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198 調査拠点スカイホライズン

 それは、小高い丘の上にあった。

 武器や防具を扱った露店が中央の噴水広場を囲んで並び、西側に三階建ての木造建築の宿兼調査施設が建設されていた。東側にはクエスト受注カウンターがあり、クエストを受注したバスター達はここからワイルドサバンナへと調査に向かう。

 一つ一つの施設が密集しており、序盤の町といった雰囲気がある。

 調査する為の場所故に、調査施設をうろついている町民などはいない。拠点で働いている人達ばかりだ。


 トラックから降りた一同。

 ストはプレイヤーの方を向いた。


「まずは、あの三階建ての施設、ホライズンハウスでバスター登録をしてもらいます。その後はバディさんに装備やクエストについて教えてもらって下さい」


「お任せ下さい!」


 敬礼するバディ。


「不安だなぁ」


 ユッキーは未だにバディを敵視していたが、まずはホライズンハウスの中でバスター登録を行う。ホライゾンハウスの内装は簡易な木造建築だがピリッとした空気があり、ユッキーとオジサンは少し緊張しているようだった。一方、お供のハスキルーであるセカンドは、興味津々といった様子で、壺などの骨董品を見ながら進んでいた。


「これはNランクのバスターである証のバスター証になります。お受け取り下さい」


 バスター証を受け取るユッキーとオジサン。


「Nランクという事は、上のランクもあるんですか?」


「これで、何時でもクエストを受注出来ますし、バスター専用武器も扱えます」


「……そうだ、進行外の会話は無理だった。バスター専用武器とは?」


「ティラオスとの交戦中に、亜空間へ放った武器ですね。重かったのでオヤジさんにも手伝ってもらいました。あの武器は亜空間において真価を発揮する武器で、普通の世界、今僕達のいる空間ですね……こちらではセーフティがかけられていて、ただの金属片にしかなりませんが、亜空間でセーフティを外す事で、近接武器は凄まじい切れ味になったり、ガンナー武器は一部の弾が自動生成されて、無限に弾を撃つ事が出来るようになったりします」


「モンハァンとは少し違うみたいだな」


「ユッキーはモンハァンを知っているのか?」


「プレイした事はあるけど、ゲーマーってほどではないからライトユーザー並の腕前しかなかったな。そういえば俺、ワールドが発売した年に未来に飛ばされたのか」


 ユッキー、オジサン、セカンドは、ストに連れられて三階へ。


「この部屋をご自由にお使い下さい」


 3LDKに二段ベットが二つと中々に広い。

 ユッキーとオジサンは、ドアをバシバシと開き内装を確認。

 ポッと出の人間達が使うには少々豪華な造りであった。


「まるで俺達がここに来るのを予測していたみたいに準備がいいな」


「クエストや武器防具に関する事はバディさんに聞いて下さい。多分、噴水広場近くのクエストカウンターで待機しています。今すぐ向かいますか?」


「これは噴水広場まで移動距離をスキップする流れか。YES」


 一同は一瞬にしてクエストカウンターの前へ。

 真昼の空が夕焼け色に染まっており、カウンター奥には笑顔のバディがいた。

 

「皆さんお待ちしておりました。こーれーかーらー私が、お・も・て・な・し、致します!」


「こういうセリフはスキップできないかな」


「まず何から説明しましょうか」


 プレイヤーの脳裏に選択肢が流れている所ですが、ここでのゲームシステムの内容は、僕がザックリと解説していきます。

 このゲーム「ジュラシックバスター」は、ハックアンドスラッシュ、略してハクスラが主体のアクションゲームとなっています。ハクスラとは敵との戦闘を繰り返し、そのドロップしたアイテムで装備を強化し、また新たな強敵に戦いを挑む事を繰り返し行うことを主軸としたゲームジャンルであり、ジュラバスが参考にしたゲーム、モンハァンもこのジャンルに該当します。


