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-プロローグ-  分相応、それなりに尽きる。

"回答(アンサー)"

―――学生の昼休みほど、不必要で無意義な時間帯は他にない。




そう、俺は思う。

俺の通う私立光凛高校の昼休みは一時間、どの高校も昼休みは大体、一時間ほどで、周りの友達と話すだの、教室移動だの、体操服に着替えるだの、お昼をとるにしても、実際は、15分の休み時間があれば全て事足りことばかりだ。

一時間のお昼休みなんて絶対いらない。多すぎる。

さっさと授業を始めて、俺を早く家に帰らせてくれ。俺は只々そう思う。




「.........っふん」



そんな自己中心的なことばかり、如何にもぼっちな俺が考えそうなことであった。

だが、これに関しては俺が悪いわけではない。実際に昼休みが一時間も多く余分にあるんだからこんなことを考えてしまうのも必然的なことだ。



なら、寝てろ?


生憎、こんな硬い机の上で寝れるほど、俺の寝付きは良くない。

それに、俺みたいな正しい生活習慣を心掛け、毎日、八時間の睡眠時間をきっちり取っていれば、どんなにつまらない授業であっても、普通眠くはならないはず。

それでも、眠くなる奴らは今のうちに生活習慣を改善しておく必要がある。 そう、俺みたいに健全な学生生活を歩んでいれば、昼休みは15分、いや10分もあれば十分に事足りこと。


それに昼休みにわざわざ外に出て、サッカーやらバスケやら高校生にもなっても今時廊下で鬼ごっこやらしている奴らは大抵、授業中も騒がしい連中で、昼休みに散々遊んだ挙句は、昼休み後の授業中には机の上でいつも寝ているだけで、それを注意する教師とその注意を見てまた騒ぎ出す周りの奴らが繰り出す、負のサイクルのおかげでまた授業が一旦停止する毎日。






「.......ほんと、笑える」




五月九日の火曜日。

午前の授業が終わる頃、ゴールデンウィーク明けの夏を間近に(ひか)える春の季節。

日差しが強く、熱の(こも)る窓の外を覗いて見ると、それは久しぶりの晴れの日であった。



暖かい晴れ、眩しい晴れ、気持ちのいい晴れ、清々しい晴れ、雲一つない満天の青空。

それを眺めて人間多種多様、感じ方は人それぞれだ。

それを良く思う者、悪く思う者、何も思わない者、そんな事に第三者が一々いちいちとやかく言う必要は全くない。


今日は体育の授業がないことだし、天気が晴れだろうが曇り、雨、雪、嵐だろうが、どうだっていい。

そう、今日の天気が何であろうと俺のこの生活に支障を下すほどのことではないのだから。



「......暇だ」



まぁ、でもそうだな。

俺は晴れた日の方が好きだし、雨の日、雪の日、嵐の日、空から何かが降ってくる日は大抵嫌いだ。





『キーンコーンカーンコーン』


「しゃっ!バスケ行くぞ、今日も負けたチーム、勝ったチームにジュース奢りな!」

「いぇ〜い! カレーパンっゲット♪」

「え〜いいな〜 半分分けてよ」「やだよ〜〜だっ♪」

「お前、今日の弁当もそんなんかよ?」

「仕方ねぇだろうが、うちの家は漬物屋なんだぞ」

「毎日、そんな弁当ばっかだったら、さすがに飽きんだろ?」



また、騒がしい昼休みが始まる。


午前の授業が終わり、ある者は鞄から弁当を出し、一部は廊下に飛び出し混み合う前に食堂や購買部へ急ぐ。

俺は、いつものようにそんな何処にでもある学生たちの日常を眺めながら、一人教室の片隅で昼食を始める。


今日の昼食は昨日の間に用意しておいたサンドイッチ、俺の手作りだ。




「んぅんぅ」



高校の入学式から早一年と一ヶ月が経った今でも、生憎、俺の周りに気軽に話し合える友達と呼べる仲の良い生徒はいなかった。 


そう.....所謂、ぼっち。


俺は一人、入学式後に行われた席替えで手に入れた窓際まどぎわの後ろから二列目という中々に良い立地の上に席を置き独り身の学校生活を十分に満足し、エンジョイしていた。



「弁当足りねぇ、おい、購買いこうぜ!」

「昨日のテレビ見たかよ?」

「ねぇねぇ、次の授業の宿題見せてよ」

「もぉー 仕方ないな〜 じゃ昨日の数学の板書したノート見せてよ」

「ごめん、昨日は寝ておりました」





俺、稲柄いながら正斗まさとは、ごく普通な人間で、ごく普通な毎日を過ごし、ごく普通な高校生をやっている。

歳は十六歳、ここ私立光凜高校しりつこうりんこうこうの二年生である。

朝は寝起きが悪い俺、手入れをしていない黒いボサボサの髪に、一切のやる気の感じられない飢えた獣のような目つき、体重身長は至って平均的で、学内にいる時は、大抵、いつも一人で教室の自分の席に座っている。


