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181 新人記者は四十度

 京都取材が終わって、アメリカのニューヨークに帰ってから私はダウンした。

四十度近い熱が出て、借りてる部屋のベットから動けなくなった。張り切りすぎたのかもしれない。メディカルチェックやナノマシンの体調管理システムにより、多少無理をしても大丈夫なご時世で、高熱と咳と喉の痛みが発症するのだから、知らぬ内に相当体に負担をかけていたようだ。

 私が寝込んでいる間二号は、食事、薬の調達、炊事洗濯家事全般をこなしてくれた。おまけに私の体調の心配までしているようだった。カメラや写真にしか興味がないと思っていたので、その辺りは意外な行動だと思った。流石に主がヤバい状態だと、そんな感じになるのだろうか。二号はアンドロイドだから病気をうつす心配がなく、私の額に手を当てて熱を即座に図ってくれた。体温の感知機能があるようだ。なんていうか、アンドロイドを貰って心底良かったとこの時に思った。情が湧いてきているのも感じた。それは勿論恋愛感情ではない。相棒としての信頼、そう、そういった信頼関係が築けたようで嬉しかった。

 特に深い考えもなくアンドロイドの暴走事件を追っていたが、真剣に取り組んで真相を暴きたいという感情が湧いた。

 二号は人間らしいアンドロイドだ。いずれ暴走事件に巻き込まれて破壊されてしまうかもしれない。それは阻止したいと思った。


 十一月中旬から下旬までは、病気の治療に専念しながら、京都での取材内容をPCの原稿に少しずつ起こしていた。その完成品を上げたのは、十二月に入ってから。


 アメリカのニューヨークにあるセンテンスプティングの本社。

 編集長のデスクに見慣れないマッサージ器具のような椅子が置かれていた。編集長がその椅子を使っている時に話す機会があった。会話の内容は、オーストラリアにいるオカルトマニアの女性から取材をして欲しいとの依頼があり、その依頼をどうするかという話を私にしてきた。要約すると、興味があるなら行ってみればという感じで、少し迷ったがその依頼を受ける事にした。

 それからマッサージチェアの話題になった。なんでもマッサージを受けながら、体内のナノマシンを連動させて、原稿を書けるという夢の機械らしい。病気でダウンした時に使いたかったと一瞬思ったが、キーボードを指でタップして文字を起こす作業が好きな私は、結局使わなくなるのだろうなとは思った。何より特定の姿勢で緊張感を持って集中していないと、それなりの内容の記事は書けないと思った。人によると思うし、使う事に慣れれば有用だろうが、この椅子は人をダメにすると思った。

 私はアナログ人間よりなので、既に気持ちが敬遠していた。

 

 このご時世、AIイラストや、AI小説、AI記事がネット上に溢れている。その中で、人間が直に書いたものも残り続けていて、週刊誌のなどの記事はAIをフルに使って記事を書く事は禁止されている。書いて欲しい原稿を、アンドロイドに代筆してもらう事はいいのだが、AIに一瞬で書いてもらうのはNGだ。今ではAIが作ったものを判別するツールなどがあり、AIに描いてもらった絵を自分で描いたと言ってもすぐにバレる。フェイク動画や人間の声に似せた音声もすぐ判別出来るのだ。

 便利な世の中になっているとは思うが、AI技術の扱いは、未だに右往左往しており中々難しい問題ではある。


 話が反れてしまったが、私はこのマッサージチェアで寛いでいる編集長に、いずれ聞きたいと思っている事があった。それは、ストック・ウィッシュ・ホールディングス日本支社のリーク映像の事だ。

 あの映像がこの会社に送られて、それを取り扱ったのが編集長なのは、同僚に聞いたので裏は取ってある。

 オーストラリアの取材が終わったら、それとなく聞いてみよう。

 

 少しずつ真相に近づいている。

 そんな足跡が聞こえてくるようで少し胸が高鳴った。


 オーストラリア滞在のオカルトマニアからの取材時期は、十二月の中旬頃という、なんとも曖昧な話だった。正確な日にちは追って連絡するとの事。

 まだ二週間近くあったので、二号に看病してもらったお礼として、タイに取材&観光旅行の計画を立てた。


 何故タイなのかというと、去年の十二月に大桜ゆきひとがタイのバンコクで結婚生活を送ったから。

 結婚相手はボディガードのクレイという人物。

 クレイにはセラという妹がいて、私はその子と映画撮影の時に仲良くなった。セラは映画撮影の後、ローズ……本名フォーシアの看病のため、ストック・ウィッシュ・ホールディングスアメリカ本社管轄の病院に通っていた。今年の四月頃は街中ですれ違う事があり、挨拶を交わす事もあったが、最近は見かけなくなった。もしかしたら実家に帰ったのかもしれない。

 バンコクに行ったら、セラの実家を訪ねてみようと思った。

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