115 エピローグ 銀翼の翼は無限の空へ 『◎』
ラストグリーン病院の玄関口は永遠と続くような緑と青空。
それらは心地良い風に戦いでいた。
一か月ぶりの外。清々しい気分だ。
俺とフリージオは旅支度をしているエーデルの登場を待っていた。
「おまたせ」
元スパイは探偵のような服装で、緑と風に吹かれながら現れた。
色気が凄いんだよな、エーデルは。
俺も見習いたい。
「その服凄い似合ってるよ。俺もそんな色気を出せるようになりたいな」
「煽てても何も出ないぞ。それよりこれからどうするんだ?」
エーデルはそう言いながらも少し笑っていた。
まんざらでもない様子だった。
「……俺はSWH地下の監視カメラ映像を、誰が週刊誌やネットニュースに流したのかを知りたいかな」
ずっと疑問だった。
誰が何の目的であんなことをしたのか。
この疑問が解消されない限り、俺は元の時代には帰れない。
何かが裏で蠢いている。そんな気がしてならなかった。
「じゃぁ、情報収取も兼ねて世界を旅しようよ! 探しものは探してる時には見つからないって言うし」
フリージオは相変わらず無邪気な奴だ。
「どうかな」
エーデルは乗り気じゃなさそう。
「小父様? 女性達の世界もそんな悪いもんじゃないよ」
「あぁ、そうだな」
「心がこもってなーい!」
「いや、半分本心だ。ゆきひとの話を聞いて考えが変わった」
エーデルはそう言って小さく笑った。
「それより俺達は勝手に動いていいのか?」
「ソフィア新社長と交渉をして、この僕が、これから君達を管理していくことになりましたー!」
「おぉ」
「それとユッキー?」
「ん、なんだ?」
「君が元気になってくれて嬉しいよ。……また気持ちが折れそうになる時が来るかもしれない。でも自分が思い続けたことはいつか何かの形で実を結ぶから。例えそれに届かなくても糧になるから。だから自分を信じて……!」
終始よくわからない雰囲気を放っているフリージオだけど、今の俺にはその言葉がストンとはまったというか凄い心に響いた。
「……わかった。もう自暴自棄にはなったりしないよ」
「流石僕の認めた男だね! 大好き!」
フリージオが抱きついてきた。
「おいくっつくな。やめろ」
「小父様にはハグしたじゃないかー」
「ハッハッハッハッ!」
エーデルの笑い声に、俺もつられて笑ってしまう。
フリージオもケラケラと笑っていた。
「ゆきひと行こう」
エーデルは歩き始める。
「ユッキー行くよ!」
フリージオも歩きだした。
「ありがとう二人共。これからよろしく頼む」
二人は当たり前だと言わんばかりの表情を見せた。
何だか照れくさい。
この三人でなら、どんな苦難も困難も乗り越えられそうな気がする。
やっぱり仲間がいると心強い。
「行こう!」
俺達は風に祝福されて歩きだした。
今は無限に広がる世界を感じている。
気の持ちようで、これほどまでに見える世界が変わるのかと驚いてしまう。
体も軽いし笑顔も取り戻した。
前を見て。
自分を信じて。
俺達の踏み出す一歩は力強かった。
これにて上巻となる前編が完結となります。
続きは2021年冬以降に開始する予定です。
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ここまでお読み頂きありがとうございました。