そうだな、この髪型と目つきを除けば、俺の容姿は周りから見てもそれほど悪い物ではない。

至って平均的な容姿、誰からも揶揄やゆされることはないはずだ。

.......うん、きっとそうだ。



現在、学内の部活動には所属しておらず、特にこれと言った周りに見せる自慢できる特技もない。

唯一自慢することがあるとするならば、学年総合成績十位を誇っているということぐらいだ。



「昨日のドラマ見た?まじで最終回は感動した」

「げ、ノート、家の机の上に忘れちまった!おい、宿題写させろ」

「やだよ、自分でやれよ」

「知ってる?隣のクラスの浜中とここのクラスの土井、昨日付き合ったらしいよ」

「まじで! 先越されたか〜」



俺の通っている高校、私立しりつ光凜高校こうりんこうこう

特に誇るものもなく、何一つ有名なこともない、どこにでもある普通の一般私立校。


自宅から高校までの距離は、自転車で約二十分ほど。

俺の家の周りは、辺り一面深い山々に囲まれており、どうも古臭い畑やお墓だらけな、所謂、田舎町である。

周りの建物は、ほとんどが木で建設されている木造住宅ばかりで、都会にありそうな大きくそびえ立つ高層ビルなんてものは一切なく、家の近くには、スーパーとコンビニが一つずつある程度でカラオケや映画館のような娯楽施設は一切ない至って平凡、いや、平凡以下な地域であった。




「やっぱり、うちのクラスの女子ってほんとレベル高いよな」

「だよな、ほんと当たりクラスだわ」

「しゃぁ!夏休みまでには絶対に彼女作るぜ」



普段から、俺は周りの連中の行動には結構びっかんな方で休み時間や授業の間に暇な時間を見付けては、ほとんどクラスの連中の観察に時間を割いていた


そうだな、試してみよう。

俺は後ろから二列目の窓際の席に座っているが、一番前の席の入り口側にいる生徒らのこそこそ話し程度なら、口元とその態度を見ただけで大体わかる。



「.............」

「.....................」

「........」



「....昨日のごはんが炊き込みごはん?」


クソどうでもいい。


まぁ暇な昼休みの時間には、いつもこうして、ただ何もすることなく、次の授業の用意を机の上に準備し終えて、偶々(たまたま)、床に落ちていた輪ゴムを手に取り、両手を使って引っ張っては離し、引っ張っては離しとっただそんなくだらないことをお飾りに、呆然と周りの会話に耳を傾けている。



「カオリ、髪ボサボサよ。あんたももうちょっとおしゃれしなさいよ」

「そ、そうかな.... あははは」

「そう言えば昨日、駅前に新しいカフェができたらしんだけど、今日暇よね?一緒に行こうよ」

「え、あ、うん。 そうだね」

「ミキって最近、なんか変わったよね」

「そうよね、なんか前の方が良かったと思う」



前列から三列目の窓際にいる彼女、名前は、つかさ美希みきだったか、髪を染めている今時風な女子生徒、よく見れば、昨日よりもスカートの丈が数センチ短くなっており、今まで手入れをされていなかった眉毛も少し薄めで短めにカットされている。口紅の色も変わっているな、大方、昨日の晩に放送されていた、今時風女子のお手軽活用術講座の番組でも見て影響されたんだろう。 と、根拠のない、勝手な彼女の経緯いきさつを並べていく、きっと彼女の周りにいる控えめな女子チームも触れてはいないが現状を把握しているだろう。


結論、司美希の内定はビッチ。 


そう、自分の頭の中で、色々な妄想を繰り広げていく行為は実際、俺自身は嫌いではなかった。

別に彼女の事情なんて何も知らない。どうでもいいこと、きっと俺の話したことが必ずしも真実とは限らない。




......だがそれでいい。


司美希という存在と俺、稲柄正斗という存在、生き方に学力、その他のステータスから比べ、俺と彼女を天秤に掛ければ、間違いなく俺は彼女よりも一歩、いや、三歩ほど前にいる価値のある人間だということがわかる。