 クエストは主に受付のバディから受注し、クエストに向かう流れになりますが、このゲームのクエスト形態は大きく二つに分かれます。

 まず、モンスターとの戦闘は基本亜空間で行われ、細かく分かれたエリアでの戦闘となります。つまり、オープンワールドではない為、エリアチェンジによる緊急避難が可能となっています。

 一方、採取クエストなどは、この世界の住人が住まうオープンワールドで行われ、広大なマップを探索する事になります。オープンワールド内では、ジュラシックモンスターは出現せず、一般的な動植物が普通に生息していたりします。

 探索中や採取クエスト中に亜空間の入り口を発見した場合、「特殊クエストを発見」という内容が表示され、メインクエストとは別のクエストを受付ジョーから受注出来るようになります。亜空間の入り口は、プレイヤー視点で、もやもやした球状のエネルギーボールのような物体が浮かんで見える形となります。

 難易度や出現するジュラシックモンスターはランク帯で分かれますが、強いモンスターと序盤から戦えるようになっています。


 ジュラシックモンスターとの戦闘について。

 戦闘は亜空間内で行われ、ここでのみバスター専用武器が扱えます。

 制限時間の仕様が特殊で、武器のセーフティを開放するか、モンスターと同じエリアに入ると、1プレイヤーにつき50分の時間制限が発生します。この制限時間は、力を解放した武器が使用可能な時間で、人数分時間は加算されますが、時間の減る速度も人数分倍増していきます。誰か一人でも武器解放が行われると、戦闘エリア内にいるプレイヤー全員の武器のセーフティが強制的に解放されます。

 プレイヤーであるバスターが一回戦闘不能になる事を一乙といいますが、一乙事に制限時間が半分になります。なので、序盤に乙ると一気に時間を失う為、その辺りは注意が必要です。制限時間、つまり解放武器の使用時間が切れるとクエスト失敗となります。

 大半のクエストには、乙制限が設けられており、一乙事に制限時間が半減する基本設定に併せて、戦闘不能回数制限が三回までなら、三乙でクエスト失敗となります。これは依頼人、もしくはTIMカンパニーによるドクターストップのようなものと考えて下さい。そういう設定です。


 戦闘可能なパーティは最大で四人。これ以上の武器解放はエネルギーがオーバーフローして空間が崩壊するという設定がある為、制限が設けられています。

 NPCハスキルーは人数に入りませんが、AIハスキルーは一人分として扱われます。サービス開始時はAIハスキルーも人数に入りませんでしたが、AIハスキル―が優秀過ぎた為、Sクラス実装時にナーフされました。

 エリアの最初の地点に、拠点のアイテムボックスと中身が共有してしているボックスがあり、そこで武器の交換は出来ますが、戦闘プレイヤーが一人の場合三回交換出来、プレイヤーが二人の場合は二回、プレイヤーが三人の場合は誰かが一回交換出来、四人のフルメンバー場合は武器交換を行えません。

 武器のエネルギー解放で失った制限時間は、拠点で充電しないと回復しない為、連続で使用すると制限時間が引き継がれます。つまり、複数の武器を使い分ける必要があります。充電した武器は一クエストを回すと回復しますが、高ランク帯で作れる武器はクールタイムに時間がかかるものあり、お気に入りの武器を連続で使用したい場合は、同武器を複数本揃える必要があります。


 武器防具について。

 武器はNランクの時点で「大剣」「刀」「ランス」「ツイスター」「ハンマー」「ライトライフル」「ヘビィマシンガン」の七種。

 Sランクに入ると、ランスが派生し「ジェットofランス」と「シールドandランス」の二種になり、「パヒュームロッド」と「魔導弓」が追加されます。そして「大剣」が「滑空大剣」に、「ハンマー」が「アトミックハンマー」へと名称が変わったりします。

