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199 飄獣ボスジャッカルの討伐

 「QUEST START」という表記がバァンと表示されて、ヒュゥンと消えた。

 ユッキー、オジサン、セカンドは、戦闘マップに移動。

 草原がベースのマップだが、亜空間内の為、少し異様な雰囲気があった。

 五つの小さなエリアに分かれており、最初のエリアには道具ボックスと、回復薬などが入っている支給ボックス、それと調理を行える場所があった。


「そういえば、食事を取るように言われたけど、食べるの忘れたな」


 初心者上級者共にあるあるである。


「ご主人、あそこの焚火跡みたいな所で、食事が出来るみたいだぞ?」


「まぁ、最初のクエストだし大丈夫だろ」


 次のマップに移動すると枝分かれし、何方に進んでも最後のエリアに辿り着く単純なマップになっていた。これは初見のみ固定で、戦闘エリアはランダム生成となっている。エリア数は多少ぶれる程度で、初期エリア数が五つの場合、四から六のエリア数になる。毎度マップが変化する為、特定のイベントアイテムを入手するまで、一度通過しないとミニマップは明確に表示されない。


「ギァ、ギャオ!」


 最後のエリアで、飄獣ボスジャッカルが登場。

 名前から連想出来るそのまんまの見た目の小ボスである。

 視点をコロコロ変えて、プレーリードック感がある。

 序盤のボスなだけあって強くはないが、小型な為すばしっこい。


 ユッキーとオジサンの武器が光る。

 ボスと同エリアに入った為、武器性能が解放され、1時間40分の制限時間が発生した。プレイヤーは二人なので、通常の二倍の速度で時間が経過する。


「ティヤ!」


 ユッキーの大剣は、相変わらず当たらない。

 ブンブン大剣を振り回すユッキーをよそに、犬のセカンドがヘイトを稼ぎ、その間にオジサンがライトライフルで攻撃。チュートリアルで学んだ事を、そのまま戦術に落とし込んでいた。


「ヘブシッ! ちょっと待って、体力が半分以上減った」


 ボスジャッカルのしっぽビンタを喰らうユッキー。


「次は飯を食った方がよさそうだな」


 オジサンは、ユッキーの被弾を見て冷静に分析していた。

 ライトライフルでコンスタントにダメージを与えていると、ボスジャッカルは瀕死状態になり、足を引きずって逃げ始めた。


「ギャーオ、ギャーオ、ギャーオ」


「足引きずってるのに、移動速度が速いんだけど」


「ご主人、ボスは眠って休息をとる。無理に追いかけず、眠るまで待とう」


「お、おう」


 セカンドのチャットが流れた。

 AIハスキル―は、攻略サイトを検索しながらプレイするタイプが多い。

 優秀と言われる所以である。

 このセカンドもそのタイプのようだ。


 エリアを一周回って、ボスジャッカルは、最後のエリアの小高い場所で眠りについた。スヤァといった表情で眠っている。


「こう見ると、可愛いな」


「ご主人、まだ一ヒットもしてないだろう。溜め切りを当てるなら今だぞ」


「何かちょっと釈然としないけど、二人共ありがとう」


 ユッキーは溜め切りを当て、無事最初のクエストをクリアした。

 拠点に戻った一同は、ホライゾンハウスにて、ストにモンスター討伐達成の報告をした。


「皆さん、どうでしたか?」


「中々、絶好調だったぜぇ……」


「ご主人、見栄を張ってるな」


「すみません、まぐれで溜め切りが当たりました」


「流石、ティラオス相手に好戦したバスターさん達です。僕の杞憂は余計でしたね」


 ズカズカと足音。


「あれだけご飯をちゃんと食べてって言ったのに、食べなかったでしょー!」


 バディ登場。

 クエスト前に食事を取らないと、確定でこのセリフが入る。


「そういえば、トリィはいた?」


「いなかったぞー」


「ほんと何処いったんだろー。見つけたら報告お願いしますね。もう、プンプン丸。本当にプンプン丸!」


 そう言って、バディは嵐のように去っていった。

 ユッキーは、食事の手を止める。


「誰だよ、プンプン丸とかいうセリフ入れたライターは」


「バスターさん達、明日はどうします? 始めてのクエストで疲れたんじゃないですか? あしたは休みますか? それとも新たなクエストを受注します?」


 ストのフルダイブ型専用のセリフ。

 ユーザーに休憩を促してくれる。

 ここで休むを選択すると、セーブしてログアウト。

 新たなクエストを受注するを選ぶと、そのままイベントが進行する。


「ちょっと疲れたし、王子とも少し話をしたいから、一端セーブして終わるか」


 王子? ……誰の事だろうか。


「そうだな」


 オジサンも疲れた様子だった。

 フルダイブ型VRゲームの特徴で、ゲーム世界でリアル溢れる戦闘をこなす事は、プレイヤーの心身共に多大な負荷をかけるようだ。

 ユッキー、オジサン、セカンドは、セーブ後にログアウトし、その日はログインしなかった。


 彼らが次回ログインするまでに、僕は「王子」について調べ始めた。

 まずは情報の多いユッキーから調べた。

 彼はメンズ・オークションに出品されて、複数の女性と形だけの結婚を重ね、最後は本気になった女性と駆け落ちをしたそうだ。

 中々ドラマチックな人生を送ってらっしゃる。

 それから数か月の間消息を絶つが、その後、京都やオーストラリアで目撃されている。どういう経緯があったのかはわからないが、京都で目撃された時点で、複数人での活動を始めたようだ。京都にいた時は、アンドロイドに襲われたらしい。

 

 この事件を詳しく解説した記事に目を通すと、「フリージオ・エトワール」という人物に辿り着いた。彼はフランスの王族らしく、王子キャラで通っている。

 ユッキーの言った「王子」とは、恐らくこの「フリージオ・エトワール」の事だ。なるほど合点がいった。

 フルダイブ型のゲーム機器は高価な為、金銭的に余裕がないと購入は難しい。

 騒動を起こし無収入と思われる彼らが、ジュラシックバスターのフルダイブVRゲームをプレイ出来ているのは、バックにフリージオがいるからだ。

 フリージオは、ユッキー達のパトロンなのだろう。

 セカンドについても再度調べたが、記事は見当たらなかった。

 リアルではアンドロイドではなく、体の無いタイプのAIかもしれない。

 

 ゲームの外に興味の無かった僕だが、彼らの事を調べれば調べるほど謎が深まり、彼らの目的をより一層知りたくなった。

 何だろう。胸がドキドキし、ワクワクが止まらない。

 今までも、他者プレイヤーのハンティング動画を見漁ったりしていたが、ハンティングスキルに興奮する事はあっても、プレイヤーのバックボーンで興奮する事は無かった。しかも今までの興奮とは特色が違う気がする。


 これが……推しを見つけたという感覚なのだろうか。

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