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学校から帰るとほのかさんが俺の家の前で待ち構えていた。
「ちょっと、時間あるかしら?」
「はい。俺も色々と聞きたい事もありますし」
俺の名前知って……いや、もうほのかさんで確定してるよな。その辺の事も含めてほのかさんがこの数年何をしていたとか色々聞きたい。
ほのかさんに連れられて行った先はお隣さん。この家に入るのは、お姉さんが居た時以来だ。
家具や小物類なんかは違ったけれど、かなり懐かしい。
「久しぶりにこの家に入りました」
「……そう。座って」
何から話そう。直球でってのは無しかな?ありではないよな。最初に会った時ほのかさん無反応だったし。いや、でも、聞かないと。
男は度胸だ。いけ!
「昨日はごめんなさい」
「えっ?!いや、ほのかさんが謝る事なんてなかったです!頭上げてください」
いきなり頭を下げられて言おうとしていた事が吹っ飛んだが、今はそれよりもほのかさんに頭を上げてもらう事が先決だ。
「でも……」
「ほのかさんは怪我してもって言ってたのに、付いて行くって決めたのは自分だから自業自得でしかありませんし、怪我治してもらって感謝しかありません!」
だから頭を上げて。あなたにそんな哀しそうな顔をして欲しくないんだ。
俺の願いが通じたのか、ほのかさんはのろのろと顔を上げてくれた。
「俺、聞きたい事いっぱいあるんです」
「……いいよ。うん。わたしも多分言わないといけない事あるんだろうし……」
「ほのかさんは、お姉さん……昔この家に住んでいて、引っ越して来たばっかでやさぐれてた俺に優しくしてくれたお姉さんなんですよね?」
「……うん。そうだよ」
「良かった……」
「ちょ、ちょっと!」
思わずほのかさんを抱きしめてしまえば、ほのかさんの慌てた声が聞こえたような気もするが、この嬉しさの前では多分気のせいだ。
「俺、ずっと、ずっと、お姉さんが居なくなってから探してた。でも、探しても居なくて、俺、お姉さん……ほのかさんが通ってた中学にも行ったりして、両親を心配させたり……」
もがいてたほのかさんがいつのまにか静かになってた。
「ずっと会いたかった……。ほのかさん大好きです」
もう俺の前から居なくならないで。ずっと、傍に居て欲しい。
「あの、さ」
《ほのー!》
ほのかさんが何か言いかけた瞬間トトが勢い良く入ってきて、びっくりしてほのかさんを離してしまった。
……というか、俺何してんだ!抱きしめて告白とか!
俺が恥ずかしさで内心のた打ち回ってる横でトトがぷんすかと怒ってる。
《聞いてよ!師匠ってばね、酷いの!》
「トト……今、すっごく大事な話してたの」
《ほのの大事な話よりも僕の話だよ!僕たち騙されてたんだよ!》
「は?」
何の事だと、ほのかさんはトトの話に興味があるのか、ほんのり赤かった顔を元に戻し、不思議そうにトトを見てる。
《だから、今回の話、全部嘘だったんだよ!》
「嘘?」
《そうだよ!信じらんない。ほのしばらくこっちに居よう!師匠なんて困らせてやればいいんだよ!!》
「えっと、どゆこと?」
俺はようやく平静に戻れたが、さっぱりと話についてけず、泣き喚くトトに説明を求めるとぐずぐず言いながらも詳しく説明してくれた。