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獣達は人を恨んで地に堕ちる。  作者: minikurage
一章疑う勇気
6/7

レグルス=??

長い間、投稿できず、すみませんでした。

 これからも、こんな感じで、間が開いてしまいますがどうぞ、よろしくお願いします。  

静かな森に響き渡る誰もが息をのむ一言。

でも、言い放った当の本人は誇らしげに堂々と胸を張って、不敵な笑みを浮かべている。

レグルスは発せられた言葉の意味を上手く理解できず?を浮かべながら再度尋ねる。


「今、なんて?もう一度分かりやすくハッキリと、言ってもらえるかな?」


ライはニヤッと口角を上げると、ゆっくりと口を開いた。


「だ~か~ら~、僕の体を君に託すって言ってるんだよ。どうだい?こんな嬉しいことはないでしょ?」


ライはこれでもかと眩しい笑みを浮かべてレグルスに訴える。煩わしいと言わんばかりの表情をしているレグルスに気付かないまま。


レグルスは思った。


確かにこれ程までに嬉しいことは無い。是非この体を使わせてもらいたいと。


だが一方でこんなことも思っていた。




こんな穢れた人間の体を使いたくない、と。




穢れた。と言っても「汚い」とか、そういう類のモノではなく、ただ単に心が人間の心ではない、狂気に満ちたものであるがための表現なのだ。


レグルスはライを内側から覗く。


彼は自分の魂を置くに足りる存在なのか。


判定は、




不合格だ。


勇者の孫というからどうかと思えば、傲慢で自信過剰にもかかわらず、短気で無力だから何も救おうともせず、たとえ救おうとしても一ミリも希望が見いだせない。


それなのになんでも出来ると調子に乗っている。


それがとても腹立たしい。とてもとても腹立たしい。


ニンゲン風情が、こんなにも苦しい思いをしている者がいるのを尻目に。


その苦しみを知ろうともせず。

~~~~~~~~~~~

ライは俯いた。


レグルスに体を託そうと決めたのに、レグルスが良い返事をしてくれなさそうだから。


こう思うようになってしまえば、もう狂気の沙汰ではない。


言わばただの変態だ。


でも、ライはそんなことに気付きはしない。


気付かないからこそ、ライはレグルスの進めたい方向へ無理やりにでも未来を捻じ曲げたいとレグルスに体を託そうとする。


でも受け取ってくれない。


こんなにもこんなにもこんなにもこんなにもこんなにもこんなにもこんなにもこんなにも!


君のためにしてあげようとしている事なのに!


なんでなんでなんで!


「ちょちょちょ、ちょっと待て!なんだか変な方向に進んでる気がするぞ。おい、やめろ!それ以上変な考え方止めてくれ!じゃないと誤解されるぞ。君の輝かしい(仮)人生が穢れてしまうんだぞ!」


「何でそんなに焦ってるの。」


「へ?」


どうにかおかしなことを考え始めたライの思考を止めようと焦っていたレグルスの言葉に真面目なライの声が一つ。


一気にレグルスの静かな焦りが主導権を握り返したことにより顔に現れ、瞬間的に真っ赤になった。


今まで自分は何に焦りを向けていたんだろうと。


ライはまるで、というか絶対に演技していた。


恐らく、レグルスを騙そうとして。

~~~~~~~~~~

一方、ライも同様に内側で恥ずかしがっていた。


何せ演技なんて初めてしたから。


でもレグルスのあの焦り様ったら。


いつ思い出しても笑いが込み上げてくる。


ああ、愉快愉快。


にしても、調子乗ってるよなぁこ・い・つ。


ニンゲンを滅ぼす?


笑わせるな。


勇者死亡?


馬鹿か。


第一、勇者シホが「この世」で一番強いわけじゃないんだし、そこまで喜ばなくてもい

いでしょ。


しかも、まだ彼女は死んでいないし、一ミリも「本気」を出していない。


当然だ。


何故なら、彼女は愛されているから。


世界に。


だから、彼女に本気で睨まれた者は何者であろうと言葉を失い、彼女の笑顔を見た者の心を癒やす。


故に幼子であろうと勇者を敬う。


そんな存在だ。


なのにちょっと眠りに就いただけで倒したと勘違いする。


ホント馬鹿だな。


「ホント馬鹿だな。」


あ、声に出てた。


まぁ、大丈夫か。どうせ何もできずにすぐ責任転嫁する幼稚な単純思考の動物だしな。


そのライの軽い心の囁きは、ちゃんと何もできずにすぐ責任転嫁する幼稚な単純思考のレグルスの耳に入って、ある一つの決意を表明させた。


「いいだろう。君のその体。ぜひぜひこの私に譲ってもらおうじゃないか。そして人類滅亡への第一歩を踏み出そう。」


ライは心の中でしてやったりとガッツポーズすると嬉しそうに言った。


「そうこなくっちゃ。」


その言葉を聞いてレグルスも嬉しそうに鼻を鳴らす。


この瞬間、勇者の孫キズキ・ライは人間に復讐を誓うバケモノ、レグルス・カーロンに身体を貸すことによって人道を外れることとなり、勇者と呼ばれることは一生無くなった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

