNクラスと違い、Sクラスはクエスト参加人数によって体力も増減する為、人数の多さが全てにおいて有利にはならないが、複数人いれば、DPS(攻撃役)タンク(防御役)ヒーラー(回復役)……と、役割分担が出来て戦闘を有利に進められる。そして何より、楽しい! ……はず。

 セカンドがいる事で人数が溢れるからという理由もあるかもしれないが、それにしても別々にプレイしている事が不可解だった。


 ユッキーがルームを製作して十分が経過すると、プレイヤーの「セイカ」が入室してきた。

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