それは、自己想像上の勝ち組の地位、俺はそれにしか興味がなく、それにしかこだわりを見出みいだせない。


そう、俺はいつだって誰よりも勝ち組の地位におり、何時だって最後は、分相応、それなりに尽きるのが一番だ。



......つまらない人間。 そんなことはわかってる。



「ねぇ、ナツキのとこ行こうよ!」

「そ、そうだね、ちょっとお弁当、カバンにしまってくるね」

「早くしてよねー」

「おい、暇だしグランド行こうぜ」

「俺たちも広場に行こうぜ、多分、タツヤとかもいるだろうし」



賑やかであったクラスも、この時間帯になれば、周りも会話のネタが尽きてくる頃合で、暇な連中らは体を動かしたくなり、教室から去っていくものが多くいる。



「......逃げたな」



気づけば、教室にいる生徒の数は36人クラス中、俺を抜いて6人。


内、二人は机の上で顔を伏せ眠っている。

もう二人は、音楽を聴きながらか、五限の授業に提出しなければならない宿題を必死に写している。

最後の二人も、何やらイヤホンを付け、机の下で携帯を触り続けている。


会話はない。とても物静かな光景だ。

このクラスは、大抵、この時間帯になれば急に人の数が減る。常にクラス全体を観察し続けている俺にだからこそわかることだ。



「.......」


そんな、代わり映えのない、ある日のことだった。

俺の平凡な日常にまるで文句を付けるかのように突然、廊下の方が騒めき始めた。


「おいっあれって.....」

「あぁ、(うわさ)のお方だ」

「マジかよ、伝説じゃないのかよ?」

「伝説だよ、今俺たちは今、伝説を目の当たりにしているんだよ」




「.....っん?」 


何やら廊下が騒がしい。


「.......」



......まぁ、いつものこと。

廊下で何が起こっているのかは、察しがつく。

その廊下には、購買部で買ったパンや弁当を抱え持つ男子生徒たちが無意識な造作で誰かに指示をされているわけでもなく、反射的に彼女を向かい入れるよう綺麗な花道を形成していた。


まるでこの国の女王様を迎えるかのような...


そして、窓の外から彼女の姿が見えた。

その凛々しくも気品に満ち溢れた姿は、もはや神々しくもあった。 

黒く、毛先まで手入れの行き届いている長い髪、テレビで見るモデルのような整ったスタイルに、彼女の黒く輝いた鋭い瞳に見つめられたのなら、それまでだ。


彼女が一歩前に進めば、その長い黒髪は宙に舞い、それを目で追う男子生徒たち、中には気絶する者もいた。

黒と赤のリボンで結ばれたポニーテールの黒い長髪に、その容姿の美貌は正に罪であり、華麗極まりなく、豪快であった。



「あれが、郁音様か.... 相変わらずお美うつくしい」

「あ~~ 一度でいいから直で喋りて~な〜」

「やっやべぇ! 今一瞬、めっ目合っちゃ」

「おっおい..... な、だっ誰かっ! 救急車を! こっこいつっ気絶してやがる!」



きっと誰もが、そんな彼女に憧れを抱いていた。



「あの美貌は、反則だぜぇ~ 此畜生こんちくしょう!」

「おい、お前ら知ってるか? あの郁音様に弟がいるって噂」

「あぁ郁音様と同じ中学のやつが言ってた話だろ?」

「マジでかよ、羨ましすぎる!」

「あぁ〜見つけ次第、八つ裂きにして殺りてぇよ!」



廊下の男子生徒たちは、既に彼女の虜となっていた。

一方、それとは裏腹に廊下に集まっていた女子生徒たちはと言うと...



「なんであんなんに群がるかなぁ~マジで」

「はぁ~~ あの男子マジキモい」

「男子らマジっさっきからうっさい」


「てかさ~ 私あいつマジで嫌いなんだけど」

「私もマジ苦手だわ~ あの人....」


おいおい.....

そんな妬み感満載なコメントを、てかマジマジ言い過ぎだ。



しかし、彼女は。




『ガララララララ‼︎‼︎』


静かだったそんな空間だろうとお構いなく、閉じていた教室の扉を勢いよく開け音を立てる。 

そして、彼女は締めに、廊下の男子たち、女子たちに目をやり、人指し指を口の前に立て、こう口にした....







「.........黙れ。」




そう言い放った彼女、もちろん、男子女子らは共に呆然とした態度を見せた。




「.........」




廊下側に目をやると、その扉の前に居たのは、まさしく廊下に居た彼女であった。


『ガラララララララ』


彼女は、足を上手く使い扉を閉めきった後に、各教室に備え付けられているカーテンで扉の窓を閉ざす。

そして.... 気のせいか躊躇ちゅうちょなく、まっすぐと俺の席の方に近づいて来る。


彼女は、俺に何か用でもあるのか?

....自意識過剰。 そんなこと、あるはずがない。


















































.....なんてな。



「.....なんか用か?」




そう、薄々感づいているとは思うが、実を言うと俺とこの女子生徒は知り合いだ。

というよりも....



「用がなければ、わざわざ、昼休みという貴重きちょうな時間を割いて愚弟ぐていの教室にまで来やしない」




”家族”だ。

というよりも、実の双子の姉弟きょうだいだ。





「.......だよな」



これは、仲の悪い姉弟、俺と大嫌いなこいつとの、ただの普通な日常と毎日を描いた、どこにでもある普通のお話。



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