五分後…

今までぎこちない笑みを浮かべていたライの顔にはレグルスの不気味な笑みが加わり、さらに目を覆いたくなるような有様になってしまっていた。


「はぁ…。なんでお前こんな気持ち悪い顔してるんだよ。僕のイケてる顔が台無しだぁぁ!」


「うるさいよ。いちいち叫ばないでくれる?」


「元はと言えばお前が悪いんじゃないか!クッソォォ!良い声してるから顔もイケてるのかと思えば、悲しくなるほど気持ち悪いなんて!」


ライは頭を抱えて大げさに嘆く。レグルスは顔を見たことの無かった事もあり、「カッコイイ」という言葉は知らなかったものの、何となくだが、顔を馬鹿にされていることに気付いて咄嗟に口を開く。


「なぁにが「悲しくなるほど気持ち悪い顔」だぁ?君の方がよ~っぽど気持ち悪~い「顔」してると思うけどなぁ~。」


ライの顔がピクリと反応すると怒りを抑えるようにライは深く深呼吸をして感情を抑えると、軽く笑いながらレグルスに言う。


「慣れないおふざけにはあまり乗らないことをお勧めするぞ。完全に乗れずにずり落ちて最悪の事態になるぞ。」


「最悪と言いますと?」


「お?」


思わぬブーメランにライは一瞬固まったが、数秒考えた後、口を開く。


「例えば、お前が誰か見知らぬ人に挑発して運悪く僕の体がやられるとする。するとお前は強制的に僕の体の外へ追い出される。それにより、お前の事が周囲の人々に知れ渡り、警戒されることで、多少なり護衛力が増し、使わずに済んだはずの体力をも浪費することになる。または、お前の目的である人間への復讐が果たせず、絶望のどん底に叩き落されることになる。」


少し感情的になりながらもライは訴えかける。その必死な訴えを聞いたレグルスは「うんうん」と頷きながらゆっくりと口を開くと―――――


「残念、一点。まだまだ分かってないね。そんなんで体を預けちゃ、いざって時に後悔するのは君だよ?第一、僕は体の外に出たら死ぬわけじゃないんだから。そんなんだったらもうとっくに天に召されちゃってるよ。それに、僕は人間への「復讐」が出来ればいいんだから、いざとなれば、君をズタズタの、ボロボロの、ぐちゃぐちゃにして、目的を果たして、ちゃちゃっと成仏して、この世から名を消すよ。さすがに僕でも二度も地獄の様な敗北を味わいたいとは、思わないからね。」


う~わ、やっぱこいつ野獣だわ~。仲間を殺すことに、何のためらいも無いとは。

とはいえ、彼が言うことも正しい。彼は人間への復讐のために、この世界に蘇ったのだ。


ならば、人を一人殺すでも、見下すでも、泣かすでも、奴隷にするでも、刺すでも、斬るでも、踏むでも、潰すでも、殴るでも、炙るでも、燃やすでも、満足できる何かを成し遂げることが出来れば、彼は思い残すことなく成仏できることだろう。


言ってしまえばこれが人々が考えられる最善の方法。


これしか、考えられる良い方法は、無い。


ライはため息をつく。

何を今になってこんなことを、と。


しかし、ライは大きく深呼吸してから軽く目を閉じると、静かに、何かを確かめるように、ふと、レグルスに問う。






「君は、何?」






レグルスは頭に?を浮かべながらも、当たり前の様に、言う。


「人間を滅ぼすために蘇った、人間に恨みを持つ魂の集合体。」


「本当に?」


レグルスが言い終えた直後に、素早く滑り込ませたライの問いに、レグルスは一瞬の間を開けたものの、やはり、迷うことなく、断言する。


「当然だよ。じゃなかったら、今ここに僕はいないよ。」


「―――嘘つき。」


レグルスの言葉を聞いたライは、やはり、納得のいかないような表情をしながら、レグルスの言葉を真っ向から否定する。


「さっきから何変なこと言ってんだよ。」


ライの言葉が気に入らなかったのか、今度はレグルスが声を発した。

すると、ライは驚いた様に息を飲み、すぐさまレグルスに、質問した。


「まさか、自分が何なのか、分かっていないのか?」


「何だって?」


「君は―――――なんだよ。」


レグルスの耳に、信じられない衝撃の真実が伝えられた。


それは、レグルスの心をボキボキにへし折るように痛みを与えたのだった。


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