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151 色鉛筆で彩られた紐育

これは走馬灯だろうか?


 僕は何か大きな、七色に光る兵器のような怪獣のような物と戦っていた。辺りはぼんやりとしていて、はっきりとは見えなかった。

 視界がどうあれ、こんな光景は見た事がない。どうやら走馬灯ではなさそうだ。

 僕はその兵器のような怪獣のような物と戦っている男の事が心配で仕方がなかった。僕は空を飛ぶ何かに乗っていた。


 気が付くと、僕は幅の広い通路にいた。感覚で、ここが巨大ドームの入場口であるとわかった。僕の目の前には、さきほど戦っていた男が、細長い鉄筋に腹を貫かれて横たわっていた。それを見た僕は絶望し、膝を付いた。

 何故だろう。この男が死ぬかもしれないという事が嫌で嫌で仕方がない。

 動悸が激しくなり、呼吸が荒くなる。

 苦しなって目を閉じ、数秒後に目を開けるとまた別の場所にいた。


 そこはニューヨークの街並み。カラフルな色に包まれていた。

 ショップのガラスに映った自分の姿を見ると、老けていた訳ではないが、年を取っているような感じがした。周囲がぼんやりと淡い色で音は聞こえなかった。色鉛筆で描いたような景色の中を僕は走った。すると五十前後の夫婦と十歳前後の少女が僕の目の前に現れた。夫婦はどことなく春希と美春に似ているような気がした。夫婦に促されて食事を一緒にとった。寿司を含む日本食だ。夫婦もよく見れば日本人に見える。少女の顔はどうしても認識出来なかった。少女の父親に背中を叩かれた。笑いながら何かを言っているが、言葉は聞こえなかった。その後、奥の部屋に案内された。

 僕は何故か緊張していた。そして流されるままにドアを開いた。


「……」


 ゆっくりと瞼が開いた。

 周囲を見渡すと大きなマトリョ―シカの人形や、ブロックの重なったクッションが目に入った。天上は天使の人形が紐でぶら下げられている。

 無意識に自分の腹を触った。


「……ん?」


 銃で撃たれた傷が塞がっている。

 僕は死んだのか?

 死んだにしては見えてるものがリアルだ。

 少なくとも、さっき見た色鉛筆で描かれたニューヨークの街よりも現実的な光景が広がっている。夢だとは思うが鮮明に覚えている。不思議な夢だった。

 ここは何処だ?

 ロシアに強制送還されたのだろうか。

 部屋は白いカーペットを敷かれ、ホテルの一室というより、子供部屋のような印象を受けた。少なくとも牢獄ではない。ドアは正面に一つのみ。そのドアがゆっくりと開いて、明るいベージュ色の髪をした女が入って来た。

 二十代と思われる女。

 僕は警戒心しつつも目の前に現れた女に名を尋ねた。

 すると彼女は、優しく微笑んでヴィーナ・トルゲスと名乗った。

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