 「滑空大剣」「刀」「ジェットofランス」「シールドandランス」「ツイスター」「アトミックハンマー」「パヒュームロッド」の七種が剣士武器で、「ライトライフル」「ヘビィマシンガン」「魔導弓」の三種がガンナー武器となります。

 現時点では十種類の武器が実装されています。

 防具は、「頭」「胴」「腕」「腰」「脚」の五種で、この五つの防具を組み合わせてスキルを発動させる辺りはモンハァンと変わりません。ただ、武器が制限時間に直結しているので、装備セットは防具のみしか記憶できません。

 細かい説明は、ユッキー達がSランクに上がってからします。


 一通りバディから説明を受けたユッキー達は、拠点の施設で一晩を過ごし、ゲーム内時間が昼になった頃、バディから最初のNランクのクエスト「ボスジャッカルの討伐」クエストを受注した。

 その後、すぐにクエストには出発せずに拠点を見渡す一同。

 彼らの視界には、武器屋、防具屋、道具屋などなど、若い調査員達が働いている様子が見えている事だろう。

 彼らが拠点から外へ視点を変えると、ストとバディが見送りに来た。


「ハァハァ」


 息切れするスト。

 まず声を発したのはバディだ。


「皆さん、食事はされましたか?」


「食事?」


「食事をすると能力値や体力がUPするんですよー! 初心者のバスターさんはよく食事を忘れるので」


「そういえばモンハァンにも、そんなシステムがあったな。誰が作るんだ?」


「私です!」


 露骨に嫌な表情をするユッキー。


「実は専属料理スタッフ……私の相棒のハスキルーが食材を探しにいったまま戻って来ないんです。もし見かけたら声をかけてつれて帰ってくれませんか? これが、私の相棒のハスキルー、トリィです」


「ユッキー、名前はトリィデスじゃなくて、トリィだぞ?」


「わかってるよオジサン。……最近、俺の父親みたいな感じになってきたな」


「うぐぅ」


「それにしても犬なのに名前は鳥なのか」


 バディから写真を見せられる一同。

 そこには深い青の毛並みの犬顔の獣人が映っていた。

 体格がよく、武人のような出で立ちだった。


「獣人じゃねーか!」


「見た目は厳ついですけど、料理人なんですよ」


 嬉しそうなバディ。


「バディさんが、もっと美味しい物を食べてみたいとか言うから……」


「えへへー、私食いしん坊なものでー」


 バディには食いしん坊という設定がある。

 クエストを受注しないで彼女を観察していると何かしら食っている。

 トリィから料理を教わっているバディは、Nランク中と亜空間内での調理担当者でもある。


「トリィの見た目に驚かれたかもしれませんが、知性の高いハスキルーは突然変異で獣人化する事もあるので、皆さんのハスキルーも、いずれそういう事があるかもしれないですね」


「それは私に対してのフラグか?」


 反応するセカンド。


「僕は力が弱くて拠点から皆さんの無事を祈る事しかできませんが、これからバスターとしてのご活躍をここで応援しています!」


「私も受付ジョーとして応援してるよ! 頑張ってね! いってらっしゃーい!」


 ストとバディとの会話を終えた彼らは、拠点の外へと歩を進める。


「ユッキー、ゲームでのこういった体験は初めてなのだが、冒険の始まりはこうもワクワクするものなのだな」


「ゲームもいいもんだろ? オジサン」


「ご主人ら、クエストの出発を二人共念じないと、クエストが始まらないぞ?」


「そうゆう仕様か。それにしてもリアルと違って、この世界では砕けた性格の犬になってるな、セカンド」


「犬ですが何か? 早く行きますよ、オジサン達」


「俺はまだオジサンじゃない!」


 ユッキーは、困ったような笑い顔でぷんすかと怒った。

 オジサンは、その様子を見て笑いながらなだめた。

 

 この地平線と澄み渡る空から、彼らのジュラシックバスター生活、そして冒険活劇が始まるのだ。

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