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130 憧れの義賊

 春希は酔いながら何でも話した。

 フルネームは本田春希、年齢は二十五歳、身長は百七十五センチメートル、体重は六十五キロ。好きな有名人はルパンという怪盗で、一時期は本気で怪盗になりたかったらしい。有名人と言うよりアニメのキャラクターではあるが。

 空港にいた理由は、空港で有名人そうな人に片っ端から声をかけてコネクションをもちたかったらしい。ただ勇気が出なかった為に声をかける事が出来ず、空港の外で座り込んでいたとの事だ。行動を起こすきっかけは、ネットで有名人と知り合いになる為に飲み屋で貼り込んで仲良くなったという情報を見たから。それを真似たようだった。その話を聞いた時は考えの甘い男だと思った。空港を利用する有名人は警備をつけるか、お忍びで自分の正体がわからないようにするだろう。まだ飲み屋で出待ちする方が確立は高い。そう思ったが、春希には伝えなかった。ほろ酔い状態で気持ちよく話してるようだし、言っても覚えていないだろう。

 僕は麦茶か水を飲んでいたので、酔ったりはしない。相手の言葉に相槌を打ちながら簡単な質問をする。それを繰り返した。 


「釧路って何処にあるか知ってます?」


「何処かな。ウルップ島の近くか?」


「そうです、そうです。よくご存知ですね。オズさんは飲まないんですか?」


「僕はいい」


 逆に初対面の相手の前で酔えるのも凄いな。


 数分後。春希が寝静まった所で、彼の私物を見て嘘をついていないか確認を取る事にした。無造作に置かれた肩掛けバックの中に財布と携帯電話。財布の中に運転免許証があったので、さっきの情報と照らし合わせた。嘘はついていないようだ。流石に偽造はしていないだろう。

 靴も確認してみる。靴の下地の裏に一万円札が入っていた。緊急用だろうが、金を持っているのに奢らせるとはいい度胸だ。

 靴を探っている時に「プルルルルル」と春樹の携帯電話が鳴ったので、靴と金を戻し、バックの中の携帯電話を開いた。


「美春……?」


 名前を確認して携帯を元の位置に戻した後、春希の肩を揺らして携帯電話が鳴っている事を伝えた。春希は誰からの電話かを確認した後、電話に出る事もなく通知を切ってそのまま寝息を立てた。何なんだこの男はと思いながら、僕はこれからどうするかを考えていた。


 春希が目覚めた所で会計を済ませて店を出た。

 次の行動を決めかねていると、春希が僕の探している人物について質問をしてきたので、近場の公園に設置されたベンチに座って話をした。

 

「日本にいる以外に情報が無いって言ってましたけど、身体的特徴もわからないんスか?」


「他は……赤毛の男で年齢は四十前後」


「四十で髪が赤いって相当目立つと思うけど、髪の色は変えられるし地毛じゃないんじゃ」


 確かにそうだな。髪の色は特徴として弱い……か。


「何でその人を探してるんスか?」


 ママを殺した奴かもしれないとは言えないな。


「僕自身、その人を探すように依頼されたんだ」


「期限は?」


 ……期限? 

 そう言えば期限とかは無いな。


「特に無い」


「期限が無いんだったら急いでないんですよね。じゃぁ俺と一緒に探偵事務所、開きません?」


「何でそういう話になる」


「話を聞いた感じ、オズさん、日本に長期滞在する事になりそうじゃないですか」


「まぁ……見つかるまで、もしくは日本にいない事がわかるまでは、日本にいるつもりではあるが……」


「長期滞在するなら職があった方がいいですよ。コインロッカーに預けている荷物があるから一緒に来てくれませんか?」


「……」


 言われるがまま新宿駅のコインロッカーまで足を運んだ。春希はロッカーの中から大きいバックを取り出し、中から小さな長方形の紙を僕に手渡した。


「これは……?」


「名刺っス」


 名刺には大きく本田春希と名前が書かれており、探偵の表記があった。




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