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霧の中から  作者: こま
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《師匠!密りょ》

『おい!どういう事だ!』

『話が違うじゃねえか!』

『そうだそうだ!俺たちちょっと脅して立ち去れば良いからって聞いてたのに話が違うじゃねえか!』

『ちょ、皆さん落ち着いて』

《師匠、まさかとは思うけど、知り合いなんて事はないよね?》

『――ええ、まあ……』


 途中で言葉を切られたトトは密猟者たちの騒がしい声に呆然と

 師匠が視線をさ迷わせてどう返事をしようかと迷ってる間も密猟者たちはギャーギャー騒いでうるさい。


《――師匠、説明をしてくれるよね?》

『ええ、はい。まあ、そうですよね』


 でも、まずはうるさいからと師匠は密猟者たちの傷などを治し、すぐさま沈黙の魔法を使い黙らせると密猟者たちを部屋の角に追いやって口火を切った。


『実はですね、今回の事件なんですが、あの人たちの話を聞いて察してるとは』

《ごたごた言ってないでさっさとこいつらと卵についての説明をする!》

『すみません。嘘をついてあなたたちをほのかの世界に送りました』


 トトが爪を長くして話せと先を促せば師匠は顔を引きつるが、早く話さなければあの爪の餌食になる事は分かっているので、渋々とだが喋り出した。


『ほのかは私の可愛い弟子です。その可愛い弟子のお気に入りの子の事を見たかったのも本当なんですが、どうせならくっつけ……いえ、ああ!そうです!ほのかの世界について詳しく知りたかったんですよ!ほら、あちらは魔法のない世界なんですよね?どうでした?』

《師匠さぁ、いつもほのに言われてたよね。言い訳下手過ぎる上に話誤魔化そうとするなって……僕たちは聖獣の卵っていう大変貴重な卵が行方不明になった挙げ句、悪い奴らに狙われて大変だからって聞いて急いで行ってみれば……蓋を開けたら卵は見つかんないし、密猟者は密猟者でも、へなちょこ密猟者しか居なかったしで帰って来ればほのと光太郎をくっつけようとした?馬鹿なの?そんなのくっつくときは勝手にくっつくんだからほっときゃ良かったんだよ!第一ほのはこっちでの修行が一段落したら顔出すつもりだったんだよ。余計な事して光太郎に怪我までさせてどうすんのさ!師匠の馬鹿!!》

『えっ?!ちょっと、それどういう事ですか!?あ、待ちなさい!!』

『もう師匠なんて知らない!!』


 トトは言いたい事だけ言うと師匠の制止の声にも振り向かずに走り去った。




―――




「……つまり」

「ちょっと師匠のところ行ってくる」


 ボッと火がついたように顔が熱くなった。


(知られてた知られてたほのかさんに俺の気持ち……よっぽど分かりやすかったのかな……)


 地の底まで穴掘って埋まりたいくらい恥ずかしい。


《あんな師匠なんかほっといてこっちで暮らそうよ!僕、こっちで行きたい場所いっぱいあるしいいでしょ?》

「えっ!ほのかさんこっちに住むんですか?!」


 やった!だったら俺だってほのかさんと行きたい場所は山ほどある。

 夏休みとか利用して遠出とかしたい、いや、ほのかさんとだったら近場でもどこでもデート出来たら嬉しい。


《光太郎、僕も連れて行ってよね》

「もちろん!場所は選ぶかもしれないけど絶対連れてくよ!」

《やった!ほの、光太郎もこう言ってるんだし良いよね?こっちで暮らそうよ。光太郎に怪我までさせたんだから師匠にもちょっとぐらい痛い目みてもらったって構わないでしょ》


 ねえねえとトトの甘えたような声にほのかさんは戸惑っていたようだったが、怪我の辺りで俺を見て頷いた。


「そうね。師匠には手伝いが居なくなって困ってもらいましょうか」

《さすがほの!話が分かる♪》

「ミストレイユにある荷物全部まとめて持って来ちゃおっか」

《うん!師匠なんかゴミ屋敷で暮らせばいいんだ!》


 トトが嬉しそうに尻尾を揺らして部屋を出て行くとほのかさんが真面目な顔をして俺に声を掛けて来た。


「光太郎」

「はい」

「あの、さ、さっきの……」

「さっき?」


 さっきって何だっけ?えっと、トトが来てほのかさんがこっちに住んでくれるって……ああ、ほのかさんがお姉さんだって分かって俺……。

 そこまで考えて一気に顔が熱くなってきた。多分見なくても顔が真っ赤になってるだろう。恥ずかしい。


「わ、忘れてください!俺、俺さっきちょっとテンパってたっていうか」

「忘れない。忘れないよ」


 え?と思いほのかさんを見ればほんのりと頬が赤くなっている。


「ミストレイユはこっちより時間の進みが遅かったみたいで、あんなに小さくて可愛かった子が大きくなって、さ、一緒に居られるのが嬉しかったけど、わたしがお隣のお姉さんだって言いにくかったんだ。ごめんね。ずっと探しててくれたんでしょ」

「だって、大好きだったから、忘れたくなかったから……」

「うん。わたしも忘れた事なんてなかった。ずっと、君の事を思いながらあっちで暮らしてた。わたしも君の事がはっきり好きと言えないけどずっと会いたかった」

「なら、俺の事を知ってこれから好きになってください。それで、俺にほのかさんの事をたくさん教えてください」

「うん。ありがとう」


 はにかんで笑うほのかさんがくっそ可愛かった事だけは伝えとく。

閲覧ありがとうございました(*^_^*)

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