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165 おじさん、こわれる

 ハッ……!


 少しぼんやりとしてしまった。

 もしかしたら顔が赤くなっているかもしれない。

 今はすぐにでもこの場を離れたい。

 少しでいい、立て直す時間を確保せねば。


「ゆきひと、すまない」


「ん……どうしたんだ?」


「突然の腹痛だ……」


「大丈夫か? 痛そうに見えなかったから全然気が付かなかった」


「ゆきひと……知っているか?」


「ん?」


「当然の腹痛とは、突然……起きる事なのだ」


「そうだな、突然の腹痛だもんな……」


「悪いがトイレに行ってくる」


 そう言って、僕はトイレへと直行した。

 もう慣れたもので、脳内のナノマシンを使って何処に多機能トイレがあるのかを検索した。便利な時代だとは思いつつ、好意的に思っている相手から離れる為に、トイレに向かっている自分に対しての恥ずかしさも感じていた。


 よし、トイレに着いた!

 すかさず入り、扉を閉めて、便座に腰を下ろす。

 そして頭を抱えてしまった。


 どうしたらいいのだ……。自分の感情に気が付いたら、急にどう接すればいいのかわからなくなってしまった。


 いや、待て。


 もしかしたら、ただの心臓系の病かもしれない。

 ナノマシンでの複雑な検索は、精神が安定していないと情報が乱れてしまう。

 ここはフリージオに借りたスマートフォン的な端末で調べてみよう。

 この時代にもあの方はいらっしゃるはず……。


 いた……! この時代にもグーグル先生はいらっしゃった……!


 心臓が痛いで検索すると、普通に心臓の病が出てくるな。

 そういえば先月にメディカルチェックを受けた気がする。

 その時は何も問題点はなかった。

 恋を省いて、病気ではないとすると他に何があるのだろう。

 様々なキーワードで検索をしてみる。


 「推しが尊い」


 何か……違う気がする。

 ゆきひと自身に御利益がありそうといえばありそう……。

 あの統率のとれた筋肉にお祈りをすれば、福も来るだろうが、尊い存在だと距離を狭める事は出来ないし、距離を縮めたいと思うからこれではないだろう。

 そうだ、一緒にいるととても楽しい気分になって、人生が面白い感じがするのだ。なんだかとっても面白い状態になるのだ。


 「草が生える」


 なるほど、日本人は面白い事があると脳内で雑草が生い茂るイメージが湧くのか。長い事、日本にいたがそれは知らなかった。

 もしかしたら日本特有の文化、もしくはそういった病なのかもしれない。

 だが、今の所草の生えるイメージは湧かないから、これも違うだろう。

 覚えておいて損のない知識ではあるから覚えておこう。


「クソッ……!」


 認めなければならないのか。

 これは恋なのだと。

 何で……何で今なんだ。もう四十を越えて、人生終わりだと思ったし、どうなってもいいと思っていたのに。


 何故、ここで恋!?


 頭がクラクラする。

 脳内のくるみ割り人形が大軍勢でS〇Xと叫びながら行進しているぅ……。

 くるみ割り人形じゃなくてブリキの兵隊だった。

 そんな事はどうでもイイッ!


 長時間多機能トイレに滞在しているのも迷惑だろう。

 ナニしてるとも思われたくないし。まぁ村カケルⅡではあるが、大してるとも思われたくない。

 清潔なおじさんだと思われたい。


 グーグル先生がこの時代にもいらっしゃるという収穫はあったし、ゆきひとの元へ戻ろう。

 僕は溢れる感情を殺して、雉撃ちを終えた。

 